3話 いきなり家督継承!?
ガルラ王国から帰国した俺達は、辺境伯の居城があるワイダを訪れ、アダムス辺境伯にガルラ王国での経緯を説明していた。
「……という訳で、ガルラ王国との軍事同盟は締結に至りませんでした。申し訳ありません」
「フッ、気に病むことはない。いくらヒュプニウムなど豊かな鉱山資源があるとはいえ、セイルス王国の一地方に過ぎない西セイルスと大国であるガルラ王国とでは、国力の差をみても釣り合いが取れていない。そもそも地理的に派兵が難しい状況での軍事同盟。おいそれと良い返事がもらえるとは考えてはいなかったからな。想定の範囲内だ。いやいや、任務ご苦労だったなミナト」
「ガルラ王を始め、ハンマ家やルコール家といった方々(かたがた)と外交以外の部分で盛り上がってしまい同盟の話が思うように進められず……。やっぱり俺が外交官というのは、荷が重かったです。アダムス伯」
すると、アダムス辺境伯は愉快そうに声を上げて笑った。
「はっはっは。ミナト、何を言っている?ガルラ王国との友誼、それこそが西セイルスにとって非常に有益なものだ。ガルラ王と知己ができ、更に公には出来ぬとしても王国の根幹である世継ぎの誕生にも貢献した。そしてヒュプニウムの取引にはじまり、兵器の購入、さらにはガルラ王国軍の兵器も無償で導入できた。お前は西セイルスで最高の外交官よ」
「でも、ハラードさんにも「外交官として心許ない」と言われました。「もっと気概が欲しいな」と。そしてガルラ王から直接、軍事同盟を断られましたから……」
「フフッ、ミナトよ。お前は何か思い違いをしているな?確かにガルラ王はお主に「派兵はできない」と言った。しかし、「協力しない」とも言わなかったはずだ。違うか?」
「は、はい」
ふと、アダムス伯は得心が言ったというように「ふむ」とつぶやいた。
「そうか、ミナトは知らされていないのだな?ガルラ王国は表向きは静観だ。しかし、今回の件、西セイルスを裏から支援してくれる。お前は役目を立派に果たしたのだ」
「えっ、それはどういう事ですか?」
ニヤリと笑ったアダムスが家臣に命じると、豪華な意匠が凝らされた1メートル程の衣装箱が運ばれてきた。
「ガルラ王からの返礼品。この中に西セイルスの行く末を左右する物が収められている。今はまだ明かせぬが、いずれお前にも披露しよう」
「西セイルスの行く末を……?ではそのチェストに何らかの切り札があるのですか?」
「うむ。全ては皆の働き次第、といったところか。……ところで、例の転送装置だが、まだ設置の準備は進まぬのか」
アダムス伯はあの転送装置にえらく興味を示して、このワイダ城と二子山の俺の屋敷に行き来できるようにしたいと俺に相談があったのだ。まぁ、ほぼ命令だよなぁ。
「装置の作成にはタヌ男の作成した設計図通りの精密な部品製作が欠かせませんが、ハラードさんの協力でハンマ家の技術者をこちらに招致する段取りが出来ました。近い内にミナト工房での製作を開始する予定です」
「うむ、重畳だ。このワイダと双子山が繋がれば、お主等と作戦の連携が容易に取れるのは強みになろう。その上、息子の目を気にすることなくいつでもあの美味い酒が飲めるという訳だ。いや、なんとも楽しみだな!ミナト。はっはっは!」
「は、ははは……」
うちは居酒屋じゃないんですからね!アダムス伯!って言えたらどんなにいいだろう。くっ、言えないけど。専用のホールスタッフを雇いたいぜ。
「とにかく、ガルラ王とはこちらかも連絡を取るようにしよう。ご苦労だったな、ゆっくり休んでくれ」
「はい。それでは失礼します」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……誰か息子を呼んでくれ」
ミナトが退出した後、アダムス辺境伯は近習にエドワードを呼んでくるように命じた。
「エドワード、参りました」
エドワードが謁見の間に姿を見せる。二十代前半にして既にアダムス家の軍部を統括する彼はそれに相応しく、凛々しい面構えの青年へと成長していた。
「うむ来たな、エドワード。時に尋ねるが、軍学はしっかりと修めているか?」
「はっ。幼き頃より軍に編入され、「息子といえど手加減するな」との父上からの厳命により将達に軍での規律を叩き込まれました。軍学に留まらず、実戦でも経験を積んでまいりました」
統率力において彼はアーサーに匹敵する軍才を持つ、というのがアダムス辺境伯以下、家臣達の評価だ。配下である将達からも厚い信頼を得て、アダムス軍将兵を掌握していた。
「そうだな。ただ、先のナジカ王国との戦いにお前は留守居としてワイダに留まった。実戦といっても賊退治や小規模な小競り合いが主だ」
「失礼ながら、それは父上が私を戦に参加させなかったがゆえに御座います」
不満げな表情を見せるエドワード。やはり前回の戦争で父に同行できなかったのが不満なのだ。
「エドワード。当主が不在時に領地を守るのも重要な役目だ。留守居には留守居の任務があり、それは背中を預けるに信頼の足る者が相応しい。戦に出るばかりが戦争ではない。しかと心得よ」
「……はっ」
「しかし、今となっては一度大きな戦を経験させたほうがよかったやも知れんな」
「……?なにか?」
独りごちるアダムス辺境伯に、怪訝な表情を見せるエドワード。
「いや、何でもない。それより政の方はどうだ?」
「そちらも心配には及びません。そもそも家臣の諌めも聞かず、すぐにふらっと出かけてしまわれる父上の代理として、家臣や領民から登ってくる要望や問題などをこなしておりますが、本来父上がなさるべきこと。辺境伯家の主としての務めではないですか!?補佐はいたしますが、まだまだ父上がしっかりと政務をこなしていただかないと西セイルスはたちゆきません!……聞いておりますか?父上!?」
「ふむ。では、意中の女性などはできたかな?」
息子の繰り言などまったく意に介さず、予期せぬ質問をぶつけてくるアダムス伯。ため息をつきながらその質問に答えるエドワード。
「あいにくと私は遊び人の名を欲しいままに浮名を流した父上と違い、その方面にはめっきり疎うございます。私は王家の継承権を持つアダムス家の嫡男。意中であろうとなかろうと関係のないどこかの高貴な身分の女性と政略結婚することになりましょう。その方と家庭を築き上げるだけなのですから、必要ありません」
どこか不貞腐れた声色のエドワード。辺境伯の息子として軍と政を束ねようとするその手腕の成長を頼もしく認めつつ、しかしまだまだそちらの方面で固い息子を案じている辺境伯だった。
「エドワードよ、ご婦人とのコミュニケーションは非常に大切だ。時には押し、時には引く。そうして徐々に相手との距離を近づけていく。駆け引きとは大抵思うままにはならぬものだが、そこをいかにこちらに惹きつけるか、魅力的に映させるかが肝要よ」
「……父上は、そのような戯れ言を言うために私を呼び出したのですか?」
「いやいや、戯れ言ではないぞ。お前の身持ちが固いのは良いことだ。しかし、あまりに意固地になると、思わぬところで良からぬ女に引っかかる。何事も経験が大事だ。政もまた同じよ。我がアダムス家は、西セイルスの盟主。海千山千の麾下の領主達を束ね、領地を安定的に発展させる使命がある。その為には事に当たって、清濁併せ呑む器量がなくてはならん。分かるか?エドワード」
アダムス辺境伯としても、父なりに西セイルスの軍務の他、政治や経営の経験を積ませていた。エドワードにかかる負担は自領の経営だけではない。西セイルスの盟主という立場から麾下の領主達の信頼を勝ち得て、しっかりと統率しなければならないのだ。
「……御高説しかと承りました。私は幼き頃より父上の背中をみて育っております。若年より軍に配属され、規律も戦術も叩き込まれてまいりました。また、政治におきましてもイエールをはじめとした文官達から手ほどきを受けてきております。このエドワード、いつでも将来父上の後を継ぎアダムス家を仕切る覚悟は出来ております」
「ほほう、その言葉に偽りはないな?」
「はっ!ありませぬ!」
「ならばよかろう。エドワード、本日をもってお前にアダムス家の家督を譲ろうと思う。式典は一か月後だ。よいな?」
「……はっ??」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一か月後、アダムス家の家督をエドワードに譲る式典がワイダにて執り行われた。しかし、その式典はアダムス辺境伯の希望により小規模、そして極めて簡素だった。
出席者は西セイルスの各領主。そして、爵位を持つ貴族も招かれ更に王家に連なる家柄ということで王家からグレース皇女がやって来ていた。
式典ではかつてアダムス家が興された際、王家より贈られた伝来の宝剣と玉印を現当主アダムス辺境伯からエドワードにと授与される。そして、エドワードが新たな当主となった事を宣言し、式典は幕を閉じた。
「式はつつがなく終了した。はるばる王都よりの出席、感謝するぞ。グレース」
「いえ、アダムス家は王家の一族、その当主が代わられるのです。お祝いに駆けつけるのは当然です。兄アーサーの名代として、エドワード殿の辺境伯就任、とても喜ばしく思います。これからもセイルス王国の為に王家と共にあらんことを」
式典用の豪華なドレスを身にまとったグレースがにこやかに形式通りの挨拶を交わす。王族にふさわしい華やかな衣装、そしてそれに全く劣らない秀麗な見た目。だが、以前会った時に比べ何かが違っていた。確かに少し瘦せたように見受けられるが、見た目ではない。グレースの心のありようが変容したというのがしっくりくる。しかし、アダムス伯はそう感じたことをおくびにも出しはしない。
「しかし、いささか驚きました。貴方はセイルス王に代わり王位継承の式典を取り仕切る大任を任されています。にも関わらず、差し迫ったこの時期に突然、家督を譲られるとはいかなる真意がおありなのでしょう?」
そう問うたグレイスの瞳は純真な疑問ではなく、かといって猜疑でもない、どこか心がないようである。
「うむ。それに答える前提として聞いておかねばならぬことがある。戴冠の儀の責任者という大役を務めるにおいて、もっとも適任であるのは誰かな?」
「それは、アダムス辺境伯をおいて他にありません」
「であろう?残念ながらセイルス四世は既に身罷られ、王族もずいぶんとその数を減らした」
「……」
「よって、その大任にもっとも相応しいのは、身分的に不肖、この私となったのだ。儀式にあたっては万に一つも間違いは許されぬ。私は畏れ多くも王の代理として儀式に臨む。その為には、全てを投げうって全身全霊をかけねばならぬ。今回の家督継承はその覚悟だ。その行為になんぞ異見があるか?グレースよ」
「……いえ。ご立派なお覚悟。このグレース感服致しました」
「うむ。そなたに分かってもらえて良かった」
そう言って人懐っこい笑顔を見せるアダムス辺境伯。
……この顔だ。こちらが追及しても、のらりくらりとかわして煙に巻く。この男がなんの考えもなしに家督継承などするはずがない。しかし、「継承の儀の為」という建前を持ち出されては何も言い返せない。立派なお覚悟、と言う他ないのだ。心の中でグレースはくすくすと笑っていた。ある意味ずっと変わらないでいてくれる元アダムス辺境伯にどこか安堵を感じる。
兄を王位につかせるにあたり、当時まだ存命であったデイモン達をはじめ王族との間で「王族の家督継承に関して、王の承認を経ずとも良い」との協定が結ばれた。これはアーサーを王位につかせる代わりに王族に数々の特権が与えられたうちの一つだ。
そして、爵位も前当主が就いていた位をそのまま継承される。だが、特権を得た王族たちは今はそのほとんどがこの地上より姿を消している。
王家を蝕んでいる悪魔はもうじき王となる。愛する兄の姿で。グレースはそれを見るだろう。
ふと、グレースは何者かの視線を感じ、ハッと横を見る。
だが、視線の主は誰もいない。この視線はごく普通の貴族たちからは感じない。人間ではないものの視線のような気がする。
西セイルスに入ってからというもの、この視線を感じるようになった。しかし、グレースの護衛からも情報収集に走らせた部下からも何の情報も得られなかった。
私は気がふれてきているのかもしれない。憔悴していたスレイアム叔父のように。ああ、そうなればどれほど楽だろう。ただ、アダムス辺境伯が王家に知られたくない何かを隠しているだけなのかもしれない。それを隠すために私を見張っている、きっとそうなのだ。
……父上が、前国王が存命ならばこのような身勝手は許されなかっただろうに!
……いや、あの当時はまだあの女狐とその子ノアがいた。あのままでは、兄が王位を継げるかも怪しかったのだ。それが、今やっと王位が目の前にある。アーサーが望んでいた王位が。
今はこれが最善。兄上がセイルス王になりさえすれば……。そうなれば……私は……。
心の葛藤を抑え込み、グレースはワイダ城を後に、王都への帰路についた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よぅ、ミナト!ますますご活躍のようじゃないか!」
「あっ、ギースだ!やっほ〜!」
「ギースじゃないか。君も来てたんだな」
「ああ。今回は爵位を持つ西セイルスの貴族は全員、出席している。俺も領主になるのにアダムス辺境伯から爵位を賜ったからな。まぁ、まだ准男爵だけどな」
家督継承の式典に出席してした俺とリンに声をかけてきたのはギースだ。以前はオーサム男爵のドラ息子で問題ばかり起こす不良冒険者だったが、今は冒険者を引退し、オーサム領の一部を治める領主としてすっかり心を入れ替え、雰囲気も身だしなみまでも変わっている。
「そっか。実は俺も爵位を貰ったんだよ。でも政務官って肩書はあるし、領主でもないからあんまり必要ないんだけどな」
「お前はドラゴンを倒した褒賞だろ?あれだけの偉業を達成したんだ。叙勲は当然だぜ。まぁ、お前の場合。元々、領主の仕事をしていたようなもんだけどさ」
「う〜ん。でも貴族ってしきたりとか作法とか色々うるさいじゃん?俺は堅苦しい貴族は性に合わないんだよ」
「ミナト。俺にそういう話は、皮肉にしか聞こえないぜ?」
「あ、いや別にギースが貴族が合ってないとかそういう話じゃないんだって!ま、変ぼう振りには驚いたけどな!」
「余計なお世話だ!今まで散々聞いたわ、そのセリフ!……ところでな。今回はお前に礼を言わないと、と思ってたんだ」
「へ?俺にか?」
「以前、ミナトに俺の領地でイトグモを使った織物を生産している話をしただろ?あれの売上が伸びてるんだ。前にミナトに教わったように宣伝をうったからな。おかげで王都やレニング帝国からも引き合いが来るようになったんだ。今は工場を拡張しようか、なんて話も出てるくらいまで成長したんだぜ!」
「お〜、ギースの所もいい感じじゃないか!」
「へへっ、親父や兄上からも「よくやってる」って褒められたんだ」
ギースの治める領地ではイトグモという蜘蛛のいとから糸を取り出し、織物に加工している。前世の蚕のように光沢があり滑らかで手触りが非常にいい。さらに丈夫で弾力もある。それを広く認知してもらうため、コンラッド率いるツインズ商会に依頼し、広報に一役買ってもらったのだ。
元々の品質は確かだったので、製品の良さが知れ渡るにつれ、高級布としてジワジワと口コミでひろがり、今では王都の貴族や隣国にも認知されはじめているのだ。
「ここまで成長できたのはお前のおかげだ。感謝するぜ、ミナト」
「いや、製品のポテンシャルは高かったんだ。コンラッドだって、品質が良かったから広報を引き受けたんだしな。このあとはギースの手腕次第だ!」
「おいおい、そうプレッシャーをかけるなよ」
そう言って二人で笑い合っていると……。
「二人とも、待たせてしまってすまない」
領主や有力者への挨拶を終えたエドワードがやって来た。
「おっ、エド。挨拶はもういいのか?」
「ああ、ようやく一段落だ。時間を取らせてしまったな」
「な〜に、盟主様に言われたんだいつまでだって待ってやるぜ?」
「勘弁してくれよギース」
「ははは、冗談だ。……しかし、お前が西セイルスのトップに立つとはなぁ」
「まぁ、いつかは家督を継ぐ事になっていたんだ。まだ親父が元気なうちにこうなるとは思わなかったがな」
「そうなのか。ところで、家督を継いだならエドが辺境伯の爵位を継ぐんだろ?エドをアダムス辺境伯って呼べばいいのか?」
「いや、今まで通りエドでいいさ」
「でも、お前は今や、西セイルスの最高権力者だ。そのアダムス家の当主に対してそれはダメだろ」
すると、エドワードは表情を改めた。
「ミナト、ギース。俺はお前達とは友だと思っている。経験になると思って参加したあの冒険者としての任務。そこでは上も下もない俺達は対等な関係だった。俺に必要なのはまさにそう言う人材だとわかったんだ。親父にはハロルドという親友がいた。今でも親父の会話には彼の話が頻繁にでてくるんだ。立場は違えど忌憚のない意見を言い合える、ミナト達とはそういう関係でいたいと思っている」
「あの英雄ハロルドと同じようにか?俺達がなれるのか?なぁ、ミナト?」
突然の話にギースは戸惑っているようだ。でも、アダムス辺境伯とハロルドの関係を見ているとその存在はとても大きなものだと思う。ただ、俺達がハロルドのようになれるかというと甚だ疑問だけど。でも……。
「エド。君が辺境伯になっても俺達を友達だと思ってくれるなら俺達も同じさ。私的な場では、今までと同じ接し方でいいって事だよな?エドがいいならそうさせてもらうよ」
「ああ。ありがとな、ミナト」
「そういうことなら、俺もいいぜ!」
「二人とも感謝する。これから色々な難題が降ってくるだろう。二人には西セイルスを担う片腕として協力してほしい」
「分かった。できる限りで協力するよ」
「俺もだ」
「ああ、ありがとう!」
三人でがっしりと手をつないだ。家督を継いだといってもエドもまだ若い。俺が出来ることがあれば協力してやらないとな!
「ねぇ、ミナト。アダムスへんきょーはくから「へんきょーはく」をエドワードにあげるんでしょ?じゃあ、これからはなんて呼ぶの?アダムス〜!でいい?」
「ちょっ、リン!?呼び捨てはマズイよ!……う〜ん、そうだなぁ……ご隠居様とか?」
「ははは、それは親父が嫌がる。今までのアダムス伯でいいさ。それにアダムス辺境伯は親父の別名みたいに定着してるし、家督を譲ったとはいえ完全に政治から身を引くわけじゃないからな」
「じゃあ、アダムスはくはこれまで通り、家にお酒を飲みにちょくちょく来るのかなぁ?そしたらアダムスはくもヌシ様も楽しいし、二人ともさみしくないね。良かったね!」
「リン、ミナト。身軽になってより一層回数が増えるかもしれん。本当にすまんが世話を頼む」
「分かった。でもいいお酒をもっと用意しておかないとなぁ」
「ああ……。ミナト、迷惑代込みで酒代は俺に請求してくれ……」
「ははっ、別にいいんだよ。ベルド醸造所のお酒だし、気に入ったお酒は「アダムス辺境伯お墨付き」で売り出させてもらっているから。おかげで売上も好調でさ~!稼がせてもらっているよ」
「ははは、それなら親父も本望だろう。ところで近い内に俺も親父と一緒にバーグマン領に出向くつもりだ。ミナト、悪いがバーグマン領主、ルカ殿との日取りの調整を頼む」
ああ、なるほど。ヌシ様への挨拶だな。
……そして、数日後。双子山にエドワードが訪れた。