第11話 残党
20XX年 6月18日 シュメール王国 王都 王城
一際目立つ王都の頂上にはシュメール王国旗が掲げられている筈であった。
だが、今は地球連邦国の国旗がはためいている。
「戦いは終わったか……だが、まだ気は抜けんな。」
こういうのは王都占領作戦を一任されている陸軍第34師団の師団長である李 陳往だ。
「李師団長!第65偵察隊から連絡です!」
副師団長であるトランス・メイサーが走りながら報告する。
「なんだ?報告しろ!」
「ホログラムに投影します!」
ヴォン
トランスはそういうとホログラムを投影した。
『師団長、残党兵によるゲリラ攻撃を受けました!何とか応戦していますが、2時間も持たないかと!直ちに応援を求めます!』
第65偵察隊長の新浪 三郎2尉がなんとか高速バイクを乗り回しながら報告する。
「分かった。直ちに応援を送る!」
『感謝します!では!』
新浪はそういうと通信を切った。
「第78高速連隊を派遣しろ!奴らならやってくれるだろう。」
李はそういうと顎に手を当てた。
王都 付近
ドゥルルルルン
「くそ!魔法なんちうチートを使いやがって!」
こう愚痴を漏らすのは先程、李に応援を頼んだ新浪だ。
残党兵は魔法による体力増強で魔法による攻撃と常人ではありえない速度で第65偵察隊の保有する高速多目的バイクであるFGー44に迫ってくる。
ドゥルルルルン
「岩か!くそ!」
新浪は岩を一瞬にして避ける。
ガァン
残党兵は勢い余って岩に激突する。
ダダダダダッ
新浪は素早い動きで迫ってくる残党兵を主力小銃であるXM8で頭を撃ち抜く。
弾丸は頭蓋骨を突き抜け、スピードを失った弾丸は地面に高速で落ち、粉塵を起こす。
残党兵は脳漿を撒き散らし、倒れる。
『隊長!ダダダダダッ!多すぎます!ダダダダダッ!』
隊員の通信から銃声が響き渡る。
「一旦集合だ。指定したDポイントへ向かえ!」
新浪は予め設定していた集合地点に招集をかける。
『『『『『『『『了解!』』』』』』』』
ドゥルルルルン
新浪は第65偵察隊はFGー44を最高速度に加速させる。
その速度は160kmを超えている。
ガァァァーン!
「う、なんだ?」
シューーーーッ
新浪は音がした方に向く。
「な!?」
なんと、エンジン部分に穴が空いていたのだ。
偶然、苦し紛れに放った残党兵の一撃がエンジン部分に当たってしまったのだ。
ウィーーーーーン
機械音が小さくなると同時に速度がどんどんと落ちてくる。
そして、後ろからは残党兵が迫ってくる。
「チッ、こんな時に!」
ダダダダダッ
新浪は正確な射撃で残党兵を撃ち抜く。
ダダダダダッ
ダダダダダッ
ダダダダッカッ
「弾切れか!?」
新浪はマガジンが少ししか無かったことに後悔する。
パァンパァンパァン
新浪は主力拳銃であるP320で応戦する。
新浪はまだ諦めていなかったのだ。
ゴゥン
エンジンが完全に止まり、バイクも停止した。
パァンパァンパァンパァンパァン
「死ねぇ!」
残党兵は剣を振り回し、新浪を切り刻もうとしてくる。
シュンッシュンッ
新浪はパワードスーツにより、身体能力が増強されている為、残党兵と互角に渡り歩く。
(魔法による身体能力の増強か……これ程の力を持つとは……この世界は不思議だらけだな。)
新浪はそう思いながら肉弾戦に巻き込まれながら互角に渡り歩く。
(よし、こっちのもんだ!)
パァンパァンパァンパァン
新浪はP320を残党兵の腹に当て、引き金を引く。
残党兵から血が滴り落ちる。
ドサッ
「ふぅ……久々に緊迫感があったな。」
新浪はそういうと倒れていたバイクを起き上がらせる。
ドゥルルルルン
「ん?」
新浪が走行して来た道から現れたのは軽装甲機動車改と16式機動戦闘車改、FGー44の全14両で編成される第78高速連隊だった。
ガコン
1両の軽装甲機動車改から現れたのは1人の女性だった。
「おいおい、リビルドさん?遅くはないかね?」
新浪は茶化すように言う。
「折角に来てやったというのに貴様はこの態度か?」
そういうのは第78高速連隊長のリビルド・ベータ1尉だ。
新浪とリビルドは国防学校の同級生だ。
その後、新浪の方は第65偵察隊長。リビルドは第78高速連隊長となった。
「えー、国防学校では三郎ちゃんって言ってたのに……。」
新浪はニヤニヤしながら言う。
「ちょ、ちょっと!この野郎!」
リビルドは国防学校時代の恥ずかしい黒歴史を突然暴露され、赤面する。
「キャハハッ!やっぱ変わんねぇな!」
リビルドは新浪に向けて走り出す。
「え?ちょっとヤバい!」
新浪もリビルドに捕まらんと走り出す。
「三郎ちゃん!許さない!」
リビルドは新浪を捕まえる。
「うわぁー!やめろぉ!」
新浪はリビルドにより羽交い締めにされる。
「痛ぃー!やめてぇー!」
軍の厳しい訓練を受けた事のある新浪が女のような声を出す。
周りの兵は豪快に笑っている。
「お前らァ!帰ったらぁ!痛ぇ!!」
第65偵察隊員と第78高速連隊員達はほのぼのと見ていた。
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同時刻 地球連邦国 太平洋
ザァーーーーーーーーーーッ
ここには、国防省に統括されている海洋警備隊の第4艦隊が航行していた。
海洋警備隊は地球連邦国の海洋を警備する部隊だ。
地球では主に海賊や密輸船等を排除、拘束していたがこの惑星では他国の船舶等が侵入しないようにする為の任務である海上警備を任されていた。
第4艦隊 旗艦 「アルバート」 CIC
ピッピッピッピッ
レーダーが機械音を奏でて、反応する。
「レーダーに反応。海中です。」
レーダー士が艦隊司令に伝える。
「分かった。海中か……。全艦対潜戦闘用意!潜航艇を投下せよ。」
艦隊司令であるサベージ・ミルトゥラは海中にいる謎の潜航物体に疑問を持つが流石は司令。直ぐに対潜戦闘用意を発令する。
ウィーン
バシューン
「アルバート」の右舷から潜航艇であるDEー12 メルトボーラ
が1艇発射される。
ザブゥーン
DEー12はまだ見ぬ潜航物体を探索するのだった。
アジェンダ帝国 海軍 第零潜水隊 旗艦 「サーガ」
東側に存在する帝国であるアジェンダ帝国は、海に面している為、海軍の勢力が強い事で有名だ。
その中でアジェンダ帝国最新の艦艇である潜水艦は未だ4隻しか建造出来ておらず、次艦が建造されるまで第零潜水隊として編成されているのだ。
そのアジェンダ帝国の潜水艦はこの惑星で初の潜水艦であった。
いや、約1週間前までは……。
『こちらは、地球連邦国 海洋警備隊である。貴艦は我が国の領海を許可無く、侵犯している。繰り返す……。』
「な!?どういうことだ!?」
第零潜水隊の司令であるアルティルト・ニィスペス少将は、突然無線から流れ込む通信に驚く。
『応答せよ。繰り返す。応答せよ。これより、10秒間貴艦が撤退行動を見せなければ攻撃を行う。』
無線からの要求は更に増す。
「し、司令!どうしますか!?」
兵は無敵だと思っていた艦に突如、通信が流れてきた事に驚愕する。
「く……どうしたものか……。」
アルティルトはどう選択肢を取るか迷っていた。