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『俺』とゴブ『リン』~俺のスキルは逆テイム?二人三脚、人助け冒険譚~   作者: 新谷望
5章 セイルスの闇編

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24話 英雄ミナト誕生



「いや〜、まさかギルメデスを討伐するとはね。英雄とたたえられるに相応ふさわしい偉業だよ!」


 双子山の山頂にあるヌシ様の住まい。客間の椅子に腰掛けたヌシ様ことハロルドが、満面の笑みで激賞してくれた。その足元ではタヌ男が丸くなって眠っている。時々耳がピクピク動いていたから、寝ながら俺達の話を聞いていたのかもしれない。


 アライからバーグマン領に帰還した俺とビアトリスは、領主の館に寄りルカに報告後、双子山で待っていたヌシ様にドラゴン討伐の顛末を伝えに来たのだった。


「はぁ、みんなに喜んでもらえるのは嬉しいんですが、英雄って言われるとどうも居心地が悪いんですよねぇ……」


「ははは、なんのなんの。君はスカイドラゴンに続きギルメデスも打ち倒したんだ。誇っていいよ。そうだろうビアトリス?」


「そうさね。ボウヤだと思ってた子が、あっという間に英雄と言われるくらいまで成長するんだからね、いやはや面白いもんだ。……それはともかくアライの町は西セイルスについたんだ。これで次の手を打てるんだろう?」


「ああ。アライを押さえてこちらが制海権を維持できたその意義は実に大きいからね。海からの脅威がなくなれば、その分だけ警戒する地域を絞れる。君たちのおかげだ、感謝する」


「フフフ。ミナトがブリトニーをたらし込んだからね。アライが中央おうけ側につく心配はないね。これからはミナトを介して交渉すればいいさ。きっとい返事がもらえるよ」


「ちょっとビアトリスさん!?た、たらしこむ……って!俺はなにもしてません!誤解しないでくださいね、ハロルドさんっ!?」


 慌てる俺の抗議をニヤニヤしながら聞き流すビアトリス。


「そうかい?ブリトニーはすっかりあんたにホの字だったじゃないか?求婚までされていたしねぇ?強い男が言い寄られるのは自然の摂理さね」


「その話はちょっと聞き捨てならないね。何があったのか詳しく聞かせてもらおうかな、ミナト?」


 確かにビアトリスは嘘は言ってない。言ってないけども!ああっ!ハロルドさんの目が怖い!何かこの部屋の温度が下がってきてるんですけど!?


「ちっ違うんです~!ビアトリスさんもややこしくなるような話はやめてくださいよ!」


「わたしゃ事実を述べただけさ。そのおかげでこうして任務を達成できたんだからね。……あっと、それじゃ私はこれから作戦の報告をしにワイダの街に行ってくるよ。今回の件で船団もかなり損傷した。依頼主の辺境伯にはきっちり補填をしてもらわないとね」


「そうだね。しっかり保証してもらうと良いよ」


「ああ。じゃあミナト、これからもしっかり頑張んな!ヒッヒッヒ!」


「ちょっ、ビアトリスさん!?引っ掻き回すだけ引っ掻き回して帰らないで〜!」


 吹き出しそうな笑顔で退出していくビアトリス。慌てて引き留めようとした俺の肩をハロルドが後ろからガッシと掴んだ。


「さぁ、アライの町で何があったのか、きちんと話してもらおうかな?ミナト君?」


「ハロルドさんだって女の人が大好きじゃないですか!?なのになんで俺だけそんなに責めるんですかぁぁぁ!い、いや、俺は何もしてませんけどね!」


 自分だって生前、さんざん浮名を流しておきながら、娘の相手には厳しいなんてひどくない!?


「リン、君はミナトと一緒に居たんだろう?ふらっと宴席からいなくなったりしたことがあったかい?」


 ハロルドはにっこりと微笑みながらリンに質問した。なっ!なんてことを子供に聞くんだぁぁぁ!いや、俺はずっとリン達と一緒にいたけどね!そうだろう、リン?


 リンは俺とハロルドの顔をキョロキョロ見比べ、う~んと考え込んだ。その時の事を思い出しているようだった。


「えーっとね、すっごくおいしーお料理がいっぱいあったんだよ~!でも、リンもブロスもお腹いっぱいになって途中で寝ちゃったから、そのあとの事はわかんない!ね、ブロス?」


 コクコクと頷くブロス。全然援護になっていないんですけど……ううっ!


「あのっ!……でも、求婚も、その、断りましたし。あの時のブリトニーさんも相当酔ってたんですよ。だから一時の気の迷いかもしれないですし……」


 そんなこんなで最後にはエリス一筋であると一筆書かせられ、その尋問から解放されたのだった。ほんっとに英雄って人種はクセ強ばっかりなんだからぁ。はぁ……。



 

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




「それにしても実質的にミナト達だけで伝説のシードラゴンを倒せたんだ。君達は実力的に既に全盛期の私と肩を並べられる程だね」


「俺が全盛期のハロルドさんとですか!?いやいやそんなはずないじゃないですか!」


「スカイドラゴンとシードラゴン。二頭のドラゴンを単独で討伐できる実力を持った人間はそうはいないよ。自信を持っていい」


「でも、それはこの木刀が覚醒したから……」


「それを使いこなしているのは君だよ。私は以前よりその木刀には秘められた力が眠っていると思っていた。何せ内包する魔力がとんでもなかったからね。それこそ私が見てきたどの魔剣よりもね。その木刀は君が前世から持ち込んだものなんだろう?」


「ええ、前世で俺の部屋においてあった奴です。もちろん当時は何の効果もないただの木刀でしたよ。前世には魔力なんて無かったですし。でも俺が持ち込んだ品は例外なく高い魔力があるんです。地球には魔力なんてなかったのに。その魔力はどこからきたんですかね?」


 地球に魔力がないのに、持ち込んだアイテムはなぜか魔力値が異様に高い。そのおかげで食品の味が良くなったり、サツマイモは成長が早かったりと様々な恩恵があった。


「魔力がない世界なんて私にはなかなか想像できないけど……。ただ手がかりになりそうな仮説はあるよ。以前ライが「魔力観測」をしたのは覚えているかな?」


「はい、魔物大量発生モンスターインパクトが起こるかどうかを調べる為のスキルですよね?」


「私がネノ鉱山を封印した二十年前。ミサーク大森林ではいつ魔物大量発生モンスターインパクトが起こってもおかしくないほど魔力量が危険な水準だった。しかし、現在はその心配がないくらい大森林に溜まっていた魔力が少なくなっている。そしてタヌ男とライの調査によって、ある日を境に突然魔力量がガクンと減っている事が分かったんだ」


「まさかその時期って……」


「ああ、そうさ、ミナトがこのフォルナにやって来た時期と被るんだ。もしそれが正しいとしたら何故ミナトが持ち込んだ木刀やアイテムは異様に高い魔力を秘めているかが説明がつくんだ。ねぇ、タヌ男?」


 と、ハロルドは足元で寝ていたタヌ男に声をかける。それを聞いていたのかピクリと耳を動かすと眠そうに大きなあくびをして俺の方を向いた。


「うむ、これは仮説だがミサーク大森林のモンスターインパクトを止めたのはおそらくお前カネ」


「えっ!?俺!?」


「これまでの話が正しいと仮定すると、お前が前世から持ち込んだという物品には、転生当時は魔力は注入されていなかったはず。それが今では膨大な魔力を蓄えているのカネ。その魔力はどこからきたか?考えられる答えは一つカネ」


「つまり、ミサーク大森林に溜まりに溜まった魔力を吸収したって事?」


「そう。きっと君の元いた世界のアイテムは吸収できる魔力の最大値がフォルナの物とは比べ物にならないほど高かったんじゃないかな?でも魔力のない世界だからそれに気づけなかった。それがこっちにきて初めて本領を発揮できたんだよ」


「そんな事ってあるん……ですか?」


「さぁね。これはあくまでも私とタヌ男が導き出した仮説に過ぎない。でも一つ分かるのは結果的に君が魔物大量発生モンスターインパクトから人々を守ってくれたという事実だ。君は知らず知らずのうちに私と同じ功績を成し遂げていたということさ」


「うむうむ、お前がここに来たからこそ、この地が平穏に保たれたのカネ。誇って良いカネ。「俺が転生したおかげだぞ!」となカネ」


「いやいやいや、そんな事言えるわけないでしょうよ!てかタヌ男は俺が別の世界から来たって知ってたのか?」


「実はタヌ男が「ミナトはたまに魂と身体がブレる事がある。ヤツは我らと同じ転生した者ではないか?」と言ってきてね。今回の検証の為に話す必要があったんだ。とはいえ君の許可も得ず、すまなかったね」


「そうなんですか。いえ、まぁハロルドさんの判断ならいいんですけど」


「我は秘密は誰にも話す気はないから安心するカネ。まぁ、我らは転生した者同士、知識を共有していくカネ!我々の世界は実に面白い。研究し甲斐があるカネねぇ」


 タヌ男が尻尾をゆらゆら揺らし、嬉しそうにつぶやいた。





  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




 そしてそれから一週間後、アダムス伯の拠点ワイダに召集された俺は叙任式に出席することになった。


「バーグマン家ミナト、前に!」


「はい!」


 ズラリと居並ぶアダムス家の家臣達、そして招かれた西セイルスの来賓の人々が見守る中、ゆっくりとアダムス辺境伯の前へと歩を進める。そしてしきたり通りにアダムス伯の前で片膝を立て頭を垂れる。リンも俺の隣に立ち、右手を胸に当ててお辞儀をした。


「ミナト、並びにその従魔リンよ。そなた達は我が領地アライにおいて、出現した伝説のシードラゴンを打ち倒し、住人を脅威から救ってくれたそうだな?」


「は、はい!」


「その活躍、まこと称賛に値する。その働きはかつての我が親友であり、魔物大量発生モンスターインパクトを鎮めた英雄ハロルドを彷彿とさせるものである!」


「はっ!ありがたき幸せ!」


「この度の功績に報い、爵位と勲章を贈る。そして辺境伯の名において、そなたを英雄と認める!皆の者、ここに新たな英雄が誕生した!英雄ミナトに称賛を与えよ!」


 城に響く辺境伯の朗々とした一声。


「「新たな英雄の前途に祝福あれ!」」


「「英雄ミナト!バンザーイ!」」


 文武百官が一斉に喜びの声を上げる。そのあと馬車に乗り、大勢の観衆が見守る中、ワイダの街を凱旋した。


 街の中央広場には俺が倒したギルメデス、そしてスカイドラゴンが安置され、伝説のシードラゴンを一目見ようと沢山の人だかりができている。


 ハロルド以来の新たな英雄の誕生にワイダの街はにわかに英雄ブームが巻き起こっている。その中心で俺は引きつった笑顔を貼り付けながら、歓声に応え手を振り続けたのだった。




  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




「はぁ……つ、疲れた……」


 華やかな式典が終わり、あてがわれたワイダ城の控え室でようやく一息つくことができた。控え室ではエリスが俺達を出迎えてくれた。今日は俺だけじゃなく、エリスやラナ、ライも招かれ式典に臨席していたのだ。


「お疲れさまミー君。式典、格好良かったわよ!」


「ありがとうエリス。ドレス、とても似合っているね。綺麗だよ」


「えへ、そう?ミー君にそう言ってもらえるのが一番嬉しいわ」


 照れ笑いを浮かべるエリス。やっぱり出席した中でエリスが一番輝いているよ。うんうん。


「エリス見て見て!リンもくんしょーもらったんだよ!」


「わぁ、立派な勲章ね!すごいわ、リンリン!」


「えへへ~、ミナトとおそろいなんだよ!」


 リンが式典でもらった勲章を嬉しそうにエリスに見せる。「ミナトはテイマーなのだからリンも賞されるべき」というアダムス伯の配慮だ。


 と。


 俺の服がチョンチョンと後ろから引っ張られた。ん?と振り返ってみると、ラナだった。ラナも普段の服とは違う、フリルがいっぱいついたドレスを身につけている。そして服の端を持って「ん、ん」とアピールしてきた。


「お〜!可愛いねぇ~!よく似合ってるぞ!お姫様みたいだなぁ~!!」


「うん!ラナ、とってもかわいいよ!」


 するとラナはムッフーと胸を張った。褒められてとても嬉しかったらしい。


「ライも格好良くビシッと決まってるな。貴族の子息に見えるぞ」


「そ、そうですか?コンラッドさんが選んでくれたんです!僕には見えないので、大丈夫なら良かったです。あの、それより僕らなんかがこのような席に出席しても良かったんでしょうか……?貴族ばかりなんでしょう?僕らはやっぱり家で留守番していた方がよかったんじゃぁ……」


 ラナとは対象的にライはワイダ城での式典に気後れしているらしい。


「あのね、ライ。実は、俺も式典とか無茶苦茶緊張してるんだ。できれば出たくない。もーライとラナとエリスが後ろで見守ってくれているから何とか出られたわけ。それじゃなきゃ足は震える、心臓は飛び出すでショック死しちゃう。だから、皆がいないと無理無理無理なの!側にいてっ!お願いだから俺を一人にしないで……!!」


 俺がライの手を握り、震えながら訴えると皆が笑った。それと同時に部屋のドアがノックされる。


「式典ご苦労だったなミナト。ここワイダでもお前の話で持ち切りだったぞ」


「お〜、久しぶりだなエド!」


 入室してきたのはアダムス辺境伯の息子エドだった。一緒にパーティーを組んでいた時はまさか、アダムス伯の息子だなんて全然知らなかった。けど、どことなく、どこかの国の騎士なのか、と思うような品があったのだ。


「まさか伝説のシードラゴンを倒してしまうとは。お前はいつも俺の想像できない事をやってのける」


「そんな、別に狙ってやった訳じゃないんだよ。ただ、アライの町の人達の助けになったのならいいんだ」


「フフッ、そういうところがお前らしいな。親父おやじも今回の働きには非常に感謝していたぞ。爵位も得たし、これでお前も晴れて貴族の仲間入りだな」


「爵位かぁ。確か「準男爵」だっけ?」


「ああ。男爵のひとつ下の位だ。本当はもっと上の地位でもいいんだが、男爵以上の爵位は国王の許可がいるからな」


 エドの話では準男爵は一代限りの爵位で、王国に貢献があったり、特別な功績があったりした場合に叙勲じょくんされる。男爵以上の爵位とは違うのは領地はなく、男爵以上は国王から直接任命を受ける必要があるが、準男爵は王族でも叙任じょにんできるという点だ。


 建前は貴族の扱いだが実際には名誉職の色合いが強い。ただし、新たに男爵以上の地位にく際にはこの準男爵やその下位の士爵ナイトから選ばれる事が圧倒的に多いことから、この準貴族の地位を得る事が、セイルス貴族を目指す際の最初の登竜門になるそうだ。


「俺は別にセイルス貴族になるつもりはないんだけどな。しかし、ギルメデス討伐がまさかこんな大事おおごとになるなんて思わなかったよ。スカイドラゴンの時はここまでの騒ぎにはならなかったのに」


「スカイドラゴンの時は特殊な状況だった。目撃者も居ない状況での討伐だったからな。あれでも軍ではかなり噂になったんだぞ?ただ親父が「現場検証に関してはバーグマン家に一任する」と一切の介入を禁じていたからな」


「あ〜、そういう事情があったのかぁ」


「本来であれば単独でドラゴンを討伐するなど前代未聞の事態だ。ましてや相手は討伐が難しいといわれているシードラゴンだからな。それを成し遂げる人物は正に英雄と言って良い。新たなセイルスの英雄の誕生に立ち合えた事をみな喜んでいるだろう」


「それなんだよエド。英雄英雄ってみんなが持ち上げるから居心地が悪いったらないんだよな〜」


「まぁ、お前はあまり得意ではないかもしれないが。実を言うとこの件に関しては西セイルスの思惑も絡んでいてな」


「ん?それどういう事?……ん?」


 急に廊下が騒がしくなった。「こら!ここは関係者以外立ち入り禁止だ!」と静止する声、そして「私はミナトの関係者よ!いいからそこをどきなさーい!」という女の人の声。


 さらに「あっ!?こら、勝手に入るな!」「捕まえろ!」という声が聞こえ思わずエドと顔を見合わせる。


 ん?あの声、どっかで聞き覚えがあるような?


 そしてドタバタと物音が響いたあと、部屋の扉がバァン!と大きな音を立てて開いた。そこには見覚えのある女の人が立っていた。


「ミナト君!リンちゃん!」


「あっ!?パメラさん!?」


 やって来たのはテイマーのパメラだった。彼女の身体にはラグビーの選手のように兵士がしがみついている。どうやら兵士の制止を振り切り無理やりここに侵入したらしい。


 事情を話し、知り合いだと伝えると、兵士からお小言をもらったあとやっとの事で開放されたのだった。




  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




「も〜!ミナトとは知り合いだって何回も説明したのに全然分かってくれないのよ!兵士って頭の硬い人ばっかりで嫌になっちゃう!」


「それが兵士の任務だ。いきなり素性も分からぬ人間を引き合わせてくれる兵士はいない」


 パメラの後ろでは彼女の従魔ハイオークのリッキーが静かに佇んでいる。


「まったくも〜!私はミナトの関係者なのにぃ〜!リッキーも私の従魔なんだからちゃんと協力してよね!」


「きちんと手続きを踏めと言ったのに、絶対大丈夫!と城に突撃したのはお前だ。俺まで暴れたら今頃、ミナトに会うどころか牢の中だったぞ」


「むぅ〜!」


 至極真っ当なリッキーの言い分にほっぺたをふくらませるパメラ。うん、この無鉄砲さは変わらないなぁ。


「そんな事よりよ!ミナト君!あのギルメデスを倒したんだって!?それ本当なの!?」


「え、あ、はい。本当ですよ。ところでパメラさんはどうしてここに?」


 勢いよくグイグイ迫ってくるパメラに若干腰が引ける。パメラはテイマーズギルド設立の為に各地をまわっていたはずだけど……?


「もちろん、ミナト君の大活躍を聞いて戻ってきたんじゃない!で、で!?どうやってギルメデスを倒したの!?武器は!?討伐方法は!?ヤツは伝説の魔物よ!嵐を呼び、大津波を引き起こし、大船からの砲撃にも全く怯まないと言われるドラゴンよ!」


「ん〜とね!海の上に立ってね、ビアトリスの船からふぁいやーあろーがビューンビューン!って飛んでる隙に波の間に隠れたの!それでおっきい波が来たからミナトがれっぱざんでズバッー!ってギルメデスを斬ったんだよ!」


「すごっ!それマジなの、リンちゃん!ミナト君、ホントにそんな事ができたの!?」


 パメラは俺の肩をがっしりと掴みブンブン揺らして有無を言わせない。俺は頷く事しかできなかった。


「そうなんだ〜!リンちゃんも頑張ったね〜!偉いわ!」


 パメラは俺に対する時とはうって変わって、優しくリンの頭を撫でる。


「ミナト君もよくやってくれたわね!これでテイマーの地位もきっと向上するわ!」


「え、そ、そうですかね?」


「当然よ!なんたってテイマーが伝説のシードラゴンを討伐したんですもの!あなたのお陰でテイマーの地位も知名度もきっと爆上りするわ!この事はギルド設立にもプラスに働くはずよ。私ももっと頑張らなきゃ!ん〜、燃えてきたぁ!」


「あの、出来ればパメラさんもそろそろ、正式に双子山のギルドのマスターに就いてもらえるとありがた……」


「それで、ミナト君!倒したギルメデスはどこなの!?やっぱり一目見ておかないとね!」


「え、ギルメデスですか?大通り広場にスカイドラゴンと一緒に安置してありますよ」


「あ、やっぱりあの人だかりはそうだったのね!こうしちゃいられないわ。行くわよ、リッキー!」


「あ、おい待て、パメラ!」


 元気に部屋を飛びだしたパメラをリッキーが慌てて追っていった。


「……なんというか、嵐のような人物だったな」


 呆然としていたエドがつぶやく。


「ま、まぁそうだね。でも決して悪い人じゃないんだ。特に従魔に対する思い入れは人一倍強い人だから。テイマーの地位をなんとか向上させようと頑張ってくれてるんだ。ありがたい人だよ」


「そうか。まぁ、いずれにしても今日は式典にでてくれて感謝している。ルカ殿にも宜しく伝えてくれ」


「分かった。そう言えばさっき西セイルスの思惑がどうとか言ってたのはなんだったんだ?」


「その件に関しては直接親父に聞いたほうが真意が伝わると思う。恐らく近いうちに親父自ら説明に出向くはずだ」


 そして式典が終わり、双子山に戻った次の日の夜。アダムス辺境伯がふらりと屋敷を訪れた。





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