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地球連邦国転移物語  作者: ZERO 零
序章
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第29話 復活する男

20XY年 8月9日 地球連邦国 ジュネーヴ 大統領官邸



「フィフスス同盟圏…やはり、強大だったか…ッ!」


クリーンは唇を噛み締める。


「当たり前です。フィフスス同盟圏の力は我が国と同等かそれ以上とキャロス殿が仰っていましたからね。」


釧路は相変わらず、手元にあるタブレットを操作しながら言う。


「今更だが、敬語は辞めてくれ。」


「何故です?貴方の方が立場は上です。敬語を使わないわけがありませんからね。」


「そう言っているが、たまに、敬語は使ってない時があるぞ?」


「えっ…マジか…ッ。」


釧路はタブレットからクリーンへ焦点を合わせる。


「というか、今、敬語じゃないじゃん。」


「あ……もういいや…おい、クリーンッ!」


「お、なんだ。クシロ。」


クリーンは嬉しそうに言う。


「なんでもない。」


釧路はそういうと、部屋を出ていった。


「ククク…こんな形で自然に会話をしたのは何年ぶりか…。」


クリーンは1人残った部屋で、ニコニコと満面の笑みで雑務をこなすのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


同時刻 東京 新宿特別区 新宿特別区警察庁



ここは、東京の中でも最も栄華を誇っている区だ。


その中で一際目立つ、新宿特別区の行政を担う新宿特別区庁の隣に位置する新宿特別区警察庁だ。


高さ1200mと尋常ではない高さの高層建築物では今日も様々な事件に対応していた。


「はぁ、またサイバー犯罪か…。」


新宿特別区警察庁…通称 新宿特警に創設されているサイバー犯罪対策課…通称 第9課の課長である松谷 雄也巡査部長は、頭を抱えた。


彼は、元地球連邦国軍のサイバー軍で活躍していた名ハッカーだ。


その経歴を生かし、3年間、この部署で勤務してきたのだった。


「はぁ、どうしたものか。」


そう言いながらもパソコンの電子キーボードを高速でタップしていく。


松谷が悩むのにも理由がある。


近年、地球連邦国では転移により、潜伏していたテロリスト達が混乱のゴタゴタでサイバー攻撃をしていたのだ。


だが、既に1年も経ち、以前よりは少なくなってきたものの、各都市の警察庁に対するサイバー攻撃や重要行政施設への攻撃等も行われていたのだ。


「ふぅ、解析完了と…保存に…破壊と…後は逮捕屋に任せますか…。」


松谷はそういうと、眼球補正眼鏡を外す。


松谷が掛けていたのは眼球補正眼鏡と言う、ハッカーやよく、ゲーム等を用いる人達にとって必需品である眼鏡だ。


彼等は目を素早く動かし、近くのものを見るため、近眼のリスクが上がる。


その為、彼らにとって命である目を守る為の眼鏡なのだ。


「松谷ッ!」


松谷を呼びながら、走り出してきたのは捜査第1課の葛元 鍾会警部補だった。


幼なじみである彼は松谷がサイバー軍に入隊した時、休みの日を削って祝いに来てくれた1人だ。


「どうした葛元。何かあったのか?」


強行犯を担当している第1課とは普段、会うことは少ない。


「さっきサイバー攻撃があったよな?」


「嗚呼、あったが何かあるのか?」


「それが、関係あるんだよ。あのサイバー攻撃は『宇宙人』によるものらしいんだよ。」


松谷は葛元の言葉を聞くと、パソコンに視線を落とした。


「ちょッ!無視すんなて!」


「結論は?」


「君にサイバー軍への復帰を頼みたくてな。」


葛元とは違う声が響く。


「あ、あんたはッ!」


松谷は突然現れた男を見て、驚愕する。


男の名はマーロン・アドラティス少将。


サイバー軍最優秀部隊である第1サイバー小隊の小隊長だ。


松谷も以前、所属しており、マーロンと肩を並べる程の能力を持ち合われており、マーロンを驚かせた。


「マツタニよ。サイバー軍に復帰しろ。試験は必要無い。直ちに来い。長い戦いになるからな。」


マーロンはそういうと松谷の手を引く。


「頑張れよッ松谷!」


葛元は声援を送る。


「嗚呼…頑張るよ…。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


2時間後 埼玉県 入間市 入間基地



統一前は自衛隊基地として利用されていた入間基地は今や地球連邦国軍統合アジア軍サイバー軍総本部入間基地という長ったらしい名前になっている。


カッカッカッ


マーロンと松谷は護送車に新宿特警から護送され、入間基地内を歩いていた。


「私が復帰してからもう3年だ。前線に何ぞ行けないさ。」


松谷は被っている帽子を取りながら言う。


「いいや、マツタニよ。我々はマツタニの仕事ぶりを見てきた。」


「…?…やはりか…軍のサーバーから監視されていたのはこの為か?」


「嗚呼、私がプログラムした最高のハッキングだったんだがな。発見されてしまうとは。」


マーロンはわざとらしく頭を抱える。


「まぁ、いいだろう。これは、どちらにせよ強制的にやらなくてはいけない問題だからな。」


「問題とは…?」


「フィフスス同盟圏は知っているな?」


マーロンは先程とは打って変わり、真剣な顔つきをする。


「嗚呼、これを軍や政府が隠していると言うことも知っている。」


「お前には頭が下がるよ。あの防衛プログラムを突破するとはな…。」


マーロンは完敗だと言わんばかりに手を広げる。


「で?フィフスス同盟圏によるサイバー攻撃とは言わんよな?」


松谷はマーロンを横目に見ながら言う。


「ご名答、そう言う事だ。奴らは我々のような文明があることを知っているらしい。」


そう喋っていると目の前が真っ暗になった。


ガゴン


「…!?」


「心配する事は無い。エレベーターだ。」


「3年もいないと色々変わっているな。」


松谷は超高速エレベーターでしか味わえない浮遊感を感じる。


ウィーーーーン


〈統合アジア軍サイバー軍司令部へ到着〉


マーロンと松谷は司令部へ入る。


そこには、衝撃の光景が広がっていた。


『第4プロテクトの突破を確認。』


「おい!何をやってるッ!」


「こっちだってやってるんだよ!」


『第5プロテクトの突破を確認。』


必死に手を動かすサイバー小隊、怒号が飛び交い、絶望を知らせるアナウンスが司令部を包む。


「なんだここは?」


松谷は司令部の統制の無さに呆れていた。


「私がやっても変わらない。彼等だけではサイバー攻撃を押し返せない。」


「しょうがないな。ちょっとお前、パソコン貸せ。」


松谷はそういうと近くにいた隊員のパソコンを強引に奪う。


「な、なんなんですか貴方!?」


パソコンを奪われた隊員は奪い返そうとするが、松谷の手捌きを見て、口をアングリと開ける。


タッタッタッタッタッタッ


『第5プロテクトの奪取に成功。』


『第4プロテクトの奪取に成功。』


『第3プロテクトの奪取に成功。』


『第2プロテクトの奪取に成功。』


『第1プロテクトの奪取に成功。』


松谷の登場と見知らぬ者がサクサクと自分たちが苦戦していたサイバー攻撃を難なく、跳ね除ける事に困惑していた。


タッタッタッタッタッタッ


『敵サイバー攻撃の停止を確認。』


巨大なホログラムモニターが赤色から緑色に変わる。


「…マーロン少将、この方は誰でしょうか?」


パソコンを奪われた隊員がマーロンに聞く。


「彼の名は松谷 雄也。以前、私よりも優秀だった人物だ。」


マーロンの言葉に司令部中がざわめく。


『マーロン君よ。マツタニ君を呼び出してくれて感謝する。さぁ、マツタニ君。お帰りなさい。』


司令であるジャッカー・ゴォール大将はマイクで呼びかける。


「きしょッ。」


ジャッカーはただいまという言葉をもとめていたのだが、まさかのきしょいという暴言で固まる。


「お、おい…。きしょいは駄目だぞ…?」


初めて会った人から見た松谷の印象は司令に暴言を吐く荒くれ者であった。



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