第28話 決着
ダルケル歴 461年 8月6日 シーズライン海
「島風」 CIC
「さぁ、どのような結果を我々に見せてくれるのか?」
河原は額から、汗を垂らしながら言う。
23cmレールガンから発射された23cmY弾は、直線状に影の艦隊へ向かう。
影の艦隊
シューーーーーーーーーッ
一度はバリアを突き破られた影の艦隊は、さらに、バリア濃度を高くし、硬度を高くしていた。
その為、1発しか放たれていない砲弾など擦り傷にしかならないと思っていた。
バキキキキキィィィィッ
Y弾が影の艦隊が展開するバリアに接触し、Y弾が保有する強力な運動エネルギーがバリアを破壊する。
ドドドドドドォォォォォォォォォン
「な、何が起きている…!?」
女は目を見開いている。
それもそうだ。
バリアに接触してから、海が爆ぜたのはたった0.2秒なのだから。
影の艦隊は残存艦6隻を残し、地球連邦国が開発した悪魔の砲弾により、轟沈したのだった。
「島風」 CIC
「よっしゃあッ!」
河原は盛大に拳を突き上げる。
他の軍人達と同調し、拳を突き上げる。
「「「ウォーーーッ!!」」」
『…さっきまで、カードゲームをやっていたとは思えない程の成果だな…。」
ポートがホログラムで投影される。
「まぁ、そうですね。これ程自由であれど、実力は普通以上ですよ。」
河原の言う通り、「島風」の乗組員は皆、優秀だ。
遊ぶときには遊ぶが(戦闘中に遊ぶのは良くはないのだが)、状況判断や戦闘、様々な場面で彼等は活躍するのだ。
「島風」は地球連邦海軍の中でも一目置かれる存在となっているのだ。
そして、最先端技術研究所もそこに目を付け、ポートにも知らせずに「島風」に任せたのだった。
『はぁ、貴様らが優秀なのは見てわかる。だが、最近、カードゲームは辞めてくれ…それだけだ。』
ポートの言葉でCIC内が凍りつく。
軍人達は目を見開きながら、硬直している。
しまいには、泣き出す軍人や気絶する軍人、吐血する軍人、泡を吹く軍人、精神安定剤を飲む軍人、白目を剥く軍人も居る。
『えっ…ちょっ…どう言う事…?』
ポートは困惑している。
「司令ッ!このカオスな状況をどうやって戻すんですかッ!!!」
河原は叫ぶと同時に白目を剥き、倒れる。
『河原ッ!おいッ!』
「こ……これも…司令が…招いた…事…ですよ……。」
一人の下士官が倒れながら言う。
『カードゲームの廃止を辞めれば良いのか…?』
ポートがそういうと、CIC内の軍人達が目覚める。
「ええ、カードゲームの廃止などという鬼畜な事を命じた司令はカードゲームの廃止を即刻停止しなければいけません。未来永劫ッ!」
『あ………嗚呼、わかった。カードゲームの廃止は…辞める…。』
ポートの言葉で軍人達は立ち上がり、隠していたカード類を出し始め、カードゲームに興じる。
『まぁ…いいか…。』
ポートは正直、彼等の執念に呆れていた。
影の艦隊
「全艦、バリア展開を中止ッ各艦攻撃にエネルギーを割けッ!!」
女は焦っていた。
予想以上の被害、予想以上の戦闘能力を保有する惑星艦隊。
いくら、突貫工事で建造された海上艦と言えど、能力は凄まじい筈なのだから。
「惑星艦隊を壊滅させろッ!」
ギュオオオオオオン
何本もの赤い光の筋が第3連合艦隊を襲う。
ドォォォォォォォーーーン
幾つもの水柱が第3連合艦隊を巻き込む。
「大和」 CIC
「影の艦隊ッ艦隊を包み込んでいた高エネルギーが消失。攻撃を開始しましたッ!」
レーダー士は叫ぶ。
「徹甲弾を装填後、直ちに、攻撃せよ。」
ポートは静かに言った。
核融合巡洋艦 「インディアナポリス」 CIC
「Y弾を装填後、直ちに攻撃だッ!」
「島風」により、大衆の目に晒されたY弾はもう隠す事は無い為、艦長であるバール・アクティブ少将は、眠い目を擦りながら言う。
「装填完了、いつでも撃てますッ!」
「撃てぇッ!!」
シュシューーーーーーーン
「インディアナポリス」に搭載されている34cm単装レールガンが咆哮を上げる。
Y弾は同級艦や「島風」からも発射される。
「大和」 CIC
「56cmY弾は未だ開発中か…羨ましいな。」
ポートは玩具を欲しがる子供ようだ。
「 Y弾が配備されれば、より一層、軍の強化ぎ出来ますね。」
影の艦隊
ドォォォォォォォーーーンドォォォーーーン
海面が消滅した。
残存した艦艇は上空を舞う。
「な、な…どうなっている…ッ!?」
女は転倒により、怪我をした足を押さえながら、目を見開いている。
「し、司令ッ!撤退をッ!」
副司令の男が飛び込んでくる。
「もう、無理だ。祈っていろ。我々はとんでもない奴らに手を出してしまったようだ。」
ザバァァァァァァァーーン
上空を舞った艦艇達が次々と海面に衝突し、海中に沈んで行く。
「大和」 CIC
「「「「ウォォォォーーーーーッ!」」」」
歓声がCIC内を包む。
「やったぞッ!やったぁぁッ!」
ポートは軍人達とハイタッチをする。
「島風」 CIC
「おりゃッ!UNOッ!」
「うわぁぁッ!出し抜かれたぁッ!」
一方、「島風」では、UNOに熱中する余り、戦勝報告すら聞き入れずに興じていた。
彼等らしいと言ったら、彼等らしいだろう。
この戦闘で第3連合艦隊は12隻を残し、海の底へと消えていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同時刻 地球連邦国 ジュネーヴ 大統領官邸
「!?本当か!影の艦隊をやったのか!?」
クリーンは釧路の報告に目を見開いている。
「ええ、やったそうです。」
釧路は淡々と答える。
「まだ、安心するの早いですよ。フィフスス同盟圏の復活までは後一年しかないのですから。」
カウントダウンは刻一刻と進んでいたのだ。