【3-2】三沢功一郎編
「三沢さん、率直にお聞きします。今度の降霊会──けっきょく流れてしまいましたが、その準備期間を通して何か気になったことはありませんか」
「……ひとつだけ、あります」即答だった。
「それはタクシー運転手のことですか。あなたが落としたスマホを届けにきてくれた、という」
こちらが先回りすると三沢は顔を強張らせた。
彼には申し訳ないが尋問する順番、そこで得た情報をどう切って行くかは刑事であるオレの匙加減だ。
「ええ」と彼は俯きながら、「見た感じミオ……野上さんのお知り合いのようでした。でも運転手はボクにスマホを渡すと、彼女に何も言わずに去って行きました」
そして三沢は、スマホをタクシー車内に落としたこと、それを自宅に届けてほしいと運転手に願い出たことを告白した。
「なるほど。すべては偶然だった、と」
「本当にそうだと思います。彼らがウチで鉢合わせしたのも偶然ですし。もし運転手の到着がもう少し遅かったら、野上さんやスタッフも家のなかに入っていて顔を出すこともなかったでしょうから」
思わずオレはうなる。もしも……、
もし彼らが鉢合わせしなかったら、成増健吾──現タクシー運転手で野上美緒の元マネージャーの名が出ることはなかったろう。
「その運転手は、野上美緒さんの元マネージャーだそうです」
「……彼女もそれっぽいことを言っていました」
「ちなみに彼の名前はご存じですか」
「いいえ」
オレはちょっと間をおいて、
「タクシー会社に問い合わせれば分かることだから言いますが、彼の名は成増健吾と言います。彼とはしばらく距離をおいてください。逆に彼が接触してくるようなことがあれば、取り合わず警察にすぐ連絡してください」
「ヤバい人なんですか、あの人」三沢が心配そうにたずねる。
「くわしいことは言えませんが、芸能関係者が捜査の対象に挙がっています。被害者のTAC七郎がそちら方面ですから」
それを聞いてますます表情を曇らせる三沢。野上美緒の存在が言下に含まれているからだろう。
「タクシー運転手の件は、いったんここで終わりにします。もうひとつ、大事なことを伺いたいのですが」
「……何でしょうか」
「スタッフ2名のことです。彼らの行動に、おかしな点はなかったですか」
「いや、さすがにそれはなかったです」三沢はオレを睨むと、「刑事さんは彼らのことも疑っているのですか」
「関係者全員を疑うのが、われわれの仕事です。いいですか三沢さん、あなたが待ち合わせに出かけていた間、留守番をしていたのは彼らスタッフだけなんですよ? そしてその留守中に死体入りの段ボール箱が玄関先に置かれていた。疑うなというほうがムリってもんです」
彼は無言でアタマを振るだけだった。これ以上の収獲は期待できそうにない。




