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その狙撃手、天才につき 〜フルト=ルクスの狙撃にっき〜【750万PV感謝】  作者: ひろしたよだか


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33)ルクス、また見抜かれる ② カウンター

今日の日記


軍事学校に入ってくるくらいだから当然かもしれないけれど、この学園の女性陣は押しの強い人が多すぎると思う。


ルルーさんしかり、ラミー先輩、ビアンカしかり。リタさんも勧誘の時はぐいぐい来たものなぁ。


結局僕はルルー先生にも押し切られ、決闘に立ち会ってもらうことになった。


今回、僕は一つたりとも思う通りに行っていない。人生とは難しいものだ。


後日、ラミー先輩とビアンカに「この決闘に関しては口外しない」と言う約定を取り付けに行くと、向こうからも条件が出された。


ラミー先輩からではなく、サラース先輩からだけど。


その条件とは、つまり「自分も観戦したい。口外はしないから」と言うもの。そのくらいなら僕としても別に問題ないのでその場で了承する。


決闘は夏休暇(バカンス)の3日前の半休日と決まった。この日は実質、貴族の夏休暇(バカンス)準備時間として、午後が休みになっている。つまり、今日だ。


今日は疲れた。手早く書いて、早く寝よう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「実技エリアと市街地エリア、どちらがいい?」


ラミー先輩に聞かれた僕、ルクスは「どちらでも」と答えておいた。


別に侮っているわけではなく、どちらもそれ程慣れているわけではないので、大して変わらないのだ。


もっと言えば別に負けてもなんとも思っていないので、どうでもいいと言う気持ちも少し、ある。


ただ、あれだけ腕を買ってくれているリタさんとラミー先輩のことを考えると、手を抜くつもりはないけれど。


ラミー先輩も特に主張はなかったので、結局ビアンカが得意だと言う市街地での対決となった。


僕とビアンカ、ラミー先輩とサラース先輩。それにリタさんとルルー先生の6人しかいない市街地エリアは、まだ日も高いと言うのにしんとして物悲しい感じがした。


ルルー先生が腕を組んで仁王立ちで口を開く


「1年どもは知らないだろうから、決闘のルールを教えてやる。使うのはこれ、対抗戦でも使ったペイント弾だ。そして3戦して2勝先取でそいつの勝ち。もちろん、当たったのに誤魔化したりしたら、その場で敗北確定。あとは、対戦するものはこのエリアの両端からスタートする。得物は自由。えーっと、あとなんかあったか?」


ルルー先生がリタさんを見る


「特にはないよ。。。あ、当たり前だけどエリアから出ての移動は禁止。そんなところかな。で、今回は私とルルーの2人の教官がいるし、狙撃手(スナイパー)同士の戦いで長距離での戦いになるだろうから、それぞれに一人ずつ付いて確認しようか?」


「そうだな。じゃあ私はルクスに付こう。ん? なんか不満でもあるのか?」


ルルー先生が僕を見る。いえ、全然不満なんかないデスヨ?


リタさんは苦笑しながら


「他に聞きたいことがなければ、まずは握手。終わった後も握手だ。これは訓練の一環、切磋琢磨を目的としている。遺恨を残すようなら中止だ。2人も良いね?」


僕とビアンカは頷いて互いに一歩前に出て握手を交わす。


「よし、ルルー、それじゃあエリアの端に着いたら、空砲を打ってくれ。私も返すからそれを開始の合図としよう。見物する2人は邪魔になったり妨害しなければどこにいても良い。HITしたら空砲を3発。それから20分間を移動時間とする。いいね? では、始めよう」


リタさんの宣言により、僕にとって初めての決闘が始まった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「おい、ルクス。お前はどんな場所からの狙撃が得意なんだ?」


市街地エリアの端に歩きながら、ルルー先生が聞いてくる。


「もともと僕は狩をして生活してきたので、森の中は慣れてますけど、別に得意も苦手もないですね」


「ふーん、ところでお前、なんでリタだけ先生つけないんだ?」


「最初に会った時は先生じゃなかったからですよ」


「ふーん。それなんかずるいな。私も先生はいらん。ルルーさんでいい。後、必要以上の敬語もいらん」


なぜかそこに噛み付くルルー先生。


「はぁ、じゃあ、ルルーさんで」と返すと満足げに笑って見せた。。。。変な人。


ルルーさんからリタさんとの出会いを聞かれたりしながら、市街地ステージの端に着く。


「よし。じゃあ始めるか」


ルルーさんが空砲を撃つと、遠くから空砲が帰る音がする。開始の合図だ。


僕は早速、すぐそばの建物に入り、屋上を目指す。


「お、なんだ? 準備するには遠すぎだろ? 待ち伏せでもするのか? 意外にこすいな」


「ルルーさん、ちょっと黙っててくださいよ」


ルルーさんには中途半端に遠慮するのは良くないと思ったので、ぞんざいに扱うことにする。


ルルーさんは怒るでもなく、愉快そうに鼻を鳴らした。


屋上まで出た僕は、愛銃(カウンター)を取り出すと、ジョイント用の追加の銃身を繋げ、台座の足を立てる。


それから寝そべるように体をかがめ、スコープを覗く。


初手は高いところに上がってくるのは、狙撃手(スナイパー)の本能のようなものだ。


高いところか、地面すれすれの低い場所は安心する。自分たちの領域という気がする。


多分、ビアンカも最初は建物を登ってくるだろう。

僕は黙ってその時を待つ。



しばらくして、中間地点よりも少し向こう側、ビアンカが上がってきたのが見える。

風は、右から少し吹いている。うん。




僕は気負うことなく引き金を引く。





少しして、向こうから空砲が3発鳴った。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「よし」僕は繋げた銃身を外して片付ける。一旦移動だ。


と、そこでルルーさんが僕の後ろで空砲を放つ。1、2、3、4、5発。


「おい、ルクス。一旦中断。合流するぞ」と言うなり、さっさと建物を降りていった。


市街地エリアの中央に集まる僕ら。ビアンカの右側頭部にはペイントがべったり。

悔しそうに俯いている。


「リタ。ルール変更だ。この場所から20分間移動して狙撃。いいな」


ルルーさんが一方的に宣言する。


「構わないが、説明は必要だろう」リタさんは苦笑しながらルルーさんに説明を促す。


「説明もクソもあるか。これじゃ勝負じゃない。一方的な狩だ」


ルルーさんの言葉にビアンカがびくりとする。彼女はどこからどのように狙撃されたかすら分からなかったのだ。


「ただ、そっちの、、、、ビアンカだっけか? にもチャンスは与えるべきだ。腕もとにかくこいつにあんなもの(カウンター)を持たせたら、将来有望な狙撃手(スナイパー)を潰しかねん。ルクス、本番、戦場ならいくらでも使って構わねえが、とりあえずこの対決では、あの長い方の銃身、しまっとけ」


ルルーさんの目は真剣だ。僕は「はい」とだけ答えた。


リタさんがルルーさんを「ほらね」と言う顔で見ている。


ルルーさんは小さく舌打ちして「ルクスの1勝から、やり直しだ!」と大声で宣言した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




今度は2人背を向けて、ルルーさんの「開始!」と言う声で私は走り出す。


さっきは何処からどうやって狙撃されたかもわからないまま、やられていた。本当に意味がわからなかったけれど、先ほどのルルー先生の言葉からすれば、とんでもない距離から狙撃されたようだ。


今の一撃でわかった。認めたくはないけれど、多分、ルクスの技術は私よりも圧倒的に上。


ラミー姉さんが目を掛けるのもわかる気がする。なんと言うか、次元が違う。


でも、私だって大口叩いた以上、なす術もなく負けるわけにはいかない。


軍人の家庭で育って、子供の頃から銃に触れてきたのだ。


スナイパー銃は一般的には動きながら対象を狙うべきではないが、私は多少それでも狙いを定めることができる。


まずは相手を撹乱しながら位置を特定し、動きながら狙おう。


そう考えた私は建物には入らずに、裏路地へと身を隠す。


まずここから一発撃って、相手の反応を見る。撃ち返してきたら儲け物だ。牽制しながら有利な場所へ移動しよう。


そんな風に思っている時、空砲が鳴る。移動時間の20分が経過したのだ。


私は路地の角からほんの少しだけ体を出して、手頃な狙撃物を狙おうとスコープを覗く。






その刹那、2発目のペイント弾が、私の額に直撃した。






誤字報告ありがとうございます。助かります。

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