【3-4】横浜アキコ編
横浜は植木とちがって協力的というか、逆に心配性が過ぎるくらいだった。今回の被害者・TAC七郎のつぎに狙われるのは自分ではないか、と考えるタイプだ。
裏方とは言え横浜もタレント事務所に属する人間──七郎とおなじ界隈だ、用心するに越したことはない。
むしろ植木のほうがもっと緊張感を持つべきなのかも……。
「今回、野上美緒さんのスタッフとして降霊会の手伝いをするようになった経緯を教えてください」
植木にしたのとおなじ質問をオレがすると、
「会社の指示ですから、自分の意思では(ありません)」彼女の答えもおなじだった。
「まさかとは思いますが、事務所がらみでTAC七郎氏とつきあいがあった、なんてことは?」
「私がですか」
「あなたにかぎらず。植木さんでも野上さんでも、スタッフ・タレント問わずで」
「……聞いたこと、ありません」
「わかりました。話は換りますが、リハーサルの日にタクシー運転手と会ったことをおぼえていますか。植木さんが家主の三沢さんと勘違いした、あの」
「……はい」
「その運転手がむかし、野上さんのマネージャーをしていたという事実をご存じですか」
「え、そうなんですか」おどろき顔、てことは知らないのだ。
「運転手と野上さんが会話しているのを聞きましたか」
「いいえ、(運転手が)三沢さんに何かを渡していて……それが落としたスマホだって、あとから聞いたんですけど」
やはり横浜と植木の位置まで野上の声は届かなかった。例の庭広すぎ問題である。
まいったな。協力的な彼女の姿勢に反比例するかのごとく、インタビューの中身が薄い。これ以上、聞くこともなさそうだ。
「植木さんはどうして、運転手を見て三沢さんだと思ったんでしょうな」
なんかもう、わけ分からんようになって、しょうもない質問をしてしまった。
「私は、そのかたが美緒ちゃんと一緒じゃなかったので直感的に三沢さんじゃないと思いました。でも植木くんはそう思ったらしく、声をかけてしまった──それもアカウント名で」
「アカウント名……」
「ええ、インフェルノミサワさんですか? て」
それは初耳だった。てゆうか、植木の話と微妙にちがう。彼は、ミサワさんですか、と運転手に声をかけたはずだ。
「たしかにアカウント名で呼んだんですね?」オレは念を押す。
「はい、美緒ちゃんも私たちのまえではずっとそう呼んでいたし。三沢さんから自己紹介されて、はじめてそれが本名だって知ったんです──まあ、それっぽい気はしましたけど」
何か知らんが胸がざわつく。
ミサワとインフェルノミサワ……似て非なるというか、そのふたつの間にはとてつもない隔たりがあるような気がしてならない。




