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4)遅れて来た新入生③


 サクソンとか言うあんまり感じの良くない同級生の提案で、老兵教官に指名されて立ち上がった(ルクス)


 手元にあるライフルを袋から取り出すと、隣にいたハインツやソニア達、チームBの友達が驚きの声を上げる。


「ルクス! それ、、、なんだい?」


 ハインツの少々間抜けな問いに僕は


「何って、、スナイパーライフルだけど?」


 と答えると、ハインツは首を振りながら


「いや、スナイパーライフルなのは見てわかるけど、その銃身、繋げて使うのかい?」


 僕の持っているライフルは、僕の身長より長い本体と、同じだけの長さがあって、本体に接続できる銃身で1つのセット。


 2つを繋げるととてもじゃないけど手で持ちながらは撃てないので、先端の方には台座となる折りたたみ式の足がついている。


 おじいちゃんが使っていたもので、僕はこれしか知らないけど、普通は違うのかな?


「繋いでも使えるし、そのままでも撃てるよ。遠くのものを撃つ時は長くするんだ。今回は使わない」


「へぇ。こんな銃、初めて見るなぁ」


 そんな会話をしていると、老兵教官が「ほお、懐かしいな」と会話に入ってきた。


「教官はご存知なんですか?」ハインツが聞くと、もちろんと返す。


「結構扱いが難しいからな、今ではよほどのベテラン狙撃手(スナイパー)しか使っていないが、こいつは通称”カウンター”と呼ばれるスナイパーライフルだ」


 名称の由来は諸説あるけれど、酒場のカウンターのように長いと言う説と、相手に攻められても相手の弾は届かず、こちらの弾は届くことから、後の先でも勝てると言う説があると、教官は併せて教えてくれた。


「はっ、そんな大層なものを持ち出したって、当たらなけりゃ意味ないさ!」


 サクソンが煽ってくるけど、とりあえず放って置いて準備をする。


「、、、念のため聞くが、魔弾を打ったことはあるのだな?」


 教官の問いに僕は「もちろん」と肯首する。



 子供でも知っていることだけど、人には必ず一定量の魔力が流れている。体格や体力によって若干の差異はあっても、極端に多かったり少なかったりすることはない。


 ただ、魔力の放出方法には適性があり、大きく分けて「魔核」、「魔装」、「魔出」と言う3つの系統に分かれる。


 魔核は簡単に言うと、魔力を固めて外に出せる事。そのまま投げれば石をぶつけた程度のダメージは与えることができる。


 魔核をうまくコントロールすることで、弾丸として銃で打ち出すのだ。僕やハインツはこれが得意。


 「魔装」と言うのは魔力を身体に纏わせることができるタイプのこと。硬い鎧を纏えるようになると思えばいい。剣などに流して、強度を上げることもできる。


 「魔出」はお医者さんなどになる人が使う。詳しくは知らないけれど、ちょっと特殊な系統でこのタイプはすごく少ないのだそう。


 魔核や魔装は別に学ばなくてもできるけど、ちゃんとした用途に使う時、例えば今回のように弾として使用する場合は練習が必要だ。


 不慣れな人が無理に銃を打とうとすれば、暴発の可能性もある。教官が聞いたのはその確認なのだろう。


 僕が田舎ではこの銃で狩猟をして生活していたと伝えると、教官は納得したように頷き、


「本来学園内ではゴム弾を使用するが、今日は魔弾を使いなさい。その方が実力が分かる。充分な距離があるし、雑木林が壁になるから、何かあってもまぁ大丈夫だろう」


 と、準備の続きを促した。


 僕が準備をしている間、隣の訓練場から掛け声が聞こえてくる。外周をランニングしているようだ。



 準備を終えて、風を見る。微風。穏やかだ。うん。これなら大丈夫だな。




 みんなが固唾を飲んで見守る中、僕は狙いを定めてゆっくりと引き金を引いた。




 ターンっと乾いた音とともに放たれた弾丸は、サクソンが指定した的を拳ひとつ分だけ逸れて雑木林へと消えてゆく。


「ははっ、大したことないな!」


 サクソンと取り巻きが囃すと、すかざすハインツが


「すごく惜しかったじゃないか! あの距離を正確に当てられる生徒なんてそういないだろ!」と反論してくれる。


「やっぱり正確に当てられる人もいるの?」僕が聞くと「うん。先輩とかにはね」と答えてくれた。


 そうか、あれを正確に当てるのか。凄いな、僕もまだまだ練習しないと。


「君の実力は分かった。では、授業を始める!」


 これで余興は終わりとばかり老兵教官が手を叩き、生徒に訓練の準備を促したところで、この件はなんとなくここまでとなった。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 ルクス達が授業に使っている訓練場の向こう、雑木林を隔てた先では、別のクラスが体力作りのランニングをしている。


 ランニング中の生徒がルクス達の訓練場のそばを通り過ぎた直後、風を切り裂いて弾丸が走り抜けた。


 誰にも気づかれることなく突き進む弾丸は、隣の訓練場の一番奥、その一番端にある的に当たってスパンっと風穴を開ける。



 その穴は小指の先ほど、中心点からズレていた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 入学初日という慌ただしかった1日が終わり、ルクスは日記を書こうと机の前で、今日あったことを思い返していた。


 一番驚いたのは、やっぱりあれ。


 走っている人の流れを読みながら、的の中心を射抜ける人が何人もいると言う事実。


 世界は広いなあと思った。


 ところで、僕たちのいた訓練場にあった的は何に使うのだろう。


 あんな、目をつぶっても当たるような場所にあるんじゃあ、狙撃の練習用じゃないよなぁ。


 きっとハインツ達、銃撃兵(シューター)の練習用なんだろうなと一人納得しながら、ペンを手に取るのだった。







弾の精製の精度や、本人の実力等で飛距離が異なります。

教官が大丈夫と判断したのは、入学したての一年生の弾が、隣のグラウンドの先まで勢いを保てるとは全く考えていなかったためです。

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― 新着の感想 ―
[一言] まだここまでしか読んでないけどこの時の主人公の技量がバレる話があると個人的にはニヤニヤ出来るねwww
[一言] 初弾で当てるのがそもそもヤバイのでは…
[気になる点] 的の確認しないの、違和感
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