【4-6】
秋葉原での長老との会見を皮切りに状況は急転、というか、事件はいちおうの決着を迎えたのかな?
山北久美子がTAC七郎殺害および死体遺棄を自供したのだ──。
長老から得た情報で最大のものは、やはり山北と野上美緒に過去に親交があったこと。
これにより野上が写真の面通しでウソをこいたのが丸分かりになった。いくら写真の山北が年齢を重ねているとは言え、知りませんは通らない。
さっそく佐須刑事による野上への締め上げが行なわれ、これまで謎だった犯行の動機的な部分が明らかになった。
野上は山北久美子の過去を知っていた。山北がTAC七郎の子を孕み、中絶していたということを。
それがきっかけで山北はグループを脱退、芸能界からも足を洗った。
きっとTAC七郎に恨みがあったんだ──久美ちゃんの写真を見たとき、今回の殺人の理由はそれしかないと野上は思ったという。
怖くて久美ちゃんのことは言い出せなかった、とも涙ながらに彼女は語った。
ついで山北本人への事情聴取が行なわれ、彼女は自供をはじめたという次第である。
「だがな、この自供には不可解な点も多い」
場面はふたたびウチの事務所。目黒、アタシ、佐須刑事による最後のミーティングが開かれた。
「そのまえに、」目黒が挙手する。「成増健吾は完全に潔白なのですか」
「ああ、さんざん調べたが彼と山北の接点は見つからない。……まあ、野上のマネージャー時代に仕事を通じて面識くらいはあったかもしれないが」
「……そうですか。山北久美子単独だと、犯行にだいぶムリが生じますな。だいいち彼女は降霊会の日時をどうやって知ったんです。それと会場であるミサワ氏宅の住所は?」
「そこだよな、」刑事は苦悶の表情を浮かべる。「山北が言うにはSNSツイスターで野上美緒の垢をまず見つけて、そこから裏垢のミオタソ、インフェルノミサワとつながって行ったらしい」
「百歩譲って日時は良しとしましょう。で、住所は?」
「小田急相撲原駅周辺の、三沢さんと名のつく家をすべてネットで検索した上で絞り込んだらしい」
「かなり苦しいですね。インフェルノミサワ氏が三沢さんとは、かぎらないでしょう。まあ、十中八九それっぽい感じはしますけど」
「うーん、」ただただ困り顔の佐須刑事。
「一千歩譲って場所も良しとしましょう。で、わざわざリスクを犯して降霊会の会場へ死体をお届けする理由は?」
「山北が言うには、あわれなヲタク教祖の死骸こそ生贄にふさわしい、と」
「あ、それなら分かります」
「分かるんかいっ」思わずつっこみを入れるアタシ。
目黒は歯牙にもかけず質問をつづける。
「TAC氏殺害については? どうやって彼を誘い出し、どこでどう殺したんですか」
「誘い文句はやはり乱交パーティだったそうだ。実際ファンファーレでそういうサービスはなかったらしいが、七郎はスタッフにも嬢にも、以前からそれを持ちかけていたというもっぱらの評判だ」
「念願叶ってTAC氏は出かけて行ったと、なるほど。で、送迎役は山北自身が?」
「ああ」
「言っても彼女はTAC氏の元カノです。面が割れていますよね、警戒されませんか」
「帽子、グラサンにマスク──とベタな変装で誤魔化したようだ。秘密のパーティですから、という理由でな」
「殺害現場は?」
「山北の自宅のガレージだ。クルマは外に置いた状態で七郎のみをガレージに招き入れ、シャッターを下ろしたあとでめった刺しにしたらしい」
「現場は血の海でしょうな」
「あらかじめブルーシートで養生してあったそうだ。そのガレージで死体を箱詰めし、ひと晩寝かせて宅配に及んだ、と」
「なるほど」目黒はアゴをさすりながら、「ブルーシートはその後に焼却、凶器のナイフは灰と一緒に海に捨てた──そんな線ですかな」
ああ、と刑事はため息まじりに返した。




