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シン・ヲタク爆誕!  作者: 大原英一
目黒信二の推理
14/19

【4-2】

「ただ?」目黒がここぞとばかりに聞き返す。

「その2時間前──金曜日の13時ごろTAC七郎に電話した人間、というか業者がいる」

 佐須刑事はアタシのほうをチラと見て、

「デリヘル業者だ。店の名前はファンファーレ」

「で・り・へ・るキターーーーッ!!」

「ちょっと、なに盛り上がってんのよ……このエロヲタク!」

「いやいや、これは心外ですぞ剛流氏」目黒が慌てて取りつく。「ワタクシは、女性は声優にしか興味ありませんから」

 それはそれで問題があるような──てか、盛り上がったことの説明になっていない。


「ワタクシのテンションがMAXになったのは、まさにそのような仲介役がいることを想定していたからですよ」

「仲介?」

「そう、実行犯と被害者の中継をする役……一般に言うところの共犯者、ですな」

「──共犯者か」刑事がうなる。

「佐須刑事、その金曜日13時ごろに、業者(ファンファーレ)のほうからTAC氏に電話をかけたんですね? 逆ではなくて」

「ああ、たしかにヘンだな」

「ヘンですよ。宅配ピザでもなんでも、まずお客さんが電話で注文するじゃないですか」


「すると、ファンファーレの電話番──何人いるか知らんけど、そのひとりが共犯者ってことか」

「まあ、そう簡単には尻尾を出さないでしょうな」目黒は腕組みしながら、「逆に電話番にとって言い逃れは容易です。発着信履歴から間違って(・・・・)顧客のTAC氏に発信してしまった、とでも言えばいいのですから」

「顧客って、TAC七郎はけっこうな常連だったのかな」アタシはちょっと引いた。

「でしょうな。ワタクシの想像ですが──そのファンファーレですか、は特別なオプションを設けていたのではないでしょうか」

「オプション?」と刑事。「どんな」


「剛流氏、引かないでくださいよ?」目黒は釘を刺してから、「たとえば乱交パーティです」

「なるほど、それで七郎はのこのこと出かけて行ったわけか!」

 なるほどじゃねーよ……正直、引くわ。

「被害者を秘密裏に呼び出すには、うってつけの催しだと思います。──佐須刑事、TAC氏の死亡推定日時は?」

「検死の結果、遺体発見時に死後24時間ほど経過していたそうだから、殺されたのは18日土曜日の14時から16時のあいだ、ってところだろうな」

「共犯者の誘い文句はたぶん、こんな感じだったのではないでしょうか、


【土曜日の14時に●●駅までいらっしゃってください。そこからクルマで会場までご案内します】


……と」

「なるほどね」引いたアタシも思わず納得する。「その●●駅には実行犯・成増が待っていたわけだ」

「そう、まさに死の番人です。成増はTAC氏をクルマに乗せ──たとえば、人気のないガレージのような場所に入って行きます。乱交(それ)っぽい雰囲気のところだし、TAC氏も警戒するどころかテンションMAXだったのではないでしょうか」

「それであっけなく昇天、まさに天に召されたってわけだ」刑事のブラックジョークが炸裂する。

「死因は何だったのですか」


「出血多量だ。哀れなヲタクの教祖は、刃物でめった刺しにされていた」

「やはり、」目黒は言葉を詰まらせる。「よほどの怨恨があったと見えますな」

「ねえ目黒くん、状況的に成増健吾があやしいっていうのは分かるけど、これからどうするつもり?」

「とりあえず共犯者の存在が気になるところですが──さきほども申しましたとおり、そう容易(たやす)く尻尾を出すとは思えないんですよねえ」

「その共犯者って、成増とどういう関係なんだろう。友人か? むかしの芸能関係者か?」

「あ、そうだ」急にアタシはひらめいた。「ファンファーレのスタッフ全員の写真を撮って、野上美緒に面通(めんどお)しさせたら?」


 すると目黒はかっと目を見開き、すばらしい、すばらし過ぎますぞ剛流氏! と叫んだあとで、

「結婚してください」と付け加えた。

 もちろんアタシは彼にビンタした。

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