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その狙撃手、天才につき 〜フルト=ルクスの狙撃にっき〜【750万PV感謝】  作者: ひろしたよだか


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69)ルクス、風邪をひく。


 風邪をひいた。いつ以来だろう。

 南の村でおじいに連れられて山に入った頃以降は記憶にないな。


 森の中や山中で大雨に見舞われ、ビショ濡れで家に帰った時も平気だったのに。


 やっぱり環境が大きく変わったので疲れが出たのだろうか。

 だるい体を引きずって寮母さんへ体調不良を伝えると、そのまま大人しく部屋に戻ってベッドに潜り込んだ。


 ぼんやりと部屋の外の通学前の喧騒に耳を傾けながら目を閉じる。


 それからしばらくすると、みんな寮を出て教室へ向かったのだろう、寮内は急速に静かになり、窓を叩く小さな雨音だけが残った。


 そうか、外は雨が降っているのか。そんなことを考えているうちに、僕はいつの間にか眠りについた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 体にまとわりつくように、小雨が降っている。

 濡れると言うよりも湿るといったほうが適当な、少し不快な湿度に僕は顔をしかめる。


 ここは、ああ、南の森か。僕の前には愛銃(カウンター)を肩に背負った大きな背中があった。

 そうだった、僕はおじいと森に入ったんだ。


「おじい、それ(カウンター)、僕もう使えるよ」何故だか上手く回らない口でおじいに伝えると、おじいはゆっくりとこちらを向く。


 右の頬から耳まで大きな傷のある、僕にとっては馴染みの顔が優しげな目で僕を見つめている。

 それからゆっくりと愛銃(カウンター)を肩から下ろすと、僕の頭を何度か撫でてから愛銃(カウンター)をそっと僕の方へ寄せた。


 そうして僕が愛銃(カウンター)を大事にかき抱くと、


「これはーーの銃だ、ルクス。大切にするんだよ」と言った。肝心な部分が上手く聞き取れず「今のなんて言ったの?」と聞こうとするが、口がうまく回らない。声にならない。


 もどかしく思っているうちに、おじいがゆっくりと森の奥へと行ってしまう。

 僕は必死におじいを呼ぶが、体がうまく動かない。


「〜〜〜〜!!!」




「おじい!」自分の声に驚いて、僕はそこで目を覚ます。


 、、、夢か。部屋の中はシンとして、窓を叩く雨音だけが続いていた。


 汗びっしょりだ。一度シャツを着替えようとしたところでノックが聞こえた。


 ドアを開けると寮母さんが心配そうに立っていた。ちょうど掃除をしていたところに僕の大声が聞こえて心配して来てくれたらしい。


「すみません、ちょっと夢を見ていたみたいで、、、」と伝えると、寮母さんは少しお腹に入れたほうがいいから、スープを持ってきてあげると食堂へと向かった。


 僕は一度ベットに腰掛け、机の端に立てかけてある愛銃(カウンター)に目を向ける。


 夢の中とはいえ、おじいは何が言いたかったのだろう。或いはあれは子供の頃の記憶か。


 そういえばラミー先輩が初対面の時に、この(カウンター)はシリアルナンバーが入っていると言っていたっけ。


 あの時はラミー先輩の奇行、、、入念な銃のチェックに気を取られて聞き流してしまったけれど、思い出したら少し気になってきた。今度ラミー先輩にナンバー刻印の場所を聞いてみることにしよう。


 そんなことを考えていたら寮母さんが野菜がたっぷり入ったスープと、風邪に効くというお茶を持ってきてくれた。


「器は元気になってから持ってきてくれればいいわ」と言ってくれる寮母さんにお礼を言って、スープを口にする。

優しい味で落ち着く。


 朝ごはんも食べていなかった僕は、思いの外お腹が減っていたようだ。スープを瞬く間に平らげる。

 お腹が満足したところですぐにベッドへ転がり込んで、またこんこんと眠った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 再び目を覚ますと、もう日も落ちた頃だった。

 寝すぎて少し体が痛い。ぐうっと身体を伸ばして体調を確認する。ダルさはない。熱も引いたみたいだ。


「よし」僕が小さく呟いたところで、控えめにドアがノックされる。


「はい」と声をかけドアをかけるとハインツが立っている。


「ああ、良かった元気そうだね」心配して様子を見にきてくれたようだ。


「お見舞いに来てくれたの? ありがとう。しっかり寝たからかなり良くなったよ」


「なら良かった。なんか食べるか飲むかするかい? 寮母さんから貰って来てあげるよ」


 そう言ってくれるハインツに感謝しつつ、「大丈夫」と答えようとしたところで、僕のお腹がぐうと鳴った。

 それを聞いたハインツが少し笑って「食欲もあるなら、もう大丈夫だ」と言った。


 スープの器も返さなければいけないので、僕はハインツと連れ立って食堂へ向かう。


 食堂は少し遅めの夕食をとる生徒でなかなかの賑わいだ。僕は寮母さんにお礼を伝えて器を返す。

 ついでに夕食をもらってテーブルへ足を運ぶと、僕らに手をあげる生徒が。ラット君とフランクだ。


 もともとハインツとはここで落ち合うことになっていたそう。


 みんなで行って僕を起こしてしまっても悪いから、お見舞いはハインツに任せて食堂で待機していたのだ。

 僕は2人にもお礼を言って席に着く。


 もうすっかり元気そうな僕を見て、2人も胸をなで下ろしていた。ありがたいことだと思う。


 それから今日の授業などの話をしながら4人で夕食。

 その最中、フランクが「そういえば忘れるところだった」とフォークを動かす手を止めた。


「何を?」僕が聞くと



「七不思議の、、、えっと5つ目になるのか。情報を仕入れて来たよ」と言うのだった。




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