第12話 DE-12
20XX年 4月18日 海洋警備隊 第4艦隊 旗艦「アルバート」 CIC
「さぁ、領海侵犯者はどの決断を取るのか見ものだな。」
こういうのは第4艦隊司令のサベージだ。
DEー12はアジェンダ帝国の第零潜水隊の司令が乗船しているアルティルトと接触してから「サーガ」と膠着状態が続いていた。
「敵艦、魚雷発射。誘導魚雷である可能性は極めて低いかと。」
レーダー士は冷静に報告する。
「そうか……無誘導魚雷か。文明レベルは第一次世界大戦から第二次世界大戦レベルというところか。」
サベージは足を組んでコーヒーを飲む。
「DEー12、敵魚雷を誘爆。」
ドォォォーーーーーーーーーーーン
水面に大きな水柱が現れる。
「It’show time!」
サベージはそう言うと机に突っ伏し、寝た。
司令官として有るまじき行為であるが、第4艦隊の隊員にとっては普通の事なので各々仕事に取り組む。
バシューンバシューンバシューン
DEー12から3発の誘導魚雷のMK.66Dが発射される。
「敵潜水艦撃沈。DEー12からの反応が途絶!?」
なんと、突然DEー12と通信が途絶したのだった。
「どういうことなんだ……?」
レーダー士は困惑していた。
アジェンダ帝国 海軍 第零潜水隊 旗艦「サーガ」
「くそ!魚雷か!?回避ぃー!」
アルティルトはまだ沈むまいと叫ぶ。
「駄目です!追ってきます!」
レーダー士は絶望に満ちた声で報告する。
『司令!後は頼みましたよ!』
突然無線で通信が流れ込む。
「「ビクター」か!?」
突然、「サーガ」の前に潜水艦の「ビクター」が出る。
ドォーーーーーーーーーーン
「ビクター」はMK.66Dの餌食になる。
「「ビクター」が……くそ!「ビクター」を無駄にするなど言語道断!反撃開s……!?」
ガガガガギギギィーーー!
船体が突如揺れた。
「何かがぶつかっています!」
「な!?い、一旦撤退だ!全艦やられる訳には行かない!」
第零潜水隊はこの言葉により、本国へと撤退したのだった。
第4艦隊 旗艦「アルバート」 CIC
「くそ!何故だ……!?」
ようやく、眠りから覚めたサベージはDEー12と通信が途絶したことに驚愕していた。
「無人か…ではおやすみ……。」
サベージは再び深い眠りへと落ちる。
(((((((今寝るぅ!?))))))
CICにいる隊員達は盛大なツッコミを心の中で入れる。
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ダルケル歴 960年 4月19日 アジェンダ帝国 サウス研究所
ここは、様々な研究や新兵器の開発や敵国の鹵獲兵器の調査等をする研究所だ。
この研究所はアジェンダ帝国随一の一大研究所なのだ。
バチチチチィィッ
「電気は弾かれるか……。」
こう言いながら腕を組むのは若い研究員であるモース・ファイザーだ。
「第零潜水隊を壊滅に追いやった憎い物体であるが、これがなんなのかは私にも分からないな。」
こう言いながらモースの前に現れたのはサウス研究所の所長であるファスナー・ファルージャだ。
彼はその高い学識と能力をかられ、この研究所の所長となった。
事務作業をこなしながらも開発や研究を手伝ってきた。
「もう一度電流を流してみます。」
カチャカチャ
モースは電流装置を弄り、再び電流を流す。
バチチチチチチチィッ
「無理ですね……。」
モースはガッカリした顔をする。
「い、いや……少し動いているぞ……?」
ファスナーはDEー12が動いていることに気づく
『計器ニ異常ヲ確認……緊急開閉シマス。』
ウィーーーン
独特な機械音が響き渡り、船体がパックリと2つに開く。
「す、凄い……これは……やはり、「サーガ」の船体に偶然引っ付いてくれて良かったな……!」
そう、このDEー12は通信が途絶した。その為、撃沈されたと思われていたが実は「サーガ」の船体に引っ付き、そのまま引っ付いたままアジェンダ帝国へと来てしまったということが事の顛末である。
プシュー
何かがムクっと起き上がった。
「!?」
『状況確認完了。』
突如現れた異形の人形物体。これは、DEー12に装備されている小型アンドロイドだ。
通常のアンドロイドであるFEー32の大きさは全長190cmであるが、小型アンドロイドFEー11の大きさは全長170cmと小さめだ。
「な、なんだこりゃ……。」
『手ヲ上ゲロ!』
そして、FEー11はXM8を構える。
FEー12には様々な情報が電子脳に詰まっており、FEー11がDEー12から出たことで人工衛星等を使い、4.18事件と呼ばれる海洋警備隊とアジェンダ帝国の第零潜水隊との戦いも既にネットニュースやテレビニュースでやっている為、簡単に情報を入手できたのだ。
そして、自分がこのアジェンダ帝国にいることを人工衛星により位置が分かり、周りに兵が居ないことを認識した為強硬手段に出たのだ。
AIを組み込まれたアンドロイドは超合理主義であるのは、地球連邦国への忠誠のみ。
人命救助ミッションであれば、人命救助に尽力を尽くし、戦闘ミッションであれば人を殺す罪悪感等無い、殺戮マシーンと化す。
銃が弾切れで無くなったとしても、アンドロイド単体の力はパワードスーツを身にまとった兵と同等の能力を保有している。
その為、肉弾戦では鋼鉄の拳が人体を襲うのだ。
「「……。」」
モースとファスナーは、銃を持っていない為素直に手を上げる。
『コチラ、海洋警備隊所属ノアンドロイド。Dー9765デアル。コノ地点ニ攻撃ヲ要請スル。』
異形の兵は走り出す。
ダッダッダッ
「こんな研究資料逃す訳には行かん!」
ファスナーは逃げるFEー11を追う。
「ど、どうなっても知りませんよォ!」
モースもファスナーに付いていく。
ダダダダダッダダダダダッ
FEー11は、何の前触れも無く前にいる衛兵を射撃する。
ダダダダダッダダダダダッ
「うわ!?」
「あいつは俺たちに気づいていない。追うぞ!」
FEー11の殺戮が始まった。
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宇宙大型攻撃型人工衛星 〈シャブロン〉CIC
『コチラ、海洋警備隊所属ノアンドロイド。Dー9765デアル。コノ地点ニ攻撃ヲ要請スル。』
突如、流れ込む通信に宇宙大型攻撃型人工衛星〈シャブロン〉の管理、攻撃を任されている司令官のレイモンド・スカー中将は驚く。
「了解した。」
「本国が許すかどうかですねぇ……。」
こう言いながら腕を組むのは副司令の田中 拓郎少将だ。
「こちらは、地球連邦国宇宙軍の攻撃人工衛星の〈シャブロン〉である。海洋警備隊の第4艦隊の消滅したと考えられてるDEー12がアジェンダ帝国なる帝国の研究所で発見された。今後この研究所にDEー12が研究されるとアジェンダ帝国に大規模な進化が訪れると危惧している。その為、内蔵されているFEー11が研究所を抜け出し、逃走している模様。DEー12が残されている研究所を〈シャブロン〉による攻撃をFEー12より推奨された。その為、こちらの判断としては〈シャブロン〉による攻撃を推奨する。」
レイモンドは直接国防省への緊急用通信を使い、直接通信を送る。
『ザ……ザザ……了解した。政府へ確認を取る。』
「了解。良い報告を待っている。」
レイモンドは通信を切った。
40分後
レイモンドはコーヒーを口にし、田中は日本茶を口にくつろいでいた。
『ザザ……協議の結果、攻撃を許可する事となった。』
レイモンドはガバッと椅子から飛び立った。
「了解。では後はこちらで。」
『期待しているぞ?』
「了解しました。」
レイモンドは通信を切った。
「よし、攻撃態勢へ移行!」
レイモンドはコーヒーを机に置くと叫ぶ。
「1号槍の固定を解除。」
「全計器に異常無し。」
「いつでも攻撃できます。」
操作員の声が聞こえる。
「よし、攻撃まで3、2、1。発射ァ!」
ガチャァーン
〈シャブロン〉から1本の槍が切り離された。
そう、攻撃型人工衛星〈シャブロン〉は別名 神の杖と言われているのだ。
槍は高速でサウス研究所へと向かう。
そして、ジェットブースターが点火され、どんどんと加速していく。