第17話 新たな脅威
20XX年 4月29日 地球連邦国 シュメール州 ケルトン辺境
バババババババババババババ
けたたましいローター音が一帯を包み込む。
強大な風圧を撒き散らしながら着陸したのは9機のMiー26Pだ。
ここは、この惑星の歴史や遺跡が多数残っている場所だ。
シュメール王国は以前より、ケルトン辺境の調査をしていたが、敗戦後に地球連邦国がその後釜についたのだ。
カッカッカッ
強大な風圧に髪を押さえながら現れたのは、シュメール州遺跡調査隊に任命されている考古学や歴史学の専門家や元教授等様々なジャンルの人を集めた地球連邦国総合軍第23考古学・歴史学専門調査隊、通称……第23考歴隊の隊長であるピュール・サブリルだ。
「隊長、いよいよですね。」
こう言うのは、第23考歴副隊長のキャロ・ハイウェイだ。
「嗚呼、何としても見つけていくぞッ!」
第23考歴隊はケルトン遺跡を調査する為、準備するのだった。
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ダルケル歴 960年 4月29日 エビデンス共和国 大統領府 某所
「そろそろか……。」
カルタシスは謎の玉座の前で頭を垂れていた。
そして、その横にはカルタシスと同様にマルバチョフが頭を垂れていた。
サァァァァァァッ
突如、玉座が謎の光に包まれる。
『どうも、丁寧な歓迎で。』
玉座から現れたのは天使の格好をした幼女だった。
「ハッ、キャロス様!嬉しい限りですッ!」
『今回、私が来たのには理由が有る。』
キャロスと呼ばれた幼女は面倒そうな顔をする。
『それは、フィフスス同盟圏が復活する。』
これを聞いたカルタシスとマルバチョフは一瞬で頭を上げ、目を見開いた。
「そ、それは!?」
フィフスス同盟圏……。それは、1300年前に猛威を奮い、全ての種族と生物を支配。過度な圧政を敷き、発展の限りを尽くした国家だ。
だが、この惑星を含む宇宙を管理し、宇宙状態を正常に調整する精神テクノロジー文明人であるコール人がこれに激怒し、精神テクノロジー文明人と謳っているが、直接物理的に干渉は出来ない為、フィフスス同盟圏に統治されていた国や種族を1つに集め、他の滅びた文明から様々な兵器を拝借し、渡した。
フィフスス同盟圏は自信の支配に奢っていた為、奇襲や度重なるゲリラ攻撃で壊滅の危機に陥っていた。
その為、フィフスス同盟圏は発魔所による魔流を使い、開発したての転移装置を使い、首都だけを別の世界へ転移させたのだ。
その後、支配されていた種族達は分裂し、様々な文明や国家を建国した。
戦争等も起こったが、フィフスス同盟圏のような国家は全く現れなかった。
この惑星は平和に保たれたが、コール人はそうはいかなかった。
直ぐにフィフスス同盟圏が転移した惑星や世界を調べた。
だが、一向に見つからなかった。
それは何故か。それは、フィフスス同盟圏が転移装置での転移で誤作動が起き、様々な時空を創り出してしまい、コール人がそれに手こずっていた事。そして、同時期に何億年周期で発生する時空歪力現象と呼ばれる現象が多数発生し、それに対応するのが途轍もなく忙しい為、対応が遅れてしまった為だ。
以上の2つの偶然が重なり、フィフスス同盟圏の生存を生んでしまったのだった。
『その為に地球連邦国を転移させたのだ。1つ言おう。地球連邦国はアジェンダ帝国のサウス研究所の消滅は地球連邦国による攻撃だ。』
「やはりですか……。」
『だが、地球連邦国は必ずや否や力になるだろう。』
「わかりました。フィフスス同盟圏の復活は具体的にいつ頃になるでしょうか?」
カルタシスは聞く。
『それが今のところ分からない。フィフスス同盟圏の転移装置が稼働したのは約590年前だ。つまり、約590年前からこの惑星を目指しているということだ。フィフスス同盟圏の奴らからしたら一瞬だが、光速で転移する訳では無いからな。』
「そういう事ですか、早急に準備をしなければ……ッ!」
マルバチョフは拳を握り締める。
『嗚呼、直ちに始めろ。地球連邦国の方にも私が行く。』
「「ハッ!」」
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20XX年 4月29日 地球連邦国 ジュネーブ 大統領官邸
クリーンと釧路はまったりとしたコーヒータイムを満喫していた。
「このコーヒーとそよ風、最高だな。」
「嗚呼、この時間がいつまで続けば良いのですがね。」
2人はコーヒーをすすりながら、言う。
サァァァァァァッ
「何か光ってるな。」
「嗚呼、なんかヤバそうだな。」
『お取り込み中かい?失礼するぞ。』
すると、白い衣を着た幼女が光を纏い、現れた。
「!?」
「は!?」
『私が何か可笑しいか?』
キャロスは口をポカーンと開けている2人を見て、驚く。
「いいや、というか君はどうやって監視をすり抜けたのかい?」
クリーンは聞く。
『すり抜けるも何も、何か知らないものに反応して人が来たが全く分からなかったみたいで帰っていったのだが。』
「幽霊じゃん!」
釧路は思わず叫ぶ。
『確かに、幽霊かもしれないが私は元々人だ。精神だけで存在する。』
「精神テクノロジー文明人ということが?」
『ご名答。我々は精神テクノロジー文明人であるコール人だ。』
クリーンと釧路は文明の最果てと言われている精神テクノロジー文明人を見て興奮する。
「ほ、本当か!?」
「凄いッ!こんなことがあるのかァッ!」
『そんなに興奮しないでください。』
キャロスは日本人には絶対ウケるであろう一言を言う。
「古いですね……。」
釧路は冷たい目で見る。
『く……。』
キャロスは内心傷つく。
『まぁ、良い。今回我々が現れたのは、フィフスス同盟圏が復活するからだ。』
「フィフスス同盟圏?どういうことでしょうか?」
クリーンは聞く。
『フィフスス同盟圏とはこの惑星で極悪非道を犯したと言った方が良いだろう。その国に我々は支配されていた種族に兵器を与え、壊滅まで追い込んだ。』
「で、どうなったんですか?」
『フィフスス同盟圏は以前より開発していた転移装置を使い、別の世界へ転移した。』
「「!?」」
『これは事実だ。そのフィフスス同盟圏が数年で復活する。それは、転移装置の稼働エネルギーが検知された。それも約590年前に。つまり、この数年と言っているがいつ現れるか分からないということだ。」
クリーンと釧路は驚愕した。
この話を100%信じている訳では無いが、もし本当であるならば一大事である。
「私とクシロは100%信じている訳では無い。」
『分かっている。サウス研究所の件、伝えといたぞ?エビデンス共和国に。』
「はぁ!?」
「こ、国家機密だぞ!?」
『しーらなーいッ!』
キャロスはそういうと消えた。
「むぅ…面倒なことになったな…。」