12話 アガサと琥珀の神酒
「久しいですわね。我が愛しの旦那様」
美しく、いかにも質の良い豪華なドレスを身に纏った女の人は確かにそう言った。その手には鳥の羽をあしらった扇を持っている。
え……この人は誰なんだろう?
突然現れた珍客に驚きつつその視線を追ってみる……と、その先には真っ青な顔をして固まっているベルドがいた。
「ア……アガサ!?なんでお前がここにいるんだ!?」
うめくように声を絞りだすベルド。どうやら女の人はアガサという名前らしい。
「そのような事はどうでもいいのです。あなたがこの地に醸造場を作ろうとしているという話を聞いて飛んで来ましたの。その話は本当なのですか?」
「え!?いや、それは、その……」
突然、会話に詰まり、なかなか次の言葉が出てこないベルド。めちゃくちゃ動揺してるのが俺にもわかった。
「あのう……。この人は?ベルドさんの知り合いですか?」
二人は顔見知り、なんだよな?それにしても「愛しの旦那様」って聞こえたんだけど……??
「無礼者!こちらにおわすのが誰だと心得る!」
女の人に付き従っていた従者が、俺に向かって口を開いた瞬間だった。
「うるせぇ!てめぇらは黙ってろ!!」
会議室に怒号が響き渡り、従者が固まる。声を発したのはベルドだった。
「……はぁ、来ちまったもんは仕方がねぇか。……ミナト、突然すまんな。こいつはな、俺の女房なんだ」
「……はぁ!?女房!?この人が!?」
は、えぇ~!?このすらっとした女の人が!?嘘だろ!?ベルドさんの奥さんだって!?えっと、失礼だがベルドは確かにすごい人で、元五英雄なんだけど……。うん、見た目は下町の鍛冶屋のおっさんって感じなので……。ベルド奥さんのイメージとしては、なんか、ドワーフ族特有の背丈の低い、がっしりした気風の良いおかみさんという感じかと……思ってた。
「この人がベルドのお嫁さん!?うそだぁ!!」
時間差でリンも驚きの声をあげた。そうだよね~。俺も全然イメージが合わないもん。
「そういえば自己紹介がまだでしたわね。私はガルラ王国の貴族。ベルド=ハンマの妻アガサ=ハンマと申します。以後よしなに」
そう言ってアガサさんは優雅な挨拶をし、柔らかく微笑んだ。そして、アガサさんは、さらりとベルドさんもガルラ王国の名門貴族の出身だと語った。ベルドさんは正しくはベルド=ハンマといい、ガルラ王国では一、二を争う名門貴族ハンマ家の跡取りなのだった。ほえ~っ!ビックリだわ!
「あ、えっと、俺はミナトです。こっちは俺の相棒のリンです」
「リンだよ!よろしく~!」
俺達もアガサさんに挨拶を返した。横を見るとベルドさんは、青ざめた顔が険しくなったかと思うと固まったり、目の前の事態に混乱しているようにみえる……大丈夫だろうか??
いや~それにしても、アガサさんもベルドさんと本当に同じドワーフなのかな?でも全然そうは見えないんだけど……。背は高いし、ぱっと見は人間の貴婦人に見える。でも二人の子供のカンナはドワーフって感じがするんだよなぁ……。なんか不思議だな。
そうそう、ガルラ王国では「火」と「酒」が信奉されており火や鍛冶を司る貴族の最高位がハンマ家。そして酒を司る貴族の最高位がルコール家というらしい。
アガサはルコール家の出身でベルドと結婚し、産まれたのがカンナだという。
ベルドとアガサ。つまりこの二人、ガルラ王国ではめちゃくちゃ高位の貴族なのだ。とするとカンナはこの二人の子だから正真正銘の貴族のサラブレットなんだな。そしてアガサさんはこれまで夫であるベルドと離れ、ガルラ王国にあるハンマ家の屋敷で暮らしていたらしい。
さっきからビックリし通しだが、驚いてばかりも居られない。普段はガルラ王国にいる彼女がなんで急にここに来たんだろう?
「すまんオヤジ。お袋を呼んだのは私なんだ」
アガサの隣に立ったのはカンナだった。
「な、何だと!?カンナ!お前……!」
「あなた!」
カンナに詰め寄ろうとするベルドをアガサが一喝する。ベルドがビクッと身体を硬直させた。
「カンナは全く悪くありません。聞くところによると、醸造所の総責任者になろうとしているらしいですわね?」
「え、いや、それは……ミ、ミナトにどうしてもと頼まれてだな!そうだよな!ミナト!?お前に頼まれたら断れねぇ!親友であるミナトの信頼に応えない訳にはいかんからな!」
え?親友って俺!?いや、確かに総責任者になってくれとは言ったけど、それはベルドさんの持つ鍛冶技術とバーターだし、ベルドさんもちゃんと納得して結んだ正式な契約でしたよね……?うん、でもここは話を合わせないとまずいか!?
「……あの、申し訳ありません!!ベルドさんに醸造所の事を頼んだのは俺なんです。ベルドさんが忙しいという事は重々承知していたんですが、お酒の事といえばベルドさんをおいて他にいなくて……。カンナさんには鍛冶が疎かになるかもしれない……とは、聞いていましたけど」
「まあ、そうでしたの。ミナトさん……実は我が夫ベルドは以前、冒険者として活動しておりました。その活動を終えた後、私と結婚し、その後はハンマ家の跡目を継ぐ予定であったのです。しかし、いざ正式に継承の話が出ると夫は「当主となる前にハンマ家の者として、鍛冶師の技術を自身が納得できる域まで極めたい」と現当主である父を説得し、娘のカンナを連れ、ガルラ王国を離れ修行の旅にでたのです」
へぇ~、そうだったのか。そんな過去があったとは……。でもベルドさんは多分貴族の当主にはなりたくなかったんだろうなぁ。だって、鍛冶をしているのが似合ってるもんな。貴族の社交とかなんかよりずっと……。何となくそんな気がする。
「そもそも鍛冶の道を極めたいと言って、当主就任を待ってもらっているのです。その期間に醸造所を作り、あまつさえそこの責任者になろうなんて……話が違いませんか?ベルド」
「で、でもな!ここには果樹園があってな。極上のブドウとリンゴが採れるんだ!水もいいし、土壌だって申し分ない。ここまで良い条件が揃っているんだ。ここでやらないのは逆に酒神シュザ様に背くってもんだぜ!?」
ベルドが身ぶり手ぶりを交えつつ、懸命に取り繕う。
「……なるほど、ここにはそれほど良い果実が。それでは試してみましょう。ミナトさん、そのブドウとリンゴ、用意して頂けますかしら?採りたてのものをお願いします」
有無を言わせぬアガサの言葉に、急いで果樹園に走った。政務官になっても相変わらずパシらされる俺……。いやいや、考え方を変えよう。相手はガルラ国王の貴族様だ。気に入ってもらえれば商圏が拡がる。チャンスだととらえよう!気持ちを切り替え、木になっているブドウとリンゴをもいで戻る。
「それじゃリンゴの皮を剥きますね」
「いいえ、そのままで結構。……なるほど。確かに色も艶もなかなかのものです。さて味は……」
アガサは手に持ったリンゴをそのまま囓る。わぉ、結構大胆にいくな~。
じっくり時間をかけて味わったあと、「これは……」と呟き、今度はブドウを口に運ぶ。こちらも皮ごと口にした。
「皮を剥いた果実では、正確なテイスティングができないからな。酒にするにもいちいち皮を剥いたりしないだろ?」
いつの間にか隣に居たカンナが、俺の疑問に答えてくれた。
確かにそれはそうだ。ワインとかも皮ごとつぶして作るしね。そしてアガサは従者に命じ紙を持ってこさせ、何事かを記していく。
「……ふむ。種類はこれくらいでしょう。ミナトさん。まずは立ち上げとしてこれくらいから始めようと思います」
アガサから受け取った紙にはワイン、果実酒、ブランデーなどお酒の種類が書かれていた。
「大麦の育成次第ですが、ビールやゆくゆくはウイスキー等にも拡げていこうかと考えています。よろしいですね?ええ、夫の親友の頼みとあれば、私の名にかけて、最高のモノを作れるように手配いたしますわ!」
「え?あ、はい」
あれ?アガサさんが作るの?
「どうやらここの果実はお袋のお眼鏡にかなったようだな。お袋に任せておけば安心だぞ」
「カンナさん。アガサさんってそんなにお酒に詳しいんですか?」
「詳しいなんてもんじゃない。お袋の舌は恐ろしく正確でな。特に酒の評価はガルラ国王も一目置いているほどだ。お袋が高評価した酒は、次の日から品切れになる程だからな。酒の製造に関しても知識が深い。実家のルコール家はガルラ王国でも頂点に立つ醸造場を持っているからな。お袋に任せておけば間違いなく売れる酒を作ってくれるぞ」
「そうなんですか!?それならもし、アガサさんに醸造場を任せれば売れるお酒を作ってもらえるって事ですよね!?それならアガサさんにお願いして……」
「おい、ちょっと待てミナト!俺が好きに作っていいって契約だったよな!?なんでアガサが俺の代わりに作るって話になるんだ!?」
ベルドが抗議の声をあげる。あ、やっぱり駄目っすか?
「あなた?醸造場を運営すると仰るという事は、すなわち鍛冶の修行は終えた、と解釈してもいいのですね?」
「うっ……それは……」
「修行を終えたという事は、ハンマ家の当主に就いて頂けますのね?お義父様もさぞお喜びになりますわ!」
アガサが嬉しそうに胸元でパン、と手を合わせた。
「い、いや、ちょっと待ってくれアガサ!分かった、分かったよ!鍛冶の修行に専念する!ネノ鉱山が再開して魔鉄も手に入りやすくなった。ミスリル鉱山の開発にも着手した所なんだ。俺はベルド合金を更に良質な合金にしたい。当主になるのは鍛冶で名を残してからにしてぇんだ!頼む、もう少し待ってくれ!」
「……そうですか。それではこの双子山の醸造場の方は、私に任せていただけますか?」
「う……やむを得ん。好きにしてくれ」
傍目から見てもがっくりとうなだれるベルド。
「ご安心くださいな。運営は私の手の者が行いますが、名前はベルドの名を冠した醸造場に致します!それにしても残念ですわ。旦那様がやっとガルラ王国へ帰国なさると思いましたのに……。旦那様、もし、自分好みの自家製酒を造りたいのであれば、帰ってからハンマ屋敷の横に旦那様専用の醸造所を造ってもよろしいではありませんか?」
「おい、アガサ、そんな事やったら「ハンマ家の倅は資格もないのに嫁の実家の権力を使って醸造場を作った」なんて言われるだろ!……はぁ、ここならガルラ王国からも離れてるし、チャンスだと思ったんだがなぁ……まぁ、しょうがねぇか。ミナト、そんな訳だ。予定は狂っちまったがアガサに任せれば問題はない。俺は工房に戻る。あとはお前らで話してくれ……」
そう言うとベルドは肩を落として会議室を出ていった。
う~ん、事情があったとは言え気の毒な事をしちゃったな。
「大丈夫だ。ミナトが気に病む事はない。元々実家からも止められていた事だ。自身の欲望を抑えられずに暴走したオヤジが悪い。自分の醸造場が欲しいなら先にその資格を得ないとな」
俺の表情を察してかカンナが声をかけてくれた。
「そうですか……。でもベルドさんには申し訳ない事をしちゃいましたね。それにあれじゃ奥さんとの仲も……」
「ああ、それは心配ないぞ。オヤジ達は普段はすごく仲はいいんだ。オヤジもお袋も毎日のように手紙をだしあってるからな。ただ二人共、仕事に関しては全く妥協しないんだ。だからいつもはお互いの領分には踏み込まない。今回はちょっとオヤジが暴走してしまったけどな」
おう!毎日手紙を!?か~っ!ラブラブですなぁ。人は見かけによらないなぁ、ベルドさん。
「酒では失敗するが、私はオヤジを尊敬しているんだ。火に真っ直ぐに立ち向かい、対話して極上の武具を造り上げる。あの鍛冶に打ち込む姿が好きなんだ。追い抜きたい、なんて言えないがいつかはオヤジに並ぶくらいの品を作りたいと思ってる。私の生涯の目標だよ」
「カンナ。それは直接本人に言ってあげたら?きっと泣いて喜びますよ?」
アガサさんがにこやかに笑みを浮かべて、娘に声をかける。
「い、いや。オヤジに面と向かってなんて恥ずかしくて言えないよ!あ!私もやりかけの仕事があったんだ!先に工房に戻るよ。オヤジを励ましてやらないと。じゃあミナト、また後でな!」
そう言って赤くなった顔をごまかすように慌ててカンナは屋敷を出ていった。
「さて、ミナトさん。ここからは商談の話を致しましょう。カンナに聞いたのですが貴方は神酒を持っているそうですね?」
「あ、はい。ベルドさんには神酒だ、と言われました」
「その神酒、見せて頂けます?」
「いいですよ。……これです」
小さな樽のようなデザインのオールドウイスキーをマジックバッグから取り出しグラスに手渡す。
「開けてみてもよろしいかしら?」
「どうぞ」
ゆっくりと蓋を開けると香りを確かめる。アガサの眉がピクリと動いた。
「これは……この香り。容器の外からでも分かる高純度の魔力、そして立ち昇る酒気……まさか、人族の酒でここまで……」
いや、確かに人族の酒ではあるんですよ?ただこの世界の物ではなく、前世からの持ち込み品ですけどね。
「ミナトさん、旦那様はこれをどれほど飲まれたのかしら?」
「えっと、ワンショットだから……30ミリリットルぐらいですかね?」
「何てこと!そんな少量であのベルド合金を閃いたというのですか!?」
「え、でもベルドさんはこれで最後の工程を思いついたって言ってましたから元々、完成間近だったんでは?」
「工程を閃いた、という事が重要なのです!それにような少量程度で効果がでる神酒などガルラ王国でも聞いたことがありませんわ!何という事でしょう!歴史的大発見だわ!」
え?ええぇ~!?そうなの?このウイスキーってそんな凄いものなの?戸惑っている俺の手をアガサがガッと掴む。
「カンナから聞いてはいましたがこれほどの逸品とは思いませんでしたわ!ミナトさん!このウイスキー、是非譲って下さいな!対価としてこれから建造する醸造場の費用は、全て我がハンマ家が負担致します!」
「でもベルドさんが設計しためちゃくちゃ広大な醸造場ですよ?かなりの費用がかかります。それを全部負担してくれるんですか?」
「はい。更に私自ら考案したレシピも提供します。私の名と酒を司るルコール家の威信をかけ必ずや利益の上がる商品を供給させますわ!どうでしょう?この条件でよろしければ契約を結んでいただければ嬉しいのですけど」
おお~!それなら俺の懐は全く痛まないし、人族にも売れる酒をつくって貰えるなら願ったり叶ったりじゃん!
「分かりました。それではそれで契約を……」
「その契約、ちょっと待ったー!」
屋敷に響き渡る「ちょっと待ったコール」と共に見知った顔が会議室に飛び込んできた。
てか前にもなかったっけ?このシーン。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ミナトさん!その契約、少し待っていただけますか!?」
会議室に飛び込んできたのはコンラッドとビアトリスだった。
「あれ?お二人揃ってどうしたんですか?」
「私達は今しがたまで、ミスリル鉱山開発の進捗状況を現地で確認していたのです。その帰路でカンナさんに会いましてね。事情を聞き、すっ飛んで来たのです。ミナトさん!その神酒、是非フリール商会にお売りください!」
「え?フリール商会にですか?」
「そうさ。このビアトリスがそこにいるドワーフより高値で買ってやるよ。どうだい?」
「まあ、私共の商談にいきなり割り込んできて、ずいぶんと無粋な方々ですわね。フリール商会と言えばセイルス王国でも指折りの商会。何よりビアトリス様は、我が夫とパーティを組んでいたチームメイトだったのでしょう?信頼できる方であると思っておりましたのに幻滅いたしましたわ」
「ほうそうかい。その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。あんたはガルラ国王で酒を司る名家の出だろう?この酒の価値が分からないはずはない。なのにずいぶんと条件がしわいじゃないか?この神酒はたかが醸造所一つと交換できるような代物じゃない。これをガルラ王に献上すれば、その褒美に貴族の位と一生遊んで暮らせる報償金をもらえるはずだ。私なら醸造所の費用に更に計画している魔鉄用の鍛冶工場の建築費も上乗せして出してやるよ。ミナト、どうだ?」
「え!?いや、それはありがたいんですけど、でも……」
と、言いかけた俺をコンラッドがさりげなく制した。そして「ここは総帥にお任せください。やり手ですから」と耳打ちする。
「……なるほど。確かにこの神酒との交換では釣り合いが取れませんでしたね。それでは私はビアトリス様の条件に更に上乗せさせましょう。ミナトさん、他に何かの計画はありますか?」
「計画ですか?一応、ミサーク村で採れる岩塩の製塩工場も作ろうかと思ってますけど……」
「分かりました。先程の条件にその費用も負担しましょう」
え、そんなにいいの!?
「なるほどね。ならこっちは双子山の麓の河原に桟橋を作ろうじゃないか。欲しかったんだろ?ミナト」
ちょっ、まだいくんすかビアトリスさん!?いくら貴重品だと言ってもたかが一本の酒ですよ!?
「わかりました。それではミナトさん、貴方個人にガルラ国王にあるヒュプニウムの加工工場の設置と使用の許可を与えましょう。いかがですか?」
「え!ヒュプニウムの加工工場ですか!?」
ヒュプニウムは加工が極めて難しくて加工できるのはガルラ王国の他にはほぼ出来ないっていう特殊技術だぞ?それをここに?てか、そんな重要な事を彼女一人で決められるの!?
「はい。ここにはヒュプニウム鉱脈があると聞いています。ヒュプニウムの加工工場は今までガルラ王国民以外には解放された事はありませんが私の姉はガルラ王の妃。王に掛け合っていただき、特別に許可を頂こうと思います。これでいかがですか、ビアトリス様?」
「なるほど、そうきたかい。確かにそんな切り札を切られたら私は諦めるしかないねぇ。残念だけど今回は譲ってやるよ」
不敵な笑みを浮かべてビアトリスが引き下がった。……えっと醸造所に魔鉄と製塩の工場に、桟橋、ヒュプニウムの加工の許可……ってこんなにいいの!?
「この神酒はそれだけガルラ王国にとって代えがたい価値があるもんなんだよ。もっと引っ張ることもできたけどベルドの顔も立ててやらないとね」
顔を立ててあれかよ!と思わず突っ込みたくなった。やっぱりビアトリスさんには恐ろしい人だった。
改めて契約を結び、双子山の開発計画はさらに進捗した。てかこんなに出してもらってほんとにいいんだろうか?ビアトリスさんによると「あの神酒との交換ならまだ安いくらいだ」との事だった。
契約を済ませ、アガサも屋敷を後にする。今日はベルドの家で家族水入らずで過ごすのだそうだ。
アガサの話ではベルドが考えたレシピでの酒も作るつもりらしい。人族用にカスタマイズし調整を加える事で人族にも売れるようにするのだそう。
バカ売れとはいかないまでも通好みの味に仕上がる見立てだ。それならベルドの顔も立つだろう。やっぱりベルドの事も考えてるんだな。うんうん。
なんだかポンポンと事が進みすぎて怖いくらいだ。でもこれでまた忙しくなりそうだなぁ。そんな話をビアトリスと話すと、
「そうさね、そろそろあんただけじゃ手が回らないだろう。そういうと思って有能な男を連れてきた。あんたの下につけてやるよ。上手く使っとくれ」
ビアトリスが声をかけると会議室に一人の男が入室してきた。