第20話 地球連邦国の影響
ダルケル歴 460年 5月2日 ピューレサイロ王国 王都
この国は第3文明圏の中で最も地球連邦国の影響を受けていると言われている。
その栄華は見張るものがあり、第3文明圏の中で憧れの的であった。
その姿も地球連邦国の介入により、変わり果てていた。
聳え立つ500m級の高層ビル群、石畳の道路はアスファルトに。
王都は地球連邦国により、更なる発展を遂げていた。
「すげぇなぁ……ここは……。」
1人の田舎出身の男が高層ビル群を見て、驚愕する。
「おっ!これを見るのも初めてかい?」
横から眼鏡をかけた1人の男が現れた。
「ええ、今日初めてで……。」
「驚くのも無理はない。俺もこれを見た時には驚愕したもんさ。」
男は上を見上げながら言う。
「キャアアアアッ!」
女性の悲鳴が聞こえる。
「な、なんだ!?」
女性の悲鳴の方を向くと、1人の男が女性を突き飛ばし、荷物を奪い、走っていた。
「や、やばいんじゃないか!?」
「大丈夫さ。」
眼鏡をかけた男は安心していた。
ギュイイイイイイイーーン
「あれだよ。」
眼鏡をかけた男は指を差した。
男が指を差したのは、高速で犯人を追っている緑を基調としたドローンだった。
そして、ドローンは下部に取り付けられているテーザー銃を起動し、発射する。
バチィィィッ
犯人を電撃が襲う。
「うわぁッ!」
そのスムーズな犯人への対応に周囲の人々は時折、その様子を横目で見ながら通り過ぎる。
ドローンが数分間滞空していると、緑を基調とした王都警察が犯人を取り押さえる。
「確保!」
「こちら、王都警察第4丁目交番。ひったくり犯を確保。繰り返す、ひったくり犯を確保……。」
王都警察は地球連邦国製の無線機を使い、報告をしている。
「なんだこりゃ……。」
「これが、1年くらいしたら田舎にも配備されるらしいぞ?このシステムとチキュウ連邦国主導の王都警察が設立されてから犯罪率は瞬く間に低下してるって噂だ。まぁ、最近犯罪は見かけないからねぇ。」
眼鏡をかけた男は腕を組みながら言う。
この国を含む第3文明圏は地球連邦国により、大きく転換期を迎えていた。
第4丁目交番
ここは、王都の第4丁目やほぼ全ての丁目に旧日本発の交番が設置されている。
先進的な設計とシステムで王都警察は、不慣れだが、地球連邦国から派遣された各地域の警察の教官達により、指導されていた。
「少し、結束バンドの締め方が甘いぞ?」
その教官の1人であるシャルル・マニュピールは、先程捕まえたひったくり犯を確保した際に結束バンドで両手を締める際に、締め方が甘いと低確率であるが、外れてしまう可能性があると指摘する。
「はい、すみません。」
王都警察官は素直に謝る。
「別に結束バンドの件は次から気を付ければ良い。だが、報告書はどういうことだ?」
シャルルが指を差したのは、不慣れな手つきでPCで打ち込んだ報告書だ。
「誤字が過ぎるぞ?こちらもダルケル文字に対応しているんだ。君達も対応してくれ。慣れれば、仕事のペースは紙を超えるからな。」
「はい……分かりました。」
すると、シャルルは休憩室へと姿を消す。
「くそっ!こんなもんやりにくいってのッ!」
叱られた王都警察官であるトゥルー・テフロンは、愚痴を漏らす。
「まぁ、そう言うな。教官も夜な夜な、勤務しているんだぞ?残業してな。」
トゥルーの愚痴に同僚であるミューフル・カールが応える。
「残業?休憩室で休んでるだけだろ。」
「いいや、俺は見たんだよ。教官は休憩室へ入ると見せ掛けて、報告書をずっと作ってるんだよ。」
「え?有り得ないだろ?」
「それが、有り得るんだよ。俺もシャルルと同じことを思ってな、尾行してたら、休憩室には入らずに仕事してたんだよ。それも、ずっと。」
ミューフルは声を大きくして言う。
「いいや、そんなことは無い!」
「じゃあ、見に行くか?」
「嗚呼、勿論だ。」
トゥルーとミューフルは足音を消して、休憩室へ向かう。
「開けるぞ?」
トゥルーはドアに手を伸ばす。
「いいぞ。」
プシュー
休憩室のドアが開く。
「い、居ない!?」
トゥルーは教官が居ないことに驚く。
「じゃあ、あそこへ行こう。」
ミューフルは倉庫を指差す。
「倉庫?有り得ない……そんなとこにいる筈が無い。」
「取り敢えず開けるぞ?」
ミューフルは倉庫のドアの開のタッチパネルを押す。
プシュー
「き、教官!?」
トゥルーはミューフルの言う通りだったことに驚愕する。
「お前ら、何をしているんだ?」
シャルルは倉庫の机にあるPC用デスクで報告書を作っていたのだ。
「教官は何をしているんですか?」
トゥルーは尋ねる。
「これはな、お前が誤字った報告書を直したり、お前らの報告書を纏めて、王都警察本部へ提出しているんだ。お前らもいずれはこの業務をこなさなければいけないからな。」
シャルルは淡々と答える。
「そ、そうなんですか……。では、仕事に取り掛かりますか!」
シャルルは教官の姿を見て、仕事の意欲が湧いてきたようだ。
「お、珍しいな。頑張れよ。」
シャルルはいつもに増して、王都警察官として輝いていた。
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20XX年 5月3日 地球連邦国 ジュネーブ 大統領官邸
「クシロ、第3文明圏の整備は進んでいるか?」
クリーンは頬杖を付きながら言う。
「ええ、順調です。やはり、警察機構や軍隊の増強の伸びが凄いですね。」
地球連邦国は準列強国であり、第3文明圏には準列強国や列強国が存在するが、在外基地を置いていなかった。
その為、地球連邦国が在外基地を建設。その後、貿易で地球連邦国の進んだ技術を取り込んだ第3文明圏は大きく成長。これを見た地球連邦国は更に支援を開始した。第3文明圏の各国は地球連邦国の傀儡国家と成り果ててしまっていたが。
そして、地球連邦国はフィフスス同盟圏の襲来を危惧し、第3文明圏の警察機構や軍隊に地球連邦国軍より、第1段階下の兵器の配備を行った。
すると、第3文明圏以外の文明圏を超えるパワーを保有するようになった地球連邦国主導の第3文明圏は、有り得ない程成長した。
第3文明圏は地球連邦国を主とした1つに纏まり、強大な1つの国家のようになっていたのだ。
「我々はフィフスス同盟圏を打倒しなければいけないからな。」
「ええ、何がなんでもやらなくてはいけないですからね。」
地球連邦国は着々とフィフスス同盟圏打倒へ向かっていたのだった。




