第1話 不幸中の大幸い
「RPGを始めた時、最初に何をやる?」
もし自分がRPGをするならまずは……。
「所持品及びステータスの確認だな。」
ステータスの見方は分からないので、まずは所持品を地面に並べてみた。
「……通学カバンじゃなくなってる……。」
俺が提げていた通学カバンは、ただのリュックサックになっていた。中身も変わっているかもしれないので確認してみることにする。
「……変わってるな。」
そう変わっていたのだ。
「なんも入ってねぇ。」
すっからかんに大変身!
「なんでやねんっ。」
どうやら神様は文明の利器を全て俺から奪ったようだ。
「……あのクソ女神め。」
俺の今の所持品はリュックサックしかない。
「……もしかしなくても、いきなり詰んでる?」
生き残るには絶望的な装備に俺は絶句していた。
「……いやまだだ。俺には能力がある!」
俺に残されたのは能力だけだった。
「配信者……きっとこれになにか特別なものが……、あると思えねぇ。」
期待は地の底まで落ちていたが、まぁ確認しないよりはマシだろう。
「ステータスオープン!なんて言って出てくるわけないよなーゲームじゃあるまいしっ!?」
出てきました。ゲームと同じやつ出てきちゃいました。
「うぉぉ!すげぇ!」
俺は感動した。まさか3次元で見ることになるとは夢にも思っていなかった。だが、
「……読めない。」
この世界の言語で書かれているのか、全く字が読めなかった。
「うぅ……。ハードモードすぎるだろぉ。」
何とかならないか……?そう思い俺は適当にステータス画面をいじる。すると、見覚えのあるマークを見つけた。
「っ!歯車のマークだ!これで言語をいじることが出来れば!」
藁にもすがる思いで俺は設定と思われるページを確認する。そして遂に……
「!あった!」
「日本語」という字を見つけることが出来た。俺はすぐさまそれをタッチする。すると突然、この世界の言語で書かれたボタンが出てきた。
「赤色と緑色……。多分許可マークだよな?なんか米印が気になるけど……押そう!」
特に何も考えず緑色のマークを押した。その瞬間、言語が切り替わった。
「日本語だ!」
度重なる不幸の中の幸運。そのおかげで、俺の気分は最高潮になったいた。喜びに浸っていたその時、無機質な機械音が鳴り響いた。
「裏コマンド、言語変更により特殊技能、『ユーザー補助機能』の解放が許可されました。今後、ユーザー補助機能を解除することはできません。」
某スマホのお助け機能のような声が頭の中で木霊する。
「え!?解除不能!?……まぁユーザー補助機能ならいいか。」
「『閑凪 要』をマスターに登録しました。今後、ユーザー補助機能によって行動をサポートします。」
「助手って感じかな?」
「そう考えてもらっても構いません。ただし、サポートできるのは配信者の力が関与するもののみです。」
配信者……そういえば何ができるんだろうか?俺は気になったので聞いてみることにした。
「ユーザー補助機能さん……ってなんか嫌だな。なんか呼び方他にないか?」
「マスターが決めてください。ちなみに私は女の子です。」
「女の子!?機械にも性別があるのか!?」
「私は機械ではありません。配信者の1部です。」
「なるほど……?よく分からないけど女の子なんだね。それじゃあ……チエで!」
「ありがとうございます。呼び出しの際のキーワードをチエに設定しました。」
「チエ、配信者ってどんな能力なのか教えてくれないか?」
俺はずっと気になっていた配信者について、チエに聞いてみることにした。
「配信者は、配信をすることが出来る能力です。配信をする場所は、マスターが元いた世界です。配信アカウントも引き続きマスターが使用していたものを使います。配信者という能力は、この世界の人間の持つ能力とは大きく勝手が異なります。」
「というと?」
「まず、能力は成長します。その成長方法は千差万別で、簡単なものから現実的に不可能なものまで様々です。能力が成長すること自体、あまり知られていません。その点配信者は、明確な成長方法が確立されています。ズバリ、登録者です。」
「と、登録者……。」
「配信者は、登録者の数の最上位が変化するごとに成長します。例えば、登録者が1桁台の場合、1人登録者が増えるごとに成長します。登録者が1000人の場合、1001人では成長せず、2000人になった時に成長します。」
「どんどん成長しにくくなるってことだな。」
「現在のマスターの登録者は205人。現時点での成長度は20です。」
「それってレベルが1上がるごとになんかあったりするのか?」
「はい。例えばレベル0から1に上がると、鑑定眼評価Fを取得します。鑑定眼とはその名の通り、モノの価値や相手の情報を見ることが出来る技能です。」
「その評価もレベルが上がるごとに上がっていくのか?」
「はい。F~Sまであります。」
「じゃあ今俺が持っている力を見せてくれよ。」
「了解。」
目の前に先程のステータス画面が現れる。
「えーっと。能力と技能と力能って何が違うんだ?」
「能力は神より授けられるもの、技能、力能は自分で獲得するもの。技能と力能の違いは元魔を使用とするかです。元魔というのは属性と解釈してください。後ほど説明します。」
「なるほど……。えーと、能力が『配信者』で成長度が20。技能が…『鑑定眼』『切り取り』、『貼り付け』、『複製』、『ステータス上昇』、『ステータス低下』、『更新』、『ユーザー補助機能』、『情報書庫』。……めちゃくちゃあるじゃん。これ全部評価Eで下から2番目だけどさ……、まぁまぁチートなのでは?」
「技能は、世界最高峰の実力者でも5つ所持が限界です。それ以上の所有者はいません。」
「おいおい、いきなり超えてるじゃねぇか……。」
とんでもない能力を授けてくれちゃったな……最高神様。
「ちなみにチエの評価が上がるとどうなるんだ?」
素直に疑問に思ったことを聞いてみる。何か変わるんだろうか。
「どんどん人間らしくなっていきます。」
「おぉ!気になる!是非ともあげたい!」
「私は裏コマンドにより取得された特殊技能ですので、評価アップ方法も特殊です。ちなみに評価がEになったのは、条件「名付け」をクリアしたからです。」
「そっかぁ……。」
少し残念だが仕方ない。
「力能は無いけど……。これは自分で作るのか?」
「はい。本来、技能もそうですが、自分で取得するものです。才能が関係しているのですが、技能にも力能にも上限があります。マスターには上限はありません。」
「自分で作る……か。それはおいおいでいいな。」
とりあえずステータスの確認はできた。なかなか面白い能力だ。
「ふぅ。文字ばかりで少し疲れたな。」
「30分の休息を推奨します。」
「了解。ちょっと眠ろうか。周囲に危険なヤツとかいる?」
「情報書庫より、現在地の地名及び生息動物を確認します。……名称ピイスセフ草原。生息動物、ホーンラビット、マジックマウス、ゴブリン、グレイウルフ等。周辺1キロ圏内に動的生命体は確認できません。危険度5パーセント。安全と言えるでしょう。」
「ん、了解。ありがとう。」
安全とわかったところで俺は地面に横たわった。色々なことが起きすぎて少し、熱っぽい。
「少し疲れが溜まってるようだ。」
「そのようですね。睡眠を推奨します。」
「そうするよ。おやすみ。」
とりあえず寝よう。起きた後は配信をしてみようかな……。
技能
『情報書庫』
世界の情報や書物を閲覧することが出来る。グレードFでは一般公開レベルの内容が確認できる(主にこの世界の常識とされるもの)。グレードが上がる事に読めるものは増えていく。グレードSにもなると、禁忌の書物を閲覧出来る。