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地球連邦国転移物語  作者: ZERO 零
序章
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第40話 『和泉』

20XY年 9月30日 地球連邦国 太平洋上



ここは、太平洋の中でも特に波が荒いと言われる海域である。


そして、波だけでなく気流も荒い為、民間航空機も近寄らない魔の地域だ。


民間船舶、民間航空機が近寄らないこの地域では地球連邦国が極秘で『BW計画』に基づいて、超巨大人工島を建設し、超兵器を建造していた。


その人工島の名はBWMIー1と名付けられている。


人工島の形は見事な六角形で、露出している陸地では超兵器の建造はしておらず、航空隊が配備されているだけである。


超兵器の建造は埋め立てた地下で建造されており、高さ的に不十分であった場所は超大手重機メーカーのマイクロバートン社が開発した超大型掘削機の『ホルスト』を用いて、大量掘削を行ったのだった。


バチッバチチチチッバチッ


今日も休み無く、工事の音が地下に響き渡る。


カァンカァァァンカァンカァンカンカン


工事は工事用ロボットが行ない、人は指示役としてタブレット端末を持ちながら、指示を出していた。


「こいつはもうすぐ完成しそうだな…。」


タブレット端末で完成区域を確認しながら、ヘルメットをかぶった男は言う。


彼が見上げたのは黒い塗装で塗りたくられた超大型戦艦の姿であった。


その艦の名は『和泉』。


全長1600m、全幅480mと超兵器の名を欲しいままとしている。


この艦の1番の特徴は潜水機能である。


元々は半潜機能の予定であったが、その後の上層部の意向で完全潜水機能を付与することとなった。


潜水時にはバラストタンクを用いて、潜水することが可能で取り付けられている固定武器は基本的に防水である為、水中戦闘も可能である。


その為、形状は流線的で『大和』や『アイオワ』のようにゴツゴツしていなく、潜水能力を高める為の設計だとわかる。


主に水中戦闘を得意とし、その左舷右舷の艦首艦尾に2基ずつ高出力ポンプジェットエンジンが搭載している。本来ならば艦尾にスクリューを6基搭載予定であったが、超高出力ポンプジェットエンジンを4基搭載しており、中心に大型超高出力ポンプジェットエンジンを1基搭載している。


最高時速は100ノットで水上戦闘時に防水カバーを外し、高速離脱する為に搭載された2基の超高出力ジェットエンジンを併用すれば130ノットまで加速することが可能だ。


主機は核融合炉で莫大な電力を欲するエンジンに電力を補給している。


他にも主砲である120cm2連装レールガンが3基、副砲の64cm2連装レールガンを8基稼働させる為の電力と攻撃時のレーザー砲や対空レーザー砲の電力を賄っている。


『和泉』は超大型潜水戦艦『和泉』型の1番艦であり、2番間と3番艦は着工しており、艦の半分は完成している。


そして、1番艦である『和泉』は完成まであと1日であり、最終チェック項目をクリアすれば見事、試験進水場で進水を行う予定だ。


無論、試験進水場は人工島の地下である。


「こいつが完成すれば2番艦、3番艦と続く。その次は『空母航空機』の着工になるか…。」


多目的超兵器開発島であるこの人工島はフィフスス同盟圏に対抗する為、更なる軍備増強を図るのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


同時刻 大統領官邸



「もう、フィフスス同盟圏については公表してもいいのでは無いか?」


クリーンは頬杖を付きながら言う。


「何を言っているんだ。あと2年弱あるぞ?」


「もう、我が国を含む友好国家は全て我が国の手により、倉庫を表向きとした避難シェルターを建設している。我が国のシェルター普及率は200%強。地下鉄の駅や地下の軍の兵舎等は全て避難シェルターへ早変わりする。個人的空間は設置されている倉庫に即席セットで取ることが可能。もう十分だろう、緊急用の駅や兵舎も十分な避難が可能なのだ。避難シェルターとして建設されたシェルターはもっと強固であり、安全だろう。」


「そうかもしれないがな…。あと1年は必要だろう。」


クリーンの言葉に納得しつつも、まだ時では無いと釧路は目を細めながら言う。


「何故だ?」


「それは、幾らシェルターや軍備を増強していると言っても敵が未だハッキリしていないフィフスス同盟圏との戦いに多くの人が混乱するだろう。不安と恐怖が重なり、どうなるかわからない。もし、暴動等の被害を加えるようであれば、鎮圧は容易に可能だ。だが、それによって混乱していなかった他の人々も混乱に陥る可能性も否定できない。フィフスス同盟圏襲来まで1年までは経済活動を行わなければならない。公開したところで混乱が広がるだけだ。未だ『超兵器』の配備計画も終了していないじゃないか。」


「それは…確かに…あるかもしれないな…。」


クリーンは下を見ながら言う。


「嗚呼…。だからこそ、あと1年は待って欲しい。時がわかってくるよりも、時がわからずやってくる方がこちらにとってもやり易いからな。」


プシューッ


釧路はそういうとドアを開けて、去っていった。


「フィフスス同盟圏…。奴らの事を考えれば考える程、不安が巻き起こる…。」


クリーンは視線を窓の外に向けた。


彼は不安や心配があると直ぐに視線を窓の外の空に向ける癖がある。


しかし、その時に限って不安や心配を払拭する空模様が描かれることはなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


10月1日 BWMIー1 第3試験進水場



ザザザァァァァァァァッァァァァァーーーン


一瞬にして浸水が始まる。


試験進水場が海水で満たされ、潜水戦艦『和泉』は乗員を乗せておらず、無人で浸水を行っていた。



第3試験浸水場 制御室



「注水完了、浸水は成功。」


制御員の勢いの良い声が響く。


「これより、起動チェックを開始する。」


ゴウンゴウンゴウン


独特な起動音が響き渡る。


「機関始動、艦尾ポンプジェットエンジン起動。」


シュルルルルルルルン


5基のポンプジェットエンジンが正常に稼働する。


「艦尾エンジンの正常稼働を確認。」


「右舷左舷の艦首艦尾ポンプジェットエンジンの起動を開始する。」


シュシュシューーーーン


右舷左舷からの水流で推進力は相殺され、その場に留まる。


「正常稼働を確認。」


艦から発せられた水流が消滅し、水泡が無くなる。


「固定武器の稼働を開始する。」


120cm2連装レールガン3基が360度回転する。


ウィンウィンウィンウィン


続いて、64cm2連装レールガン8基が回転する。


「演習弾を撃ち込む。振動に備えよ。」


「発射まで3、2、1…。」


「撃てぇ!」


シュシューーーーーン


全門射撃により、音は小さいものの演習弾が試験進水場の壁で破裂する。


その破裂音で振動が制御室で響く。


ゴゥゥゥゥゥン


「最終試験完了、排水開始。」


ザザザァァァァァァァッ


次々と試験進水場の床から海水が排水される。


「排水完了、洗浄開始。」


サァァァァーーッ


霧のように海水を落とす洗浄水が艦を包む。


「洗浄完了、乗員を乗せた後に規定区域を航行させる。」



BWMIー1 付近海域



ザザザザァァァァァァァン


勢いよく、白く泡立った海水が持ち上げられる。


海面から現れたのは漆黒の配色がなされ、海水を滴り落としている『和泉』の姿だった。


「潜航開始。」


ズズゥゥゥゥーーーン


この言葉と同時に乗員1200名を載せた『和泉』は深く、暗く、寒い海へ艦を潜らせるのだった。





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