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病とともに生きる  作者: Takatan
くも膜下出血編
8/36

高次脳機能障害

 自宅での生活の中、徐々に筋力も戻ってきて運動機能的に大きな後遺症は残らなかったことがわかってきました。でも、出血個所の脳組織は血腫によりつぶれたままです。血腫は徐々に吸収されていきますが、脳組織が再生することはなく、10年以上たった今でもMRIを撮れば損傷個所が白く映ります。

 主治医からは「おそらく普段使われていない部分が損傷したのだろう」と言われましたが、やはり脳へのダメージは確かにあったことがその後わかることになります。


 すし太郎で自信をつけた私は、義母を手伝って少しずつご飯の用意をするようになりました。

 折しも春のスナップエンドウシーズン、義父が丹精込めて育ててくれたスナップエンドウの下ごしらえをしようと台所に立って、ザルいっぱいのスナップエンドウを見た瞬間、、、。

 思いもよらないことが起こりました。

 ザルいっぱいのスナップエンドウにただただ圧倒されて、へなへなとその場に座り込んでしまったのです。

 何が起こったのかその時は全く分かりませんでした。はじめての感覚でした。

 しかしそれが何だったのか、何年か後に心理学の本で知ることになります。

 おそらくそれは高次脳機能障害の一つ、実行機能障害。

 病気の前でしたら、ザルいっぱいのスナップエンドウを見た瞬間、これだけは夕飯用で筋取りして、こっちでお湯を沸かし始めて、これは冷凍して、これは明日の分、、、というふうにその情報を処理し実行に移すことができていました。

 でもこの時の私は、その情報だけが入ってきて処理しきれなかったがために、ただただ圧倒されてしまったのだと思います。

 また、電話で「うん、明日10時ね、わかった。」と言って受話器を置いた途端、何時だったかをすっかり忘れてしまう、、、といったこともよく起こるようになっていました。短期記憶の保持の難しさです。

 聞き間違いも多くなりました。人はうまく聞き取れなくてもその場の文脈から推測して言葉を理解することができます。しかし、後で思うと、そのさまざまな情報の統合がうまくできなくなっていたように思います。

 高次脳機能障害、、、このような障害があることを私はこの病気で初めて知るのです。



 

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