18:ともに想い合う夫婦に。
お父様の日常は横に置くとして、レオン様はなぜこんなにもお仕事を抱えられているのでしょうか?
「ん。父が倒れて――――あ、病といえば病だが、討伐した珍しい魔獣を持ち上げてギックリ腰になっただけだ」
一瞬ドキリとしましたが、ギックリ腰でしたか。まぁ、腰痛はなめてはいけませんよね。
「急に『魔獣の相手はもう嫌だ』とか叫び、母と一緒に異国巡りにでかけたいとかなんとかのたまいだしてな……騎士団長として働いていたのに領主まで押し付けられたというのが大きいな」
思っていたよりも、レオン様って押し付けられ体質なのですね。
そういえば、父から私を押し付けられてしまい、妻にしていますしね?
「あらぁ」
「どちらも続けている理由としては…………デスクワークだけだとストレスが溜まる」
レオン様が顔を背けながら、小さな声でそう言われました。少し耳が赤いような? もしかして、照れてる?
「書類仕事が苦手なのですね」
「っ、ハッキリ言うな」
こちらに顔を戻したレオン様の頬と耳は桃色に染まっており、本当に恥ずかしそうにされていました。
「うふふふふ。レオン様、可愛いです」
「なっ!? 『可愛い』はあまり嬉しくないんだが……」
レオン様の唇がちょっと尖っています。
可笑しくて可笑しくて、抑えねばと思っているのに、笑い声が漏れ出てしまいます。
レオン様って、本当に可愛いです。
「むぅ……」
「あははははは!」
久しぶりに、大きな声で笑いました。
お腹を抱えて、目尻に涙を滲ませるほどに笑っていると、イジケていたレオン様も段々と笑顔になり、最終的には共に大笑いしてくださいました。
私たちは違うところで生まれ、違う環境で育ち、違う感性を持っていたはず。
ですが、同じベッドで眠り、同じお肉を食べ、同じことで笑う。
こうやって共に過ごしていくうちに夫婦の距離が近付き、形だけの夫婦から少しずつともに想い合う夫婦になっていくのかもしれないですね。
「私、レオン様と結婚できて幸せですわ」
「ん? 肉を食べられるからか?」
ニヤリと誂うように笑うレオン様は初めて見ました。
本人は嫌がるでしょうが、やっぱり可愛いです。
「それは、もちろん!」
ニヤリと笑い返しながそう言うと、レオン様が少年のように笑い出しました。
「ふははっ。ん、私も君と結婚できて良かったよ」
レオン様が席から立ち上がると、私の横に来られました。
頬にそっと口付けされたあと、耳元で「ありがとう、クラウディア」と囁かれました。
「ひゃんっ!」
レオン様の口から漏れ出た吐息が耳に当たり、くすぐったくて変な声が出てしまいました。
「……そう煽り返すか…………」
煽ってなどいないのに、『煽り判定』をくらいました。
気付けば、レオン様に縦抱きにされ、主寝室へ直行です。
――――デザートまだ食べてないのにっ。