第23話 龍なる国家
20XX年 6月4日 地球連邦国 ジュネーブ 大統領官邸 危機管理センター
ここでは、前回に引き続き、日を跨いだ後に再び、会議が行われていた。
「ハンディー帝国はもう第3文明圏の栄主とはなり得ませんね。」
釧路は、コーヒーを啜りながら言う。
「嗚呼、再建には数年かかるだろう。フィフスス同盟圏の復活に対応は出来るのか……。」
ピコン
突然、謎の機械音が鳴り響く。
「ん?なんだろうか?」
釧路は通知を確認する。
「こ、これは!?」
「釧路、どうしたのだ?」
クリーンは釧路の業務用スマホを覗き見る。
「ま、まさか!?」
クリーンも驚きの声を上げる。
「どうしたんだ?」
サーティエスは、紅茶を飲みながら言う。
「こちらをご覧下さい。」
ヴォン
釧路は1つの航空写真を投影する。
「し、新国家!?」
「ええ、新国家であると言えるでしょう。ですが、新国家というか……国家の形態で存在しているのか……?」
釧路はそういうと、もう1つの拡大された鮮明な航空写真を投影する。
「龍……?焔龍じゃないか!? 」
サーティエスは目を見開いている。
「ええ、ここには、焔龍の他、新種の龍等が存在しており、人型生命体は存在していないことが明らかとなっています。もしかしたら、国家の形態……それ程の知能を持ち合わせている種族が統一し、建国していると考えられることが出来ます。ですが、ハンディー帝国を侵攻している焔龍がごまんといる為、警戒をしなければならない為、従来の強制上陸作戦では対応が難しいと思われます。」
「そうなれば、領海や領空という概念を持ち合わせているとは限らないが、領海、領空侵犯を犯して万が一、撃墜や撃沈されたらどうするのか?」
「そうならない為に派遣は全て無人航空機や無人艦艇を用います。」
「そうか……だが、今までは言語が同じであったが、龍は人型生命体であるタイプもいる。だが、言語が通じることすら怪しい。果たして、無線を用いても通信が可能なのか?」
「現時点では不明です。もし、撃墜や撃沈をされたなら、全面戦争でしょう。」
釧路は淡々と答える。
「新種の龍も居るのだろう。宇宙兵器で対応を責められる可能性も否定出来ないな。」
「ええ、仕方が無いでしょう。その時はその時ですから。」
「どちらにしろ、接触を図らなければいけないことは確かだ。」
クリーンは背もたれに身を任せながら言う。
「直ちに、接触しろ!もしかしたら、ハンディー帝国を襲う焔龍と関係があるかもしれないからな。一か八だ!」
その後、サーティエスは軍に要請を打診し、無人艦隊を派遣するのだった。
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マーカス歴 2423年 6月4日 マルフォシス帝国 帝都 帝王城
「……何がが起きている。」
眠りから覚めたマルフォシス帝国の帝王であるパーソナル・アールは、何かがいつもと違うことに気が付く。
彼は、パッと見は人であるが、よくよく見ると、龍のように鋭い牙、腕や足には鱗が付いている。
カールは全神経を働かせて、この国が違う世界へ転移したことに気付く。
「転移……父上から聞いた事が具現化している……ッ!」
カールは7900年前に死去した父親であるパーソナル・ハルは、生前に息子であるカールに教えたパーソナルの父にあたるパーソナル・アーマーはこの国は約3万5000年前に別の世界から転移したという話を父親から聞き、ハルに教えた。
そして、ハルは、ハルの息子であるアールにも教えていたのだった。
〔メールファウスよ、軍を動かせ。周辺を探索させるのだ。〕
アールは念をはたらかせ、補佐官であるメールファウス・アキシェンドに伝える。
〘承知しました、帝王閣下。直ちに、軍による探索を開始します。〙
念により、メールファウスから返答が帰ってくる。
「さぁ、どんな世界なのだろうか。」
パーソナルは胸を躍らせた。
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同時刻 太平洋 第1、2、3、4、5無人艦隊
ザァァァァーーーーーーッ
太平洋を縦横無尽に航行していたのは地球連邦国海軍に所属する第1無人艦隊とその他、第2、3、4、5無人艦隊だ。
無人艦隊群は、有人艦隊とは違う静粛性でスムーズに航空機を上げる。
原子力空母 「キャスチャス」 甲板
次々と無人全翼機であるQF-87 シャルロットが電磁カタパルトにより、離陸していく。
ゴォォォォォーーーーーーーッ
その他、原子力空母から離陸した総勢120機のQF-87は龍の住むマルフォシス帝国へ向かう。
同海域 マルフォシス帝国軍 第1飛行隊
マルフォシス帝国の精鋭と言える第1飛行隊は人型状態と異なり、完全な戦闘状態となり、姿は龍と変身していた。
〔何かが接近してくるな。気を付けろ。〕
第1飛行隊長であるノース・リーディン少将は自慢の蒼色に輝く翼をはためかせながら言った。
〘我々に接触するつもりでは?〙
部下から思わぬ返答が来る。
〔何を言っているのだ。それは有り得ない。我々は擬態状態なのだから。〕
そう、第1飛行隊は擬態状態。光学迷彩のことである。
だが、光学迷彩を纏った相手すらを見分ける高性能なサーモグラフィーや赤外線の前では龍の擬態状態には無力であったのだった事をまだ、彼等は知らなかった。
ゴォォォォォーーーーーーーッ
爆音とともに、頭に無機質な声が響く。
『コチラハ、地球連邦国海軍デアル。繰リ返ス……。』
「なんなんだ?こいつらは?」
のっぺりとした外見に菱形の形状をしている謎の飛行物体が何十機も接近。いくら、数々の戦争に加担してきた第1飛行隊でも経験したことの無い事態だった。
〔貴様ら、ここは我々、マルフォシス帝国の領空だ。領空侵犯をこれ以上続けるのでは、撃墜するぞ?〕
リーディンは、凄んで言う。
『了解シタ。我々ノ領空侵犯ハ、致シ方無イ。我々ハ、貴国ト接触スル為二来タノダ。数十分後二、有人機ガ向カウ。』
無機質な声はそういうとプッツリと聞こえなくなった。
こうして、第1飛行隊は外交官の搭乗したSB-1と接触し、マルフォシス帝国とは国交を締結した。
その後、マルフォシス帝国は初接触した相手が人族であったこと、そして、焔龍が猛威を振るっている事に驚愕するのだった。