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シン・ヲタク爆誕!  作者: 大原英一
剛流恵子の苦悩
7/19

【2-3】

 翌日の土曜日、ふたたび佐須刑事にうちの事務所へきてもらった。ここで彼に、ある男を会わせることになっていた。

 その男とはアタシの大学時代の同級生で、目黒信二という。ばりばりのヲタクだ。昨日アタシは目黒に電話して今日の約束を取りつけた。彼に会うのは半年ぶりだった。

 約束の午前11時を10分すぎても目黒はあらわれず、アタシはイラッとして彼のスマホにかけた。電話に出た彼は事務所の場所が分からず道に迷っているという。


 ウソでしょ──半年前にきたこと、あるやろ!

 仕方ないので駅まで戻れと彼に指示し、アタシは刑事にことわって、そこまで迎えに行くことに。はあ……。

 そんなわけで、アタシが彼らを事務所で引き合わせることができたのは11時半くらいだった。

 駅から目黒を連れて事務所に戻る道すがら、彼はアホみたく、

「いやあ剛流氏、いつ見てもお美しい」を連呼した。わかった、つーの。


 それにしても佐須刑事、この目黒の恰好(いでたち)を見たらビビるだろうなあ。

 上からバンダナ、黒縁メガネ、大リーグ・ロジャースのTシャツを肩まくりし、ダサいベルトをしたチノパンのなかにシャツを「イン」している。

 オシャレの一環としてやっているとは、とても思えない。言うなればヲタクとしての意思表明?

 身長は175センチくらいあってスマートで、ちゃんとした服装をすればそれなりに見えるのに、いったい何が(たの)しいのだろう。

 そんなことを心でぶつくさ言っているうちに事務所に着いた。


「た、たいへんお待たせしました、刑事どの! めめ、目黒信二と申します」

「そんなに緊張しないで──K県警の佐須です。今日はご足労いただき、どうもありがとう」

 とりあえずアタシは、ふたりの客人にお茶を出した。

「K県警、ですか」

「相撲原の、あの事件を担当している」

「TAC御大、気の毒でしたねえ」

御大(おんたい)?」


「いえいえ」目黒は手を振りながら、「われわれヲタクにとっては神様みたいな存在でしたから、TAC氏は」

「なるほどね。あなたは……くっ、」佐須刑事は笑いを堪えるのに必死だった。

 そうなのだ。アタシはもう感覚がマヒしているが、この目黒という男、笑いのツボを刺激する妙な毒性がある。

「……剛流さんの、大学時代の同級生なんだね」

「ええ。剛流氏とは大学1年のときにおなじサークルで知り合いまして、それからもう14年の歳月が……ぐっ、」


 アタシは目黒の足を踏んづけた。そんなこと言ったら、歳がバレるでしょうが!

「いやあ、この……美人にヒールで足を踏まれるというのは、じつに萌えぇですなあ」

 ダメだ、こいつ。刑事さん、早く本題に入って。

「さっそくワタクシのほうからインタビューさせてください」

 言って目黒はカバンからノートを取り出した。どの辺がさっそくなのか、さっぱり分からない。


「……あ、そのまえに、遺体発見時にその場にいた方々(メンバー)を確認させてもらってもいいですか。昨日、電話で剛流氏から伺った事前情報の確認です」

 そうだった。昨日目黒に電話したとき、彼はやたらとアタシから事件の詳細を聞き出そうとした。

 又聞(またぎ)きになるし二度手間にもなるから今日まで待て、というアタシの助言も聞かず、せめて当事者(メンバー)情報だけでも教えてくれとしつこくせがまれたのだ。

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