13:お肉大好きメイツ。
今日の朝食は、厚切りのハムが三枚とカリカリベーコンが五枚ありました。少し違うのは、レオン様にもハムが一枚とベーコンが二枚おいてあったこと。
細かく砕いたくるみのパンにまたベーコンとスクランブルエッグを挟んでいましたら、レオン様も自分もすると言い出しました。
あまりお行儀は良くないと思うのですが、私は美味しいものには逆らわない主義。レオン様は討伐で野営飯に慣れているので、そもそもそこまで気にしない主義。
奇跡の合致です。
「ん、美味いな。だが少し味が足りない」
「マヨネーズを少しだけパンの断面に塗るといいですよ」
「ふむ。次のはそうする」
レオン様がワクワクとした顔をしています。
「今まで、出されたものを食べるだけだったが、味などに工夫するというのは楽しいものだな」
ハムとベーコンのダブル挟みはタブーなのか? など、いろんなことを聞かれました。
個人的には、アリ!です。ふたつの食感と、それぞれの旨味が補完しあって好きです。が、これも人それぞれ。
「試して成功や失敗を体験するのがおすすめですわ」
「ふむ。見習い騎士と同じだな」
「うふふふ。レオン様もお肉大好きメイツの仲間入りですね」
「…………お肉大好き、メイツ……ぶふっ……ふはははは! ゲホッ!」
何故かむせ込むほどに笑われました。
そして、何度も『お肉大好きメイツ』と呟かれていましだが、何にツボったのでしょうか?
今朝狩ったホーンラビットの調理を指示するため、厨房に向かいました。
ちなみに、レオン様は騎士団に向かわれました。通常のお仕事があったのに早朝から付き合わせてしまい大変申し訳なかったのですが、レオン様は笑顔で「楽しかった。また共に行こう」と言ってくださり、ちょっと嬉しかったです。
レオン様は着々とお肉大好きメイツになっていますね。
この調子で厨房の使用人たちもメイツにしていきましょう。とりあえず料理長から。
「――――ということで、先ずはホーンラビットの捌き方を教えてくださいます? うさぎと一緒でいいのかしら?」
「……はぁ。えっと、はい。ホーンラビットの角は素材として利用されますので、なるべく傷付けずに根元から魔獣専用のノコギリで切断します」
魔獣専用ノコギリとかあるのね。
聞けば、ノコギリの刃に特殊な加工がされているそう。普通のノコギリでも切れなくはないが、一時間近くかかるそう。専用ノコギリだと十分程度なのだとか。
「凄いわね、魔獣専用ノコギリ」
角をガシッと握り、ゴリガリと削りながら切断しました。ちょっと楽しいです。
「ところで、素材って何になるの?」
「ホーンラビットですと、綺麗に研いで刺す目的の武器からアイスピックなどの日常品と多様性がありますよ」
「へぇ。ただ討伐するだけじゃないのね」
そんな話をしつつ、ホーンラビットを捌き、料理長に『リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル』を作るように指示しましたら、引きつった笑顔を返されてしまいました。
リエーブル・ア・ラ・ロワイヤルは、『王家の野うさぎ』とも呼ばれる、ジビエ料理で最高峰といわれているものです。
皮を剥いだうさぎを開きにし、骨を取り除きます。その開いた肉にうさぎの内臓やフォアグラのペーストやトリュフなどを敷き詰め、筒状に丸めます。そして、それをハーブでしっかりと漬け込みながら煮たものなのですが、非常に手間が掛かるので、料理人たちはレシピは知っていても、なかなか作ろうとはしません。
料理長の引きつった笑顔でそれを思い出しましたが、無視で。
レオン様に食べていただきたいので、何が何でも作っていただきます。料理長がしたくないというのなら、私がやります。
そう伝えると、料理長が項垂れながら「作らせていただきます」と言いました。
言質ゲットです!