【3-1】野上美緒編
目黒信二──あのヲタクの助言をもとに、オレは署内で参考人たちの尋問に取りかかった。
刑事でもない探偵チーム(剛流・目黒)を同席させるわけにも行かず、オレのみによるインタビューとなるので聞き漏らしがあってはならない。
褌のヒモを締めてその場に臨んだ。褌じゃないけど。
とは言え、イカだのタコだのというアカウント名のツイスター仲間たちについてはほとんど聞くこともなかった。
彼らはただのイベント参加者に過ぎず、たまたま死体の入った段ボール箱を目にしただけ……とは目黒の考えである。
予断を持つのは危険だが、基本的にオレもおなじ考えだ。
ただし野上美緒はべつ。彼女は主催者の三沢と裏で結託し、自分のスタッフまで引き連れてあれこれと画策した形跡がある。
あまつさえ彼女はTAC七郎──被害者と面識があるかもしれないのだ。そこのところ、じっくり教えてもらおうじゃないの。
「情報によると、野上さん、あなたはむかしドラマでTAC七郎さんと共演したことがあるそうじゃないですか」
「共演?」彼女は心底びっくりした顔で、「……ああ、『快速男』ですか」
「だったら被害者と面識がない、はウソになりますよね」
「ちょっと待ってください」
野上は顔を赤らめ憤慨したかに見えたが、すぐに呆れたように笑った。
「クレジットって分かります? おなじ作品に名前が載ったというだけで一緒にお芝居したわけじゃないし、そもそもTACさんに会ったことすらない。……まあ、ケータイの履歴でもなんでも好きなだけ調べてみたらいかがですか。情報が古すぎて残っていないかもしれませんけど!」
そう一気にまくし立てられ、こちらは返す言葉もない。くそっ、目黒のやつ、微妙な情報を教えやがって……。
「分かりました。こちらの早合点でした、申し訳ありません」さらっとオレは話題を変える。「今回、三沢さんのお宅でイベントが予定されていましたね。三沢さん、野上さん、そしてスタッフさんを交えてかなり入念に準備されていたようですが」
「それが何か」
「気になったことなど、ありませんでしたか。どんな些細なことでもけっこうです」
「べつに……あっ、」
野上は大根役者丸出しのリアクションをした。
口元を押さえること数秒。言うべきか、言わざるべきかを算段しているようだ。ここまできたら言う以外の選択肢はないのだが。
「どうかされましたか」
「……いいえ、あの、リハーサルの日にすごい偶然がありまして」
「ほう」
「三沢さんが──」