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その狙撃手、天才につき 〜フルト=ルクスの狙撃にっき〜【750万PV感謝】  作者: ひろしたよだか


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40)リタさん無双


「リタさん! なんでここに!?」


「さっき着いてベル家に伺ったら、湖に遊びに行ったと聞いたからね、取るものもとりあえずこちらに来たんだ。で、状況は?」


リタさんに促されて(ルクス)が代表して、峠で野盗に襲われた事からの一連の流れを説明する。


「確実にその野盗の残党である根拠は?」


「捕らえられた仲間の解放を要求しているようです。その状況からそのように考えました」


なんだか授業のような雰囲気になって来たので、僕も少しかしこまって伝える。


「なるほど、では、彼らはすぐに人質に危害を加える可能性は少ないと言うことだな」


「どう言うことですか?」


「彼らにとって、人質は大切な交渉材料だ。ちょっと頭が回れば、捕虜解放で召使いを、自分たちの逃走の安全確保と金を手に入れたらその家の娘を解放して逃げるだろう。どちらかが死んでしまっては交渉のカードが減り、不利になるだけだ。尤も、破れかぶれの馬鹿でないことが大前提だが」


そこまで言ってから、リタさんは遠巻きに様子を眺めていたセバスさんを呼び2〜3何か指示を出す。

要約すると、現在交渉役になっている人に暗くなるまで引き延ばしてほしい。無理ならセバスさんがその人に代わって交渉をお願いしたい。相手の要求を多少でも飲む気があると見せかけるため、食料などを渡すようにといった内容だった。


「それと、別荘地なら猟銃を持っているお宅もあるでしょう。借りて来ていただけますか?」


「それなら当家の別荘にもございます」セバスさんが答える。


「では、それを彼に」と、リタさんは僕を指差す。


「は、、はい。ちょっと猟銃をとって来てくれ」セバスさんが他のお手伝いさんに指示。


「ルクス、使い慣れない銃でも、ちゃんと撃てるね?」


「大丈夫だと思います」僕ははっきりと答える。


「それから、ハナ。君は確か気配消しは学年でも上位の成績だったね。少々手伝って欲しい」


「は、はい!」ハナはござるをつけるのも忘れて背筋を伸ばした。


「リタさん、私も!」


そのように伝えるソニアにリタは小さく首をふって、ソニアの頭に手を置いた。


「ソニア、君が頑張っているのはよく知っているし、気概は買おう。だが、厳しいことをいうけれど、自分の実力をちゃんと見極めて、動かないという選択肢も”勇気”だということを知りなさい。心配しなくても3年も経てば君は優秀な偵察兵(スカウト)になることは、私が保証する」


「、、、、分かりました」ソニアは少し悔しそうな表情だったが、それ以上は同行を願い出なかった。


「ではハナ、君には伝達役を担ってもらう。ルクス、この場所でハナが戻って来るのを待つ事。他の者も勝手に動かないように約束してくれ。いいね?」


「はい」ハインツとマリアが返事をする。


「リタさん、気をつけてね」ノリスが言うと。


「早めにケリをつけて、夕飯にしよう。実は昼食を摂っていないんだ」と微笑んで、山の斜面へと消えていった。





しばらくしてお手伝いさんが持って来てくれた猟銃を受け取ると、構えてみる。スコープはそれなり。流石に試し撃ちはできない。


ふと、残党が立てこもっている離れを見ているソニアが目に入った。


「あの、、、ソニア」


「ルクス。何も言わないで。大丈夫だしリタさんが正しいのは分かってる」


それから少し言葉を置いて


「卒業するまでに、必ずリタさんに認めてもらえるように、、、私、頑張るから」


「うん。応援するよ」僕も離れに目をやる。




日没が迫っていた。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




日が沈み、それぞれの別荘に灯りが灯る。

立て籠っている部屋にも、ひとつの明かりがついた。



「リタ様からの連絡はまだでしょうか?」


セバスさんが気ぜわしげにリタさんが消えた方向をみる。賊たちには食事を提供し、現在仲間の解放を手続き中だと伝えているので一応の安定を得ているが、いつ爆発してもおかしくないのだ。


そんなじりじりした時間がしばらく続く。

セバスさんが再び何か言いかけようとしたその時、暗闇の中からがさりと音がして人影が現れた。ハナだ。


「ごめん! 慣れない場所で遅くなったでござる。ルクスにリタさんから伝言。「一瞬だけ光ったら、立て籠もっている離れの明かりを狙え」だそうです!」


といって、ハナはリタさんが潜んでいるあたりを指差した。


僕は黙って頷いて、猟銃をスタンバイさせる。


それから程なくして、ハナが指定した場所あたりで小さな光が一瞬だけキラリと光った。


僕は銃を構え、スコープを覗く。


息を吐き、肺の動きを、止める。




「パーン」



愛銃(カウンター)よりも高く軽い音が湖に響き、




離れの明かりが消えた。







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



それからはあっという間だった。ほんのわずかな時間離れの方から怒声が聞こえ、すぐに静かになる。


沈黙


沈黙


沈黙



そして。





湖の砂辺から息を飲んで状況を見つめる人質の家族と野次馬の元に、リタさんが人質の2人を連れて現れると「わあっ!」と歓声が湧き上がった。




リタさんは書いていて楽しい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「しばらくしてお手伝いさんが持って来てくれた猟銃を受け取ると、構えてみる。スコープはそれなり。流石に試し撃ちはできない」 立てこもっている者たちに音が聞こえない場所で試し撃ちをすべきでしょ…
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