15:ちゃんと覚えた!
えー、人生で初めてではないでしょうか? お昼と夜を食べそこねました。
何かの動物の鳴き声のようなものが聞こえて目が覚めました。
まさかの、真夜中でした。
「ん? 起きたか」
主寝室のベッドの中で、少し気だるそうな表情のレオン様に抱きしめられています。お昼からの出来事が脳内によみがえります。
『煽る』の意味と、『匂い』について、とてもよく理解させられました。
「っ! いえ、まだ眠っています!」
「んははは! 物凄く元気だな。食事はどうする? さっきから腹が鳴っているが」
ゴギュルルルと、何かの動物の唸り声ような音がするなと思っていましたら、私のお腹の音でした。
ペコペコです。
「食べます」
「っ、ふふふ。だろうな」
レオン様がベッドから起き上がり厚手のガウンを羽織ると、夜番の使用人を呼び出すベルを鳴らしました。慌てて私もガウンを羽織ります。
「お呼びですか?」
「ああ。頼んでいた食事を用意してくれ」
「かしこまりました」
十五分ほどして夜番の使用人がワゴンを押して戻ってきました。
主寝室のテーブルに二人分のボロネーゼパスタ。
「クラウディアが食べたいと言っていたそうだな。クラウディアなら、この時間でも食べられるだろう?」
「はい! ありがとう存じます!」
レオン様は分かっていらっしゃいますね! 私、うさぎのボロネーゼパスタ、本当に楽しみにしていたのですよ。
これがお父様ですと、『クラウディアちゃん!? 夜中にそれは美容に悪くないかな!? そもそも、胃もたれするよ!?』とかなんとか煩いヤーツです。
自然と漏れ出た笑顔で感謝を伝え、パスタを巻取り、パクリ。
「んんんーっ! お肉の旨味がギュッと凝縮されていますね。本当に、料理長は優秀ですわね」
ソースがイチジク一択なのは、たぶん食にあまり興味が無さそうなレオン様が、『好き』だと言ったせいでしょう。
今後は色んな味に挑戦させたい、と伝え忘れていましたね。
明日、厨房に行った際に伝えて、今後の計画を練らなければ!
「ん、美味いな」
にこにこ笑顔でパスタを食べているレオン様。まさかのレオン様も何も食べていなかったようです。
私が寝ている間に食べればよかったのでは?
「んー。クラウディアと一緒に食べたほうが美味い。そもそも、まぁ、なんだ……クラウディアが食べ損ねたのは私のせいだしな?」
ちょっと申し訳無さそうに、眉を落とされました。
――――あら? あららら?
何故かまたもや胸の奥がギュッと締め付けられます。
でもこれ、たぶん、レオン様に伝えたら、また碌なことにならないヤーツですよね? 私、ちゃんと学びますので!
コレは、秘密にしておいたほうがいいヤーツ!
ちゃんと覚えました!