【3-3】植木ヨウスケ編
植木は尋問されることに対し、あきらかに不快感を抱いているようだった。いわゆる非協力的タイプってやつ。
まあ、たいていの市民は自分が事件に巻き込まれるなんて想像だにしないし、疑われるとなれば尚更だ。気持ちは分からんでもない。
「今回、野上美緒さんのスタッフとして降霊会の手伝いをするようになった経緯を教えてください」
かるくジャブを入れてみると、
「事務所というか会社の指示ですよ。言っておきますけどボクは──横浜さんもそうだけど、野上美緒の専属スタッフじゃない。ほかのアーティストのサポートもしなくちゃで忙しいんです。野上ははっきり言って落ち目ですし、そもそも歳だし、YOUTUBEに動画を上げるくらいしか最近は仕事がなくて……」
まあよく喋ること。事件に巻き込まれた云々よりも、仕事自体に不満を持っているらしいフシがある。
「本番の3日前──リハーサルの日にタクシー運転手と会ったことを、おぼえていますか」
適当に切り上げてこっちから質問した。
「ああ、そんなこともありましたね。……それが事件と何か関係が?」
大アリなんだよボケ! という言葉が出かかるのを、ぐっと堪える大人のオレ。まあ逆に言えば、植木のなかで運転手はノーマークという証左でもある。
「あの運転手が野上さんの元マネージャーだったという事実を知っていますか」
「……いいえ」植木はちょっとびっくりしていた。
三沢の話によれば、運転手は門扉にほど近い庭内にいて、玄関先に陣取っていた植木らスタッフとは距離があったらしい。
それで植木は3人──運転手、三沢、野上のやり取りを聞いていなかった。庭が広すぎたのだ。
「あなたは運転手と話をしましたか」
「しました」あっけらかんと植木は言う。「最初に彼が庭を通ってボクらのいる玄関先まで近づいてきたので、ミサワさんですか? って思わず聞いちゃいましたよ」
「それで?」
「彼は、いいえ、とだけ言って門のほうに。ボクらといるのが気まずかったんじゃないですかね」
「なるほど。もうひとつだけお聞かせください」
「あ、それ刑事コロンボの決めゼリフっすね」
シバいたろか、こいつ! ……大人なので実行はしないけど。
「リハーサルの日、本番の日を通して、何か気になることはなかったですか。とくに相方である横浜さんの様子とか、」
「うわっ、最悪ですね」植木は不快感丸出しで言った。「ボクは、たとえ横浜さんが犯人でも彼女を売るようなことはいっさい言いませんよ!」
なんか、いまのはちょっと恰好よかったぞ青年。




