表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

昭和20年

【凡例】

T :テロップ

M:モノローグ


【登場人物】

小林 舞……主人公。中学三年生。

滝川 護……舞の同級生。

水野 拓巳……舞の担任。

小林 睦美……舞の母。

小林 珠代……舞の祖母。

小林 修一……舞の叔父。睦の兄。

小林 由美……舞の叔母。

西原……睦美の勤めるPC教室の生徒。

坂谷……睦美の上司。

竹村……舞の中学校の社会科教師。

日野……舞の中学校の音楽教師。


《戦時中の登場人物》

小林 喜一郎……舞の曾祖父。

小林 志津……舞の曾祖母。

小林 君代……舞の大叔母。

小林 祥太郎……舞の大叔父。

小林 幸代……舞の大叔母。

小林 喜代……喜一郎の姉。

T「時が熱狂と偏見をやわらげたあかつきには、そのときこそ、正義の女神はその秤を平

衡に保ちながら、過去の賞罰の多くに、そのところを変えることを要求するだろう」

(「パール判決文より」『パール判事の日本無罪論』田中正明著より引用)


○パラオ・ペリリュー島

ズタズタになった旧日本兵の屍がそこかしこに転がる。

T「昭和二十年、パラオ・ペリリュー島」

一人の痩せこけた日本兵がこちらに向かってくる。

小林喜一郎(39)、銃を杖代わりにヨロヨロ歩いてくる。

喜一郎の顔は煤で汚れ、軍服も泥まみれになり何カ所も破けている。

喜一郎、ギラリと敵陣を睨み付け、

喜一郎「天皇陛下、万歳! 大日本帝国、万歳!」

と、最後の力を振り絞り疾風の如く敵陣に走り込む。

銃を構える連合軍の兵士たち。

照準器の十字が喜一郎の額に重なる。


○旧小林宅・台所

T「昭和二十年 大阪」

小林喜代(40)と妊娠中の小林 志津(30)、こそこそ話す。

喜代「ほんまに堪忍やで。食糧、中々、手に入らんし、かなんわ」

志津「お義姉さん、気にせんといてください。子供らまだ小さいし、大阪いてるより広島に帰った方が安全かもしれませんから」

喜代「せやな、せやせや。広島の方が空襲少ないやろうし、いい疎開先になるわ。せや、頼みに行く間、珠ちゃんら、預かっとこか?」

志津「すぐに置いて貰えるかもしれませんし、迎えに来る汽車賃、勿体ないから一緒に連れて帰りますわ」

喜代「ほんまに、堪忍やで。志津さんのご実家も大変や言うのに。もし、無理やったら、遠慮せんと帰って来てな。しんどいけど、みんなで協力し合ったらええし」

志津、不安そうに愛想笑いする。


○再びパラオ・ペリリュー島

喜一郎の額から一筋の血が滴り落ちる。

喜一郎、崩れる様に地面に跪く(ひざまずく)き、晴れ渡る美しい空に手を伸ばす。

喜一郎「志津、珠代、君代、祥太郎……」

連合軍の兵士、銃の引き金を引く。

喜一郎、荒れ果てた大地に崩れ落ちる。


○志津の実家・玄関(夕方)

T「昭和二十年 広島・呉市吉浦町」

志津の母が、珠代、君代、祥太郎に菓子を配る。

子供らの様子を微笑ましく見守る志津。

子供たち、お菓子を口いっぱいに頬張り、きゃっきゃと大はしゃぎする。

志津の母「(志津に)ほんまに堪忍やで。うちも、いっぱい、いっぱいで」

志津「分かってる。お義姉さんの手前、戻っといたら恰好つくし。お父さんとお母さんに、子供らも見せたかったし」

と、寂しく微笑む。

志津の母、不安そうに志津を見つめる。


○広島・海岸沿いの山道(夕方)

段々畑が山の斜面を覆い、そのすそ野には瀬戸内海が広がる。

石畳の階段を大荷物を持った志津と子供らが降りてくる。

志津、落ち込んだ様子で階段を降りる。

珠代と君代、追いかけっこしながら、はしゃいで階段を降りる。

志津「珠ちゃん、君ちゃん、転ぶで! 気ぃ付けや」

志津と手を繋ぐ祥太郎、姉らに追い付こうとヨタヨタしながらも必死で階段を降りる。

志津「祥ちゃんは、慌てんでええからな」

珠代と君代、階段を降りきる。

珠代「(海を指差し)お母さん、見て!」

沈む夕日が瀬戸内海を鮮やかに照らす。

行き交う船が汽笛を鳴らし合う。

キャッキャッ喜ぶ珠代と君代。

志津と祥太郎、ようやく二人に追い付き一緒に瀬戸内海を眺める。

志津「また、みんなで来ような」

珠代「お父さんも!」

志津「せやな。日本が戦争に勝ったら、みんなで、一緒に広島に来ような」

と、堪えていた涙が頬を伝う。

志津、慌てて両手で顔を覆う。

君代「どないしたん?」

志津「夕日が眩し過ぎるねん」

珠代、手で(ひさし)を作り志津に見せる。

珠代「こうしたら、ええねん」

志津、覆った指の間から珠代を見る。

珠代、庇からおどけた顔を見せる。

志津、クスリと笑い手で庇を作る。

志津「ほんまやな、眩ないわ。賢いな、珠ちゃん」

誇らしげに微笑む珠代。

君代と祥太郎も真似て庇を作る。

夕日に照らされる親子四人。


○新幹線・車内

T「平成二十九年 秋」

小林珠代(81)、小林舞(14)、小林睦(45)、小林修一(48)、小林由実(47)、向かい合って談笑する。

珠代「山の斜面の段々畑とオレンジ色にキラキラ光る海、未だに忘れられへんわ。ほんでな、その海を船がゆっくり進みながらボーって汽笛鳴らしててん」

舞「それって、どこ?」

珠代「呉の吉浦町や」

由実「そこも、寄ってみようや」

修一「え? 時間足りるかな」

と、自作の旅のスケジュール表と睨めっこする。

他の四人はぼんやり、瀬戸内の海に思いを馳せる。


○四人の回想・昭和20年の瀬戸内海(夕方)

沈む夕日が海一面を鮮やかに照らす。

行き交う二艘の船、汽笛を鳴らしすれ違う。


○広島平和記念資料館・館内

窓から見える原爆ドーム。

込み合う館内。

キノコ雲に覆われた漁村の写真。その下に『原爆投下直後の呉市吉浦町』のプレート。

写真の前で呆然と立ち尽くす小林家の人々。


○新大阪駅・ホーム

乗降客でごった返す。その中に持ちきれない程の荷物を持った小林家の人々の姿もある。みな楽しげだが、睦だけ一人落ち込んでトボトボ歩く。

   ×   ×   ×

エレベータ前で、別れを惜しむ小林家の人々。

珠代、睦の手を握り、

珠代「ほんまにありがとうな。睦」

睦「私だけやないよ。お兄ちゃんと、お義姉ちゃんの力もあったから実現できてんやん」

と、照れ臭そうに笑う。

由美「むっちゃん、そんなん言うても何も出ぇへんで(珠代に)あ、お義母さん、エレベータ来たわ」

エレベータに乗り込む由美と修一。

珠代も続いて、ヨタヨタとエレベータに乗る。

由美「むっちやん、また、遊びに来てな。舞ちゃん、また、明後日な」

舞「うん!」

珠代、由美、修一、二人に手を振る。

舞も手を振って三人を見送る。

睦「はあーぁ」

舞「もう、歳やな」

睦「しんどいんと、ちゃうわ」

舞「またまた、痩せ我慢して」

睦「おばあちゃんに、えらいことしてもうた」

舞「え?」

睦「おばあちゃんの一番大事な思い出、壊してもうた」

と、再びトボトボ歩き出す。

舞「ちょっ、ちょっと、どういうこと、壊したって。いつ? どこで?」

と、睦の後を追い掛ける。


© 黒猫 2012-2020

【参考資料】

書籍を執筆された先生方、

空襲の体験談を執筆されたみなさま、

そして、テレビを通していつも自虐史観の私たちを叱って下さった故 三宅久之さんに心より御礼申し上げます。


■書籍

* 産経新聞「ふりさけみれば」(新聞小説)

* 大阪大空襲体験記 第五集/大阪大空襲の体験を語る会

* 大東亜戦争を見直そう/名越 二荒之助 著

* パール博士の日本無罪論/田中 正明 著

* 大東亜戦争の真実~東條英機 宣誓供述書/東條 由布子 編

* 教育勅語のすすめ/清水 馨八郎 著

* 田母神塾/田母神 俊雄 著

* 世界が語る大東亜戦争と東京裁判/吉本 貞昭 著

* 戦争犯罪国はアメリカだった!/ヘンリー・S・ストークス 著

* 教育勅語の真実/伊藤 哲夫 著

* 一気に読める「戦争」の昭和史/小川 榮太郎 著

* 日本は誰と戦ったのか/江崎 道朗 著


-----------------------------------------------------------


■Webサイト

* msn産経ニュース 2011/12/7

「ルーズベルトは狂気の男」 フーバー元大統領が批判

http://sankei.jp.msn.com/world/news/111207/amr11120722410009-n1.htm

上記URL記事が削除されていましたが、執筆当時の平成24年かなり衝撃を受けました。

興味のある方は、下記動画参照ください。`ルーズベルトは狂気の男`のキーワードでヒットしました。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm28626287


* 日教組の「自衛官の子いじめ」 「人権」はなかった…

元産経新聞編集長の記事だったのですが、これも記事が削除されてました。

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/4759/19990218.html

自衛隊員の方のご家族の苦労を知ることができました。

ありがとうございました。


* ハル・ノート(Wikipedia)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88#cite_note-FOOTNOTE%E9%A0%88%E8%97%A41999164-165-536


* スターリンの大粛清

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E7%B2%9B%E6%B8%85

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66675?page=2


* 日本共産党HP~憲法より

http://www.jcp.or.jp/kenpou/:title


* できるかな?じゃねえよやるんだよ。今がその時だ!/)

 「君が代」の正しい歌い方を知らない日本人が多過ぎませんか?

http://minkara.carview.co.jp/userid/761752/blog/20894355/

平成23年大阪で施行された「国旗国歌条例」で裁判沙汰になった時に、

当時の知事だった橋下さんが裁判の話プラス余談として

「君が代は息継ぎする場所が決まっている」旨の内容を話されていました。

それにヒントを得て、作品の中にも反映しました。

上記のサイトかなり詳しく記載されていたのですが、

ブログ終了していたのは、とても残念です。

大変、お勉強になりました。ありがとうございました。


* 大東亜戦争 開戦の詔勅  (米英両国ニ対スル宣戦ノ詔書)

http://www.geocities.jp/taizoota/Essay/gyokuon/kaisenn.htm

   ↑

ブログ終了していました。

詳しく知りたい方は下記サイトをご参照ください。

http://bewithgods.com/hope/doc20/25-17.html

   ↑

お勉強になりました。ありがとうございます。


* 自民党_日本国憲法改正草案

https://constitution.jimin.jp/document/draft/


【令和二年版 卒業について】

日米戦について新しい本を読みました。

『日本は誰と戦ったのか コミンテルンの秘密工作を追及するアメリカ』/江崎 道朗 著

(2019/2/8 発売/初版2017/12/5)

やっと、ハルノートに対するモヤモヤした気持ちが吹っ切れました。


平成24年の初版からハルノートが、一番難しい資料でした。

多くの本を読み、当時、アメリカが日本に要求したことを少しずつ理解しましたが、

戦時中の状況が掴みきれず、また国同士の駆け引きが理解しきれずモヤモヤしていました。

特に産経新聞のWebサイトの記事、

『msn産経ニュース 2011/12/7 「ルーズベルトは狂気の男」 フーバー元大統領が批判』

を読んで、「これだ!」と思い、平成三十年版までルーズベルトの責任に重きを置いて記述していました。


今年九月、産経新聞の広告に江崎さんの新刊(今見ると監修でした)

「ミトロヒン文書 KGB(ソ連)・工作の近現代史」紹介されており、

「KGB」の名に惹かれてAmazonで調べてみました。

江崎さんは先述の書籍以外にも興味津々の本を執筆されていました。

その時、一番目を引いたのは『日本は誰と戦ったのか コミンテルンの秘密工作を追及するアメリカ』でした。

早速、購入して読みました。

驚きました。

ソ連のスパイはホワイトハウスに一人潜り込んでいただけではなく、

日本、アメリカ、中国に複数の工作員をそれぞれの国に配置して日米開戦へと追い込んでいました。


今年、5月に今までと同様の内容をリライトしてブログにも公開していましたが、

これじゃダメだと気がつき9月から必死に江崎さんの本を読み、内容を理解し、

日米開戦に関連する章を大幅に書き換えました。


江崎さんの本は、多くの資料に基づいて論理的に分析された良書です。

しかも、解説が非常に分かりやすい! 政治や戦争の知識に乏しい私でも、すんなり理解できました。

興味のある方は、是非読んでみてください。おすすめです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ