11:狩り場に到着。
白馬に乗り、駆足で先行して狩り場に向かいました。
気性の穏やかな子のようで、とても乗りやすかったです。戻ったらしっかりとブラッシングしてお礼をしましょう。
私とほぼ同時にレオン様と芦毛の馬が到着しました。
白馬はスッと止まり、ぷるっと軽く頭を揺らしただけで、耳も両脇を向いておりリラックスしていましたが、芦毛の馬はどうやらご機嫌斜めのよう。
馬の不機嫌そうな鼻息が聞こえて振り返ると、棹立ち――前脚を高く上げて後ろ脚のみで立つクールベットという技のような格好――になっていました。
レオン様が振り落とされないか心配していましたが、彼は手慣れた様子で手綱を片手でしっかりと握り、もう片手で首と胸の境い目辺りを優しくパンパンと叩いていました。
「怒るな怒るな。全く、お前はわがままだなぁ」
レオン様曰く、芦毛の馬ことラースは、とにかく先頭を走りたがるのだとか。またレオン様以外が乗ろうとすると、大体において蹴られそうになるのだとか。
「アレクは誰でも乗せたがるし、穏やかな馬だから大丈夫なんだがな」
私が乗っている白馬はアレクと言うそうです。
降りて鼻筋を撫でながらお礼を言うと、スリッと顔を擦り付けて来ました。本当に人懐っこい馬のようです。
対してラースは未だにご機嫌斜め。耳をぺったりと後ろに倒して、ブルルルと鼻で鳴いていました。
「ん。ほら、草が食えるところに繋いでやるから少し待て」
レオン様がラースに鼻でドシドシと突付かれながら歩いています。レオン様、めちゃくちゃ懐かれてますね?
なんだか駄々を捏ねる子供と気の長いお父さんのような構図です。
少しこの馬たちと戯れたくはありましたが、狩り場にお肉が待っていますので、今は我慢です。
レオン様と二人、森の中を足音を立てぬよう歩きます。
現在、私たちはうさぎを狩ろうとしています。うさぎは、『薄明薄暮性』で、朝方や夕方に活発になるので、早朝に巣穴から出てきているところを狙いたいのです。
日中は必ず寝ているというわけではありませんが、発見率がかなり違います。
そっと歩きながら草木の陰を覗いていると、モフプリッとしたうさぎのお尻が見えました。野ウサギにしては一回りほど大きいような気がします。
素早く弓を肩から外し、矢を番えて、射る。
――――よし!
草陰に見えていたうさぎの体が、ボテリと地面に横たわったので回収しようと一歩踏み出した時でした。
うさぎは鳴く器官がないのに、ギェェェェと断末魔のような叫び声を上げました。それと同時に見えた角。
うさぎの額から伸びる、角。
「え?」
「ホーンラビットか。仲間が来るぞ」
レオン様がそう言うと、腰から剣を抜かれました。
――――え?