7:初めての勝利と
始まりの街からノタノタと走ること数分、俺はデカい熊がいると噂されていた『南の森』に辿り着いた。
初心者の草原のほうには山ほどプレイヤーがいるというのに、こちらのほうはさっぱりだ。
鬱蒼と茂る木々の中を警戒しながら歩いていく。
「あ、変な木の実発見。採取してこっと」
そうして時折アイテムを手に入れつつ、森の奥へと進んでいくと――、
『グガァァァアアアッ!』
「ってうわぁっ!? 出たー!?」
体長三メートルもの巨大熊が巨木の陰から現れた!
頭の上にはうっすらと、『殺人熊』という物々しいモンスター名が。
「っ、よし……やってやる!」
自分を奮い立たせるように叫び、俺は両手に『初心者の剣』を呼び出した。
その瞬間、『武器を両手に装備する場合、二本分の必要筋力値が必要となります。またアーツの発動は出来なくなります』と警告文が出てくるが無視だ。
なにせ筋力値なら余りまくってるし、アーツなんて使えないからな!
『グガーーーッ!』
こちらに向かってドタドタと駆けてくる巨大熊。まるで車が向かってきているかのような迫力だが、怯んでいる場合ではない。
俺は両手に力を込めて、二本の剣を同時に投擲した。
残念ながら一本は外れるも、もう一本はマーダーベアーの肩に当たり……、
『グガフゥウウウッ!?』
よしっ、熊が痛みに悶え叫んだ!
筋力値極振りのステータスとダメージアップ系スキル【怨嗟の咆哮】の効果で、大きなモンスター相手にも十分なダメージが与えられるみたいだ!
今がチャンスだ。俺は両手に『初心者の剣』を再び呼び出し、熊に向かって投げまくる。
「オラッ! このっ! くたばれーっ!」
『グゥウウッ、ガゥウウッ!?』
熊が近づいてこれないよう、とにかく投げて投げて投げまくる。
そうして十回以上もそんな作業を繰り返していると、ついに……!
『グガーーーッ!?』
ひときわ大きな悲鳴を上げて、マーダーベアーの身体が砕け散った。
ヤツが光の粒子となっていく中、俺の目の前にシステムウィンドウが表示される。
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・マーダーベアーを倒しました!
レベルが1から3に上がりました! ドロップアイテム:巨大熊の皮×3を獲得しました
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「おおおおっ、よっしゃー!」
レベルアップはするだろうと思ってたが、まさか2を飛び越えて3になるとは思わなかった!
なんだ、いけるじゃないか筋力値極振り。
俺は手に入ったステータスポイント20を、さっそく筋力値に全部注ぎ込む。これで先ほどよりも倒すのがラクになったことだろう。
「よ~し、このまま狩って狩って狩りまくって、稼ぎまくってやるぞ~!」
この世界では味覚もリアルで、高級料理は現実と同じくらい美味しいと聞く。
大金持ちになってぜひとも味わってやらないとな。
にししっと笑いながら、俺が優雅なセレブ生活を夢見ていた――その時。
『グガーーーーーーッ!』
「なっ!?」
怒りに満ちた咆哮と共に、毛深い腕が俺の身体を薙ぎ飛ばした――!
一気に消し飛ぶHPバー。マックスだった俺の体力は、たったの一撃で1ドットまで削られてしまう。
「げほっ、ごほっ! っ……一体何が……!」
地面を何度も転がされながら、どうにか俺は起き上がる。
すると、目の前には……!
『グガァアアア……!』
『グルルルルル……ッ!』
『ガァアアアアーーー!』
……一体どこから現れたのか、三匹ものマーダーベアーが俺のことを睨みつけていた!
おいおい嘘だろ!? 森の中を歩いていた時には、なかなか出てこなかったくらいなのに……!
「ま、まさか……仲間の叫びを聞いたら集まってくるっていうのかよ……!?」
絶句する俺に対し、三匹の巨大熊は一気に駆けてきた。
ダラダラと涎を撒き散らしながら大きく口を開き、俺の太ももに、やわらかな脇腹に、そして細い首筋に全力で噛み付いてくる――!
「かひゅっ――!?」
バキゴキグチャッ! と体内から響く破壊音。
一瞬で首の骨をへし折られたことで、もはや俺は絶叫すらも上げることが出来なかった。
痛覚が制限されていることで激痛だけは感じないものの、それゆえに肉を噛み千切られていく不気味な感覚だけが伝わってくる。
こうして俺は熊に全身を貪られながら、粒子となって消えていったのだった……。
くそっ……次は負けないからなぁーーーッ!
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