12:ホーンラビット?
レオン様が「来るぞ」と言って一分もしないうちに、草むらがガサガサと音を立て始めました。
何かが数匹近付いてきています。
「ホーンラビットは、ああやって仲間を呼ぶ。仕留めるときは喉を潰さないと、何匹も何匹も襲ってくるぞ」
「……初めて見ました」
「ん、王都には魔獣は出ないからな」
少し下がっていなさいと言われたので、素直に後退して戦い方を観察することにしました。
レオン様が上半身を少しだけ低くした次の瞬間、素早く駆け出して草むらの中で剣を一振り。
「ん。二羽だけか」
なぜ、一振りで二羽仕留められているんでしょうか?
しかも二羽ともしっかりと喉を斬られています。
もしや、レオン様ってとてつもなく優秀な騎士様なのでは?
狩り場に来て十五分。
既にホーンラビット三羽を仕留めてしまいました。
「まだ何か探すか?」
「いえ、狩り過ぎても生態系を崩しますので」
と、そこまで言ってふと疑問が出てきました。魔獣の場合は狩りきった方が良いのでしょうか?
レオン様に聞いたところ、やはり狩り過ぎてもいけないのだそう。
「ホーンラビットは野生の動物の中でも少し強い程度でしかなく、基本は肉食獣の餌になりやすい。つまり、それが減ると?」
「肉食獣の餌が足りなくなり、人里に下りてくる?」
「ん、正解だ」
レオン様が柔らかく微笑みながら、頭を撫でて褒めてくださいました。ちょっと子供扱いされていませんかね?
でも、まぁ、なんだか心がポカポカするので文句はありませんが。
「では血抜きをしてから、屋敷に戻ろうか」
「はい」
二人で手早く血抜き処理をし、馬を繋いでいた場所に戻りました。
もう少し、二人きりでいたかったような、ホーンラビットのお肉を早く食べたいような、そんな微妙な気持ちです。
帰り路は常歩で並行しました。
個人的には肉が傷むので、速歩か駆足で帰りたかったのですが、「少し話さないか」と言われれば、吝かではなく。しかも、了承すると、嬉しそうに微笑まれるものだから、更に更に吝かではなく……。
先日は見かけなかった魔獣。なぜなのかと思いましたら、あそこはそもそも魔獣がほぼ出ないことと、基本的に夜行性が多いのだそう。
「魔獣といえど、根本は同じ習性だ」
「なるほど。だからホーンラビットも早朝の今、出てきていたのですね」
「ああ、そうだ」
レオン様と魔獣についてたっぷりお話ができ、私はかなりまんぞくなのですが、これで良かったのでしょうか?
屋敷に戻り、湯を浴びてから朝食を取ることになりました。レオン様はその後に騎士団でお仕事をされるそうです。
朝から体力を使わせてしまいなんだか申し訳ない気分です。
お昼と夜は、疲労を回復させるようなお肉料理を食べていただきたいですね。