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捨てられた姫の行方  作者: yuriko
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 魔の洞窟の前に到着すると、リャンは2人を降ろして、アメジストの横に控えた。アメジストは腰に付けていた棒をはずし、ミネアに渡した。


「これは、火棒だ。私の魔力で、24時間は火が点いている。その間に戻らないと試練のクリアにはならない。

 洞窟は地下へと続いている。精霊の使いが試練の相手。勝利して帰ってこれたら、試練クリアだ。私が知っている言い伝えは、ここまでだ。」


 ミネアは、アメジストから火棒を受け取り、頷いた。


「行ってきます。」


 ミネアは後ろは振り返らず、洞窟へと入っていく。


 洞窟に足を踏み入れると、一気に辺りは暗闇となる。火棒の灯りだけが、足元をひっそりと照らす。冷気が漂っていた。


(何か、ただならぬ霊気を感じる。。)


 ミネアは、背筋にぞくりとしたものを感じた。一歩一歩、足場を確認しながら前に進んで行く。


 しばらく歩いていくと、地下へと続く階段を見つける。ミネアは、一瞬の躊躇なく、階下へと降りていく。


(早く試練を終わらせて、タンジア王子のもとへ行かないと!)


 ミネアは、歩くスピードを速め、どんどんと前へ進んで行く。


 洞窟の水滴が、頭上から、ぽとりぽとりと落ちていく。突き進んでいくと、洞窟に溜まった水が川のように流れていた。


 ‘’試練を受ける者、ミネア。精霊の使いとの闘いに勝利した暁には、全ての魔法を継承しましょう‘’


 どこからか、甘く優しげな声が聞こえてくる。


(声の正体がない?天の声?)


 ミネアは、火棒を照らして辺りを見渡す。すると、川の流れの辺りから、蠢く影が現れたのを察知する。


「なにものだ!」


(妖精の使いとは?!)


 影は擦り寄るように、ミネアの方へ近寄ってくる。


 ミネアは、影の方へと火を照らす。


「タンジア王子!?!?」


 正体を現した妖精の使いは、タンジア王子そっくりだった。


「ミネア、無事で良かった。どれほど、心配しただろう。」


「王子?何故ここに?」


「精霊の力により、カリューシャの手をなんとか逃れてきた。ミネア、会いたかった。」


 ミネアは、息を呑んで王子を見つめる。声までそっくりそのまま、王子そのものであった。


(え?ほんもの?)


 タンジア王子は、魅惑の笑みでミネアを抱きしめようとする。


 王子の黒髪、漆黒の目、勇敢さを感じさせる凛々しい眉根、全てがミネアの知るタンジア王子であった。


「王子!良かった!ご無事だったのですね。私の代わりにカリューシャの太刀を受け、私を守ってくれた。本当に、感謝しております!」


 ミネアの目は、王子の姿に感激し、何も見えていなかった。


 ミネアは嬉しさに歓喜し、王子の胸に飛び込んで行く。王子がミネアを抱きしめようとしたその時だった。


「γβα」


 タンジア王子は魔術を唱え、ミネアの心臓向けて、氷の柱を放った。


「王子?!」


 ミネアは、瞬間的に心臓を避けたが、氷の刃は腹に突き刺さる。


「ミネア、さあ、私とあちらに行こう。」


 王子は不気味に笑い、氷の刃を次々とミネア狙って放ってくる。ミネアは、流血する腹の痛みを抑え、ぎりぎりに氷の刃を避ける。


「タンジア王子!なぜ?」


 ミネアの目には幻が映っていた。しかし、それはミネアにとって、本物であった。ミネアの流血の腹の怪我は重く、鈍痛がミネアを襲い、氷の刃を避けるスピードも鈍くなってくる。


(王子は、カリューシャに傷を負わされたショックで、混乱しているのだわ。。正気に戻さないと)


「王子!気を確かに!」


 ミネアは、洞窟の天井に這い上がり、氷の刃から避けながら、王子に近づいていく。王子がミネアを一瞬見失ったとき、ミネアは王子の胸に飛び込んで行く。


「王子!愛してます!死んで本望。何かに操られているのですか?私を見て!」


 ミネアは、王子を必死に抱き締め、耳元で叫ぶ。王子は一瞬攻撃の手を緩める。


(わかってくれた?)


「γβγ」


 しかし、それは魔術を唱える一瞬であった。今度は、火の柱がミネアの心臓に直撃する。


「うぅ、、」


 腹の傷からの流血と全身の火傷で、ミネアの意識が朦朧としてくる。


(まさか、王子はにせもの?)


 ミネアは、死の淵の中で、真実の光が見えた。それは、タンジア王子だと思っている者が、ただの影に照らされていくようだった。


(私は、何を見ていたのだろう。見えるものしか見ていない私の偽りの心が、偽物のタンジア王子を本物と捉えてしまった)


 ミネアの視界が霞んでいく。


「だめ。まだ死ねない。タンジア王子が、助けを待っている。」


 ミネアの脳裏に、カリューシャの太刀から守ってくれたタンジア王子の背中と、瀕死の中、微笑みながらの口づけが、走馬燈のように蘇ってくる。


 偽のタンジア王子は、次の攻撃を仕掛けてこようとしていた。ミネアに意識はなかった。死の淵の光を掴むように、足が浮くように、身体はゆっくりと起き上がる。


「古の精霊よ、天に司る、あまたなる精霊たちよ。我に力を!」


 ミネアの口からは、生まれる前からの、遠い記憶が呼び起こされるように、古の呪文を唱えた。


流血をしている腹に手をあて、


「γγγβ」


 と、回復魔法を唱える。ミネアの手から緑色の光が輝き、腹の傷を蘇生させる。


 意識を取り戻したミネアは、偽のタンジア王子からの攻撃を、回転しながら次々に避け、偽王子の背後に回った。


「γβγ!」


 ミネアは、攻撃魔法を唱えた。火の呪文は、燃え盛る炎となり、偽王子を燃やした。

偽王子は、灰となり、黒い影は消えた。


 ミネアの身体中に、魔法力がみなぎっていた。その力は、山を燃やしてしまえるような、強い力が感じられた。


‘’試練を受けた者、ミネア。あなたは、見えない目を呼び覚ましました。全ての魔法は、見えぬ力を信じることからはじまります。‘’


 甘い声がミネアに降ってくる。ミネアは、試練をクリアしたことを知った。


ミネアが洞窟から地上に戻ると、アメジストが心配そうに駆け寄ってきた。


「火の呪文をくらったか。」


「βαγ」


 ミネアは、回復魔法を唱える。緑色の光が全身を覆い、火傷が治癒されていく。


「おぉ。試練をクリアしたか。さすが、姉上の子だ。」


 アメジストは、安堵した表情で言った。


「これから、カルデア王国に飛びます。アメジストさん、お世話になりました。」


 ミネアは、笑顔を作って言う。内心では、タンジア王子が心配で、いてもたってもいられなかった。


「一晩休んで行ったほうが、、」


 アメジストは休息を申し出たが、ミネアは有無を言わせず、口を閉じて首を振る。


「わかった。また戻ってくる?」


 アメジストは肩をおとし、諦めた口調で聞いた。


「わからない。カルデアで何が起こるのか。行ってみないと、私のこれから先はわからない。」


 ミネアは、自分の運命を、この後のカルデア決戦に任せる覚悟であった。


「そうか。サーリャについては、ミネア様に任せる。石油も出るし、他国の利害が絡んでいる。慎重にね。」


 アメジストは、気を取り直して言った。


「わかった。答えがわかったら、また来る!色々ありがとう!」


 ミネアは笑って頷き、‘’π3r‘’と、瞬間移動の魔法を唱えた。ミネアは、アメジストの前から瞬時に消えた。



 カルデア城の西の角部屋に、ミネアは降り立った。


(なぜ、この部屋に?)


 ミネアは、部屋を見渡す。ベッドにドレッサー、テーブルに椅子、高級そうて、立派な家具だった。しかし、部屋は薄暗く、何年も使っていないような寒々しさが感じられる。


(もしかしたら、母上とアリシア王の部屋だったのかも?私の幼い記憶が、ここに移動させたのか)


 ミネアは、何か記憶を呼び起こすものがないか、部屋を探ったが、特に気を引くものはなかった。


「こんなところで、時間を使っていては、だめだわ。はやく、タンジア王子のところに行かないと!」


 ミネアは、まずはランビーノと合流しようと、あらかじめ指定されている、城内の大衆食堂へ向かった。



 ランビーノは、端の席で、竹笠を頭にかぶり、いつもの黒衣で、蕎麦を食べていた。


 ミネアは、わかりやすいランビーノの服装を優しく見て、ランビーノの隣に座った。


「お父さん、お待たせ!」


 ランビーノは、食べていた蕎麦の箸を止めて、ミネアを見た。


「ミネア、早かったな。」


「ええ、急いだわ。試練もクリアして、魔法を習得したわ。」


 ランビーノは、ミネアをまじまじと見た。驚きと敬服の光が、目から発せられた。


「この2日で、よくやったな。やはり、お前は何者かだな。魔法があれば、カリューシャに対抗できる。」


「お父さん、タンジア王子はどこに?!タンジア王子のお怪我は、大丈夫なの?カリューシャはどこに?」


 抑えていた感情を爆発させるように、ミネアはランビーノに言葉を浴びせた。


「まあ、焦るな、ミネア。気持ちはわかるが

・・飯はいつから食べてない?」


 ランビーノは、苦笑をしてミネアを落ち着かせた。


「ご飯なんて食べてる場合じゃない!」


「・・いつからだ?」


「最後に食べたのは、アリシア王国を発った日よ。2日、食べてない・・」


 ミネアは、思い出すと、急に腹が鳴るのを感じた。


「まずは、飯だ。蕎麦で良いよな?」


 ランビーノは、予想内の答えを聞くように、ミネアを見て柔らかく笑った。ランビーノは、ミネアが食事をとっていないと踏んで、集合場所を食堂にしたのだった。


(まったく、集中すると飯を食べることを忘れるのは、昔からだな)


 ランビーノは、ミネアが蕎麦を勢いよく啜っているのを、愛おしげに見守った。

読んでくださり、ありがとうございます(^^)

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