第18話 発見
20XX年 4月19日 シュメール州 ケルトン辺境
カッカッカッ
第23考歴隊は順調に遺跡を進んでいた。
「凄い……ッ流石、古代高度文明だ。」
第23考歴隊の隊長であるピュール・サブリルはツタや雑草が生えている近未来的な壁にベタベタ触りながら興奮している。
「あれは……ダルケル文字か……?」
第23考歴副隊長のキャロ・ハイウェイは1番先にある扉のような物に書かれている文字を見る。
ピコン
キャロは言語翻訳アプリを起動し、タブレットで文字を読み込む。
ピコン
〈関係者以外立ち入り禁止〉
「立ち入り禁止か……Cー6で吹き飛ばせ。」
Cー6とは大ベストセラーとなったCー4爆弾の最新型である。
様々な環境でも使用可能な軍用プラスチック爆弾だ。
隊員がCー6をセットする。
ドォォォォォォーーーーーーーン
吹き飛ばしたと思った扉は黒焦げで湾曲している箇所も幾つかあったが、全く開いていない。
「Cー6でも対応不可能か……。」
「まだ幾つかあります。使ってみますか?」
キャロは4個のCー6を手に持つ。
「嗚呼、ここを突破しなくては何も進まないからな。」
キャロは「了解。」と言うと直ぐにCー6をセットした。
ドドドドドドドドドドォォォォーーーーーーン
「おおッ……。」
流石に4個のCー6には耐えられなかったようだ。
扉は見事に吹き飛んだ。
粉塵が辺りを包む。
ピッピッピッピッ
〈放射線濃度が基準値を超えます〉
「な!?放射線だと……?」
「全員防護マスクと防護スーツを着込めッ!」
第23考歴隊は護衛兵は防護マスクを、調査隊は防護マスクと防護スーツを着込む。
カッカッカッ
その先をまず、護衛兵である地球連邦国陸軍兵がXM8を構えて突入する。
カッカッカッ
その後を調査隊が続く。
「これは……ッ!」
そこにあったのは崩壊した原子炉の様な物だった。
「原子炉……?」
隊員の1人が呟く。
「しかし、放射能反応があるということは…。」
「これはやばいッ!」
ピュールは無線を取り出す。
「こちら、第23考歴隊ッ!崩壊した放射能の発生源と思われる建築物を発見!付近の閉鎖と更なる調査を求む!繰り返す……。」
ピュールは無線に必死に問いかける。
『ザ……ザザ……なんだと……!?了解した。直ちに付近の閉鎖と追加の調査隊と化学兵器対応部隊を派遣する!』
「これより、調査は一時終了ッ!化学兵器対応部隊の到着まで撤退するッ!」
第23考歴隊は足早に撤退したのだった。
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20XX年 4月20日 地球連邦国 ジュネーブ 大統領官邸
『……を発見したとの事です。』
ホログラムで陸軍司令官であるマサチュー・ルールは大統領官邸と通信を繋ぎ、例の原子炉事件を報告していた。
「放射能応用建築物か……これは、また難題だな……。」
(キャロスなる精神テクノロジー文明人であるコール人の話は現実味を帯びてきたか……。だがッ!まだそうとは限らないな。)
『そして、化学兵器対応部隊である第853科学防護部隊の援護による調査でダルケル文字でフィフスス同盟圏なる国家による物であったことが確認されました。その後、フィフスス同盟圏の調査を行うと約1300年前に覇権国家であったことが明らかになりました。』
マサチューの言葉にクリーンは目を見開く。
(くっ……コール人の事は信じたくはなかったのだが……いや、真実を織りまぜた嘘かもしれない……な……。)
『しかも、フィフスス同盟圏はコール人なる精神テクノロジー文明人と思われる意識生命体により、支配下にあった種族に武器を与え、壊滅まで追いやったと言うことが文献に記載されていました。』
(……クソッタレッ!なんで合ってるんだよッ!)
「そうか……初耳だな……。」
クリーンは心の中で叫んだ。
『ええ、明日に報告書を纏め、提出します。』
「分かった。私には用事がある。通信を切るぞ?」
『了解です。』
ブツン
「ふぅ……。」
クリーンはため息をついた。
『ね?ホントだったでしょ?』
「うわっ!アンタかッ!」
クリーンは盛大に椅子から転げ落ちる。
『キャハハハッ!凄い驚きねぇ……キャハッ!』
コール人はクリーンの姿に爆笑する。
「アンタの言う通りだったよ……。」
クリーンは肩を落とす。
「で、どうしてきたのだ?」
クリーンはコーヒーを啜りながら言う。
『今回もフィフスス同盟圏の話なんだけどさ、アンタらの軍事力じゃあフィフスス同盟圏には勝てないよ?』
「な!?勝てないだと……我々には宇宙兵器やレールガンがあるッ!」
クリーンはコーヒーカップを机に叩きつける。
『敵は人じゃないからね?簡単に言えば悪魔だから。』
「あ……悪魔……?」
『そうだよ?敵は悪魔。魔法も使う。バリアも使えるし。』
「ま……さか……宇宙兵器ですら効かないと……!?」
クリーンは目を見開く。
『いや、効かないわけが無いでしょ?だけど、効かない奴もいるよって事だけ。あと、1つ言うけどフィフスス同盟圏は戦闘機とか空中軍用艦……いや、宇宙軍用艦を用いるよ?』
サブリナは驚愕の言葉を口にする。
「おいおい……宇宙戦艦とか出てくるのかもしれないってことかよ……。」
『そうだよッ!』
「この前、軍事費を2%上げたばかりなのに……。こりゃ、政権変わるぞ?」
クリーンは椅子に寄りかかる。
『まぁ……頑張ってねんッ!』
サブリナはそういうと消えた。
「おいッ!待てッ……。」
執務室にはクリーンただ1人が残った。
「はぁ……面倒な事になりそうだな……。」
クリーンは机に突っ伏した。