第7話 混乱
ダルケル歴960年 4月12日 シュメール王国 王都 王城
「どういうことだ!」
シュメール王国第32代国王であるキューレル・シュメールは机を叩く。
「何故だ!何故、我が国に上陸されたのだ!」
すると、執事は口を開く。
「ええと、数日前に海軍が周辺海域を警備していた際、謎の艦艇を発見し、攻撃したものの返り討ちに会い、向かった全艦が撃沈された事件がありました……。そ、そして、カビロン辺境も攻撃された事件もありま……した。」
執事の言葉を聞くなり、額に青い筋がいくつも現れる。
「馬鹿野郎!早く言え!相手の国の名前はぁ!」
キューレルは激昴する。
「チキウ連邦国という国です。」
「チキウ!?チキウ人じゃないか!あのチキウだったr。」
「それは有り得ません。何故n。」
「もし、あのチキウ人だったらどうするんだ!もう帰れ!」
執事はさっさと帰っていく。
「もう、どうすればいいのだ。」
キューレルは頭を抱えた。
シュメール王国はここ数年、軍の独自行動が目立っており、覇権主義国家へと早変わりしていた。
キューレルの話等聞きはしない。
いずれかはこの国は滅びる。
これが、キュレールの本心であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同時刻 シュメール王国領 サーフェス王国
ゴォォーーーーーーーーーーーッ
第355飛行大隊はサーフェス王国の上空を飛行していた。
シュバルツはニヤリと笑った。
「みーっけ、秘密基地を潰しますかぁ。」
サーフェス王国は山脈が沢山あり、もし、侵略された際に山脈に配備されている戦車やワイバーンを使い、ゲリラ攻撃を行うのだ。
だが、地球連邦国の高性能レーダーは見逃さない。
シュバルツはそういうと操縦桿を前に倒した。
「攻撃まで、3、2、1。攻撃せよ!」
シュバルツの言葉に連れて空対地ミサイルであるAGMー79Gを10発放つ。
バシューーーーンバシューーーーンバシューーーーン
AGMー79Gは山脈へと向かう。
ドォォーーーーーーーーーーーン
ドォォーーーーーーーーーーーン
ドォォーーーーーーーーーーーン
「第2次攻撃をしろ。攻撃まで3、2、1。攻撃せよ!」
バシューーーーンバシューーーーンバシューーーーン
ドォォーーーーーーーーーーーン
ドォォーーーーーーーーーーーン
ドォォーーーーーーーーーーーン
山脈は跡形もなく無くなり、消し飛んでいた。
「撃破か……情報は得られないが1つの基地を破壊したとなれば、背広組も納得するだろう。」
ゴォォーーーーーーーーーーーッ
「空中給油機による給油後、シュメール王国の王都付近を威力偵察する予定だ。付いてこいよ?」
『『『『『『了解!』』』』』』
ゴォォーーーーーーーーーーーッ
第355飛行大隊は上空に待機する8機の大型空中給油機のKCー46Dに向かう。
『こちら、第23補給部隊。サーキット1だ。無人飛行に設定する。』
KCー46Dから通信が入ったと思えば、Suー57Nの無人飛行モードが起動する。
ガコン
第355飛行大隊は一旦休憩を取るのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同時刻 地球連邦国 ジュネーブ 大統領官邸
「ふぅ、つくづくこの世界に来てよかったと思うな。」
クリーンはホログラムに映っている大統領補佐官に言う。
『ええ、人口削減計画。罪の無い人々を殺すのはいささか、悔やまれますからね。』
「この世界は地球の6倍。オマケに、技術レベルも我々と同程度かそれ以下だ。魔法という物理法則に反するモノもあるが、それ程気にする事はないだろう。」
人口削減計画。これは、現在79億人である地球は増えすぎた人口を減らす案を提示されていた。
それは、ワクチンの形をした生物兵器だ。
WHOもそれに同意し、2023年から行おうとしていたが、間一髪で地球連邦国は転移したのであった。
人口削減計画は一理ある。資源は有限。これからさらに増えるであろう人口には対応できない。
だが、罪の無い人々を殺すのは罪悪感が残る。
その為、クリーン達は先送りに先送りにしてきた。
そして、そろそろ誤魔化せなくなった時に転移したのだ。
クリーンは無宗教であるがこの時は神に感謝した。
「サーヴァント作戦は順調か?」
『ええ、順調に事は進んでいます。』
「そうか、ならいいさ。」
クリーンはそういうと通信を切り、目を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同時刻 アジア州 重慶 国立宇宙科学研究所 第1発射レーン
ゴゴゴゴォォーーーーーーーーッ
白煙が発射レーンを包む。
ボォォォーーーーーーーーーーーッ
ここでは、消失した攻撃人工衛星や大規模宇宙ステーションの打ち上げを行っていた。
旧中国では広い国土を持っており、森林地帯等の未開地が多かった為、地球連邦国は統一後に大規模な打ち上げ基地と宇宙科学研究所を建設した。
その為、何時でも人工衛星を打ち上げることが出来るのだ。
「打ち上げ完了。まもなく、成層圏に到達。」
ゴォォーーーーーーーーーーーッ
攻撃人工衛星を載せた宇宙ロケットは成層圏に到達する。
「成層圏に到達。ブーストを起動。」
ゴゴゴォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーッ
「分離、衛星は安定して軌道上を飛行。これより、次なる衛星を打ち上げる。」
これをきっかけに1週間かけて重慶だけでなく、世界中の打ち上げ基地から何千という人工衛星が打ち上げられた。
これにより、この惑星の監視体制が完璧に構築されたのだった。