【4-2】
「ただ?」目黒がここぞとばかりに聞き返す。
「その2時間前──金曜日の13時ごろTAC七郎に電話した人間、というか業者がいる」
佐須刑事はアタシのほうをチラと見て、
「デリヘル業者だ。店の名前はファンファーレ」
「で・り・へ・るキターーーーッ!!」
「ちょっと、なに盛り上がってんのよ……このエロヲタク!」
「いやいや、これは心外ですぞ剛流氏」目黒が慌てて取りつく。「ワタクシは、女性は声優にしか興味ありませんから」
それはそれで問題があるような──てか、盛り上がったことの説明になっていない。
「ワタクシのテンションがMAXになったのは、まさにそのような仲介役がいることを想定していたからですよ」
「仲介?」
「そう、実行犯と被害者の中継をする役……一般に言うところの共犯者、ですな」
「──共犯者か」刑事がうなる。
「佐須刑事、その金曜日13時ごろに、業者のほうからTAC氏に電話をかけたんですね? 逆ではなくて」
「ああ、たしかにヘンだな」
「ヘンですよ。宅配ピザでもなんでも、まずお客さんが電話で注文するじゃないですか」
「すると、ファンファーレの電話番──何人いるか知らんけど、そのひとりが共犯者ってことか」
「まあ、そう簡単には尻尾を出さないでしょうな」目黒は腕組みしながら、「逆に電話番にとって言い逃れは容易です。発着信履歴から間違って顧客のTAC氏に発信してしまった、とでも言えばいいのですから」
「顧客って、TAC七郎はけっこうな常連だったのかな」アタシはちょっと引いた。
「でしょうな。ワタクシの想像ですが──そのファンファーレですか、は特別なオプションを設けていたのではないでしょうか」
「オプション?」と刑事。「どんな」
「剛流氏、引かないでくださいよ?」目黒は釘を刺してから、「たとえば乱交パーティです」
「なるほど、それで七郎はのこのこと出かけて行ったわけか!」
なるほどじゃねーよ……正直、引くわ。
「被害者を秘密裏に呼び出すには、うってつけの催しだと思います。──佐須刑事、TAC氏の死亡推定日時は?」
「検死の結果、遺体発見時に死後24時間ほど経過していたそうだから、殺されたのは18日土曜日の14時から16時のあいだ、ってところだろうな」
「共犯者の誘い文句はたぶん、こんな感じだったのではないでしょうか、
【土曜日の14時に●●駅までいらっしゃってください。そこからクルマで会場までご案内します】
……と」
「なるほどね」引いたアタシも思わず納得する。「その●●駅には実行犯・成増が待っていたわけだ」
「そう、まさに死の番人です。成増はTAC氏をクルマに乗せ──たとえば、人気のないガレージのような場所に入って行きます。乱交っぽい雰囲気のところだし、TAC氏も警戒するどころかテンションMAXだったのではないでしょうか」
「それであっけなく昇天、まさに天に召されたってわけだ」刑事のブラックジョークが炸裂する。
「死因は何だったのですか」
「出血多量だ。哀れなヲタクの教祖は、刃物でめった刺しにされていた」
「やはり、」目黒は言葉を詰まらせる。「よほどの怨恨があったと見えますな」
「ねえ目黒くん、状況的に成増健吾があやしいっていうのは分かるけど、これからどうするつもり?」
「とりあえず共犯者の存在が気になるところですが──さきほども申しましたとおり、そう容易く尻尾を出すとは思えないんですよねえ」
「その共犯者って、成増とどういう関係なんだろう。友人か? むかしの芸能関係者か?」
「あ、そうだ」急にアタシはひらめいた。「ファンファーレのスタッフ全員の写真を撮って、野上美緒に面通しさせたら?」
すると目黒はかっと目を見開き、すばらしい、すばらし過ぎますぞ剛流氏! と叫んだあとで、
「結婚してください」と付け加えた。
もちろんアタシは彼にビンタした。




