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地球連邦国転移物語  作者: ZERO 零
序章
34/42

第34話 撃破と絶望

20XY年 8月14日 地球連邦国 トロント 電波塔



電波塔が爆散し、簡易電波塔による臨時電波供給で市民に大きな影響は出ていないが、政府側としては焦っていた。


調査には警察のみならず軍まで関わり、政府直轄の部隊まで関わっている。


それを記者達が見逃す訳がなかった。


『トロント電波塔で爆発。事故か事件か』


という見出しで電子記事やTVで放送されていた。


『みなとみらい宇宙基地宇宙エレベーターで爆発。軍が出動』


と、みなとみらい宇宙基地で起こった事もニュースにされていた。


「こりゃ、たまげたなぁ…。」


トロントで有名な温厚警部補であるシャーマン・スクリーン警部補は根本からポッキリと折れ、広場に横たわっていた電波塔の残骸を見て、顎をさする。


「申し訳ありませんがここからは軍の管轄ですので。」


突如、シャーマンの後ろから現れた黒ずくめのスーツ姿の男が現れた。


「警察じゃ、対処できないと?」


「ええ、対処不可能です。早急に署に戻ってもらいたい。」


黒ずくめのスーツ姿の男はそういうと去っていった。


「まぁ、しょうがないな。」


「警部補ッいいんですか…!?」


部下であるコールド・アシャープ刑事は訴える。


「これは、警察じゃあ対処できないとハッキリ言われたからな。しかも、今の男は軍人だ。手練れの。」


「そうですか?普通に見えましたけど。」


「おそらく、隠密機動軍であろう。」


コールドは聞いたことのない言葉に首を傾げる。


「そうなるのも無理はない。あくまで都市伝説として語られているが隠密機動軍とは非公表の軍事組織だ。政府直轄の部隊であらゆる任務も遂行するというマルチな奴らだ。」


「でも、都市伝説じゃないですか。」


「こちとら、伊達に警察やってる訳じゃない。今年で34年、入ってくる情報や勘も一般人とは違うものでね。」


シャーマンは空を見上げながら言う。


「で、その隠密機動軍があの人ってことですか?」


「そうだ。滲み出る貫禄、鍛え上げられた体、無駄のない動き。隠しても隠しきれないさ。奴らは人間じゃない。」


「へぇ、僕には何もわかりませんでした…。」


コールドは俯く。


「当たり前だ。君は入って1年。まだ、わからないさ。」


「もう、戻った方がいいんじゃないですか?」


コールドは黒ずくめのスーツの男を横目で見ながら言う。


「嗚呼、そうだな。そろそろ帰らなくては。」


シャーマン達はパトカーで署まで戻るのだった。



トロント上空



『ここまで来れば安心か。』


白いローブを着た男は飛行魔法により、夜のトロント上空を悠々と飛行していた。


シューーーーーーッ


『ん?何だ…うぐっ!』


男が爆発に包まれる。


シューーッシューーーーーーッ


男は咄嗟にバリアを起動する。


『何だ何だ…?』


ドォーーンドォォーーンドォーーン


バリアは男の半径6mまで適応され、爆発の瞬間にピンク色を発光させ、爆発する。



「全弾命中。敵に効果無し。」


男の2km先に6機の航空機が飛行していた。


特殊な台形ノズルを装備する2基のエンジン、機種部分から緩やかな曲線を描いて広がる浅めの後退角の主翼。機体段階から極限の軽量化がなされており、主翼は層流制御翼を用いている。


その機の名はFー64 ナイトランサーだった。


対空特殊攻撃特化のC型で編成されたトロント守備隊第4航空班は飛行魔法により、大規模攻撃を行うであろうフィフスス同盟圏の襲来に備えた13cmレールガンを上下に2門搭載している。


「全機、攻撃をレールガンに移行。」


班長であるチャート・トルース2等空佐は静かに言う。


ゴォォォーーーーッ


男は第4航空班が自らの命を奪う死神だとはまだ知らなかった。


『ふぅ、何処からの攻撃なのか…狼煙だとはいえ、他の奴らよりは能力は高いのだが…。』


男はゆっくりと辺りを見回す。


ギィィィィィンバチチチィィッ


突如、バリアが聞いたことない異音を発し、バリアが歪む。


バチチチィィッ


『ギャッ!うごぉ…ッ!』


バリアが破られ、鋭い何かが男の胴体が破裂し、緑色の鮮血が噴き出させる。


『グハッ…ハァハァ…。』


男は超強力再生魔法で幾つもの穴が開いている胴体を修復する。


シュシュシューーーン


『クソッ…!ソニックウェーブ!』


男は全力を出し、超強力の衝撃波を360度放つ。


その衝撃波は第4航空班に伝わる。


『命中、敵は負傷。ん…?回避ィ!』


チャートは嫌な予感がしたのか叫んだ。


ビービービービー


警告音が機内に鳴り響く。


「クソ!失速する…ッ!」


ビービービービー


機体は風に巻き込まれた紙飛行機のように舞い落ちる。


「何とか…持ち堪えろォ!」


チャートを含む第4航空班はその高い技術で衝撃波による失速を抜け出し、攻撃を再開する。


「撃てぇッ!!!」


シュシュシューーーン


一斉に12発の徹甲弾が発射される。


無論、誘導機器も搭載されていた。



『ソニックウェーブを抜け出すとは…。く…来るッ!』


男は高速で発射された徹甲弾の斜線上を避ける。


だが、誘導機器が搭載されていた事をチャートは知らなかった。


ドォォォォォォォーーーン


男の体が爆散し、血と肉が混ざり合う。


肉の塊となった男の体は徹甲弾による高速エネルギーにより、焼ける。


男の肉塊は白い煙を出し、海面へ落ちて行く。


唯一、原型を留めていたのは残ったのは苦悶の表情を浮かべ、顔の半分が焼失し、脳漿が飛び散る男の頭部だった。


「敵、撃破完了。トロントの平和は守られた。」


チャートはそう言うと反転し、後方からは部下機が追随していった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


同時刻 みなとみらい宇宙基地 



ダダダダダダダダダッダダダダッ


「ぎっ…うぐっ…ッ!」


「ごへっ…ッ!」


紺のローブを着た男は射撃していた地球連邦兵を切り刻む。


体液と血液が噴き出し、細切れとなった人体が散乱する。


ドチャッ


「し、死ねぇッ!!」


何処からともなく現れた地球連邦兵は13cmレールガンを両手で持ち、トリガーを引く。


連射された4発の徹甲弾は男のバリアを貫く。


ドォォォォォォォーーーン


男が徹甲弾の中に搭載されている自動起爆装置により、爆発する。


シューーーーーーッ


白い煙を吐き出し、黒焦げとなった男は膝から崩れ落ちる。


地球連邦兵はその姿に安堵し、安心しきった表情を浮かべる。


だが、その程度でやられる程、フィフスス同盟圏は甘くなかった。


男は何の前触れもなく、アスファルトを踵で砕き、莫大なエネルギーを地球連邦兵に叩き込む。


ドォォォォォォォーーーン


爆発が地球連邦兵を包む。


粉塵が晴れた後に残ったのは焼け焦げた地球連邦兵の肉塊だった。


ババババババババ


攻撃ヘリであるAHー68 コルセットが8機飛来する。


ガガガガガガガッガガガガガガガッ


一斉に50mm機関砲を撃ち込む。


バリアを展開した男は難なく、50mm機関砲弾が弾け、爆発がバリアを包む姿を詰まらなそうに見ていた。


シュンシュンシュシュシューーン


機関砲が効かない為、ハイドラ96ロケット弾を次々と攻撃ヘリは撃ち込み始める。


ドォォォォォォォォォーーーン


巨大な爆発が男を包み込む。


しかし、そこにいたのは跡形もなくなった男ではなく、無傷のままである男の姿であった。


男はバリアを解除し、空気を斬る。


シュンッ


小さく、空気を斬る音が聞こえたと思えば、攻撃ヘリが真っ二つに斬られ、白い煙を吐き出しながら墜落する。


攻撃ヘリが墜落したところを見届けた男は無言で宇宙エレベーターに向かい、走り出した。


男の背後には原型を留めておらず、赤い液体が滲み出た肉塊と黒く染まり、切り刻まれた鉄塊が散乱していた。




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