第19話 キャロスの再来
20XX年 5月23日 地球連邦国 マサチューセッツ州 ボストン基地 第4格納庫
ウィーーーーーーーーーン
格納庫の扉が開き、1機の航空機が出てくる。
前進翼の機体に3つのローター、その内の1つは大型の二重反転ローターとなっている。
後方には大型の2つの推進用二重反転プロペラを搭載している。
全長290m、全幅340mと超大型爆撃ヘリだ。
そして、この機は地球連邦国の初めてのフィフスス同盟圏の復活を受け、開発された機だ。
その機の名はYBー83 ファウストだ。
輸送ヘリバージョンもあるが、開発中だ。
特殊輸送車により引っ張られ、YBー83は駐機場へと向かう。
ウィィンウィィンウィンウィンウィーーン
YBー83のローターが勢い良く稼働する。
「システムに異常なし。安全に稼働中。」
ババババババババババババババ
YBー83は膨大な風圧を生み出しながら、離陸する。
ただし、プロペラはステルス化されている為、爆音は鳴り響かない。
ウィィンウィィンウィーン
推進用二重反転プロペラも稼働する。
ババババババババババババババ
YBー83はジェット攻撃機さながらの速度を出したながら、飛行する。
まだ、朝日が昇る中、YBー83は飛行する。
「システム正常。これより、第2試験を行う。」
『了解。』
ババババババババババババババ
YBー83は更に速度を上げる。
電子メーターは800km/hを超えている。
YBー83は、高度3000mを悠々と飛行する。
ババババババババババババババ
「酸素供給モードを起動、高度を更に上げる。」
ババババババババババババババ
YBー83は高速で飛行しながら、高度を更に上げていく。
電子高度計はついに、高度6000mを超えた。
「こりゃ、たまげたな……。」
パイロットは思わず、口に出してしまう。
現在、ヘリコプターの限界高度は5300mが限界で、パイロットの酸素供給モードを搭載していての高度である為、酸素供給モードを搭載していない場合では高度5000mが限界であるのだ。
「順調に高度を上昇中。燃料は残り、97%です。」
ババババババババババババババ
YBー83は更に上昇する。
「7000mを突破、7340mから一切高度が上がらず、限界高度に到達しました。」
『了解。帰投せよ。』
「了解。」
ババババババババババババババ
YBー83は誰にも発見される事無く、試験を終了したのだった。
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20XX年 5月25日 地球連邦国 ジュネーブ 大統領官邸 危機管理センター
「今から、私が話す事は口外禁止だ。」
クリーンの言葉に集められた大臣達は驚きを隠せない。
「そして、私が今話そう思ったが、彼女に話してもらおう。」
クリーンがそういうと突然、クリーンの横が閃光に包まれる。
「大統領ッ!」
「大丈夫だ。」
釧路が大臣達を静める。
『あらまぁ……随分と国の重鎮達が居るじゃない。』
「「「「「!?」」」」」
『そんなに驚かなくても……。』
大臣達は口をぱっくりと開けている。
「紹介しよう。彼女は精神テクノロジー文明人であるコール人だ。彼女の名はキャロスだ。」
「だ、大統領ッ!何を言っているのか分かりません!」
国防省大臣であるサーティエス・メルボルンは立ち上がり、クリーンに言う。
『その通りだよ。国防省大臣さんッ!』
キャロスはサーティエスの後ろにテレポートする。
「うわッ!?」
『キャハハハッ!その驚き様は面白いねぇ。』
「そして、基本的に肉眼では見えないが、カメラや鏡には映る。」
「そ、そうなのか……。」
『そうさ。魔法文明のカメラとかには映らないんだけどね。科学文明にはお手上げさ。』
キャロスはそういうと肩を落とす。
「それで、今回話したいのだフィフスス同盟圏についてだ。」
『多分、資料が表示されてると思うんだが?』
ヴォン
ホログラムで資料が表示される。
「こ、これは!?」
『覇権国家であるフィフスス同盟圏の復活さ。』
「はぁ……アンタが、大統領と補佐官を騙した野郎だとは分かったが、こんなに突拍子も無いこと言われるとねぇ?」
総務省大臣であるマルコス・アンディー眉間に皺を寄せる。
『そうか?フィフスス同盟圏は事実だぞ?おっと第23考歴隊なる部隊と第244化学防護部隊により、フィフスス同盟圏の事は知っている筈だが?』
「おいッ!サーティエスッ!報告されてないぞ?」
「それには訳がある。フィフスス同盟圏に関する調査資料はえげつない程に現実離れしている。他の遺跡等からもフィフスス同盟圏に関する資料が見つかった。彼等の技術レベルは非常に高い。我々と同じか高い。そのレベルだ。果たして柔軟な脳を持つ、大統領や補佐官には理解出来るが、頭の固い役人には理解できないと思ってな。」
「く……クソッ!」
マルコスは怒りたいが、図星だったところもある。
『仲がいいみたいね。ちなみに、私は大統領や補佐官には伝えたが、この技術力であれば、どっこいどっこいか負けるよ?』
大臣達はこの言葉にピリッとする。
誰も地球連邦国が最強だと疑わなかったからだ。
『そういうこと。レールガンや大規模破壊兵器を配備しなさい。核兵器や宇宙兵器を莫大な量配備しないとね。毒ガス兵器と必要よ。』
「核兵器だと!?何故だ……核兵器では無く、宇宙兵器で事足りるだろ。」
サーティスは立ち上がる。
『いずれ、宇宙兵器は撃墜される。核兵器を配備し、切り札として使え。固定式離島防衛レールガンや、高層ビル型レールガンや海底配備型レールガンの配備を進めなさい。アーセナルシップも必要となるわ。今まで以上に増産しなさい。フィフスス同盟圏との戦争は、世界戦争の中で上位のものになるだろう。原子力空母や原潜は沈められる。GDPの6%……いや、8%使わなければいけないわね。』
「GDP比の8%!?無理だッ!現在はGDP比の5%だッ!8%なんて……無理だッ!」
『まぁ……そう言わない事ね。ジャスト3年だから。』
キャロスはそういうと消えた。
「さ、3年ッ!?初耳だ……おいッ!」
クリーンも初耳だったようだ。
「はぁ……そういう事だ。始めなければな……。」
人類の存亡をかけた戦いはこうして始まったのだ。