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シン・ヲタク爆誕!  作者: 大原英一
目黒信二の推理
13/19

【4-1】

 その日、ふたたびウチの事務所でミーティングを行なった。参加者は目黒、アタシ、佐須刑事の三人(トリオ)

 冒頭を飾ったのは刑事による尋問の内容報告。めずらしく目黒が神妙な面持ちで耳を傾けている。

 お世辞にも濃い内容とは言えなかったが、ひとつだけ特筆すべき点があった。

 成増健吾──彼の名前と経歴が判明したことは素直に評価したい。

 刑事の報告はきわめてシンプルだった。成増のこと、そして横浜アキコが最後に漏らしたひと言。その2点しかなかった。

 だが目黒にはそれで十分だったようだ。しゃべりたくて、もう口唇がプルプルしている。


「どうだ、目黒くん。横浜の言葉に何か引っかからんか。ミサワとインフェルノミサワ、このふたつに、とてつもない差がある気がするのはオレだけかな」

「それはもう、天国と地獄(ヘブン・アンド・ヘル)くらいの差ですよ」

「どういうこと?」とアタシ。

「インフェルノミサワ──そのひと言が、成増にTAC氏殺害および死体遺棄を決断させてしまったのです。もちろん、直接の動機は彼がミオタソと偶然再会したことですが」

「どういうことだ」今度は刑事が言った。


「前回お話しましたね、死体遺棄の動機として、犯人がミオタソに死体を見せたかったということが考えられる、と。見せたかった理由についてはワタクシの推論をあとで申し上げますが、とにかくその前提で話を進めてもよろしいですか」

「いいだろう」言って刑事がこっちを見る。アタシもうなずく。

「犯人は──いや、この際成増と断言しましょう。成増はスマホを届けに行ったさきで偶然ミオタソと再会します。で、これもまた偶然なんですが、その直前にインフェルノミサワという言葉を耳にしてしまった」

「ふたつの偶然が重なった、と」

「そういうことです」目黒はにっこりと笑う。


 ついで彼はノートPCを手に持ち、画面をアタシたちに向けた。そこにはSNSツイスターのページが映し出されていた。

「便利な世の中です。『インフェルノミサワ』で検索すれば、たちまちツイスターの彼のページに行き当たります。ここでミサワ氏は大々的に降霊会の告知をしていますね」


【5月19日(日)──14時に小田急相撲原駅集合。その後ミサワが会場(拙宅)へ案内します】


「なるほど」思わずアタシはうなる。「降霊会当日のスケジュールを成増はゲットした、てわけね」

「細かいスケジュールはどうでもいいのですよ、剛流氏。大事なのは14時にミサワ氏が《小田急相撲原駅》にいるということです」

「ああ、そうか!」刑事が叫んだ。「裏を返せばその時刻、三沢は自宅にいない」

「そのとおり。成増にとって最大の障がいは家主のミサワ氏と出くわすこと。段ボール箱──死体入りのそれを玄関先に運ぶ際に、いちばん避けたかったはず。そこさえクリアしてしまえば、あとはピザを配達するより簡単です。冷め切った死体(ピザ)ですから」

「でも、まさかスタッフ2名が留守番していたってところまで、想像できなかったでしょうね」


「さすが剛流氏、すばらしいご指摘です」目黒にほめられた。「ほかにもミサワ氏の家族や友人が家のなかに潜んでいるのではないか、などと心配しだしたらキリがありません。でも考えてみてください、降霊会ですよ。家族がいるのに家でそんな物騒なことができますか? ツイスターの仲間を呼ぶのにリアルの友人を家で待機させますか? ……確率はめちゃくちゃ低いと言わざるを得ません」

「そこに賭けたんだね、成増は」

「ええ。スタッフが潜んでいたとは成増も予想外だったでしょうが、さいわい横浜氏、植木氏は宅内に(こも)りきりだったので結果オーライです」


「目黒くん。成増に死体遺棄が可能だったということは分かった。で、肝心のTAC七郎殺害についてはどうなんだ」

「そうですね、箱以前に中身の死体(ピザ)を用意しないといけません」

「ピザにたとえるの、やめてよね。お昼に注文しようと思ってたのに」

「昼飯のまえに、ぜひ聞かせてくれ」

「佐須刑事、あらためて確認しますが、TAC氏はいつから消息を絶たれていたのですか」

「17日金曜日の15時ごろ、七郎は出版社の人間と打ち合わせをして、そこから誰も彼を見ていない。妻子もいないもんだから、家に帰ったかすら分からない。ただ……」

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