4:勝負と旅立ち!
「わはははははっ! んで、ランダムエディットに任せたらそんな見た目になっちまったってか!?」
「うっさい笑うな!」
哲夫のヤツと街の外に向かいながら事情を話した。その結果が屈辱の大爆笑だ……!
くそっ、こんなことになるんだったらランダムでキャラ作りなんかしなきゃよかった。
伸ばそうと思ってた身長のほうも逆に少し縮んでるみたいだしさぁ……!
「ははっ、悪い悪い。まぁ似合ってるからいいんじゃねぇか? このゲームって肉付きを変えるだけで異性っぽい見た目には出来るけど、顔はあんまりいじれないから違和感が出ちまうんだよな~。
その点オメェは……よしっ!」
「よしじゃねーよっ! くそっ、スカートもスースーして恥ずかしいし……!」
そもそもなんだよ、この赤ずきんっぽい見た目は? ネットゲームなんてやったことないから知らないんだが、初期装備っていうのはもっとショボいやつじゃないのか?
哲夫のヤツも凝った鎧を身に付けてるし、周囲のヤツらも初期装備とは思えない恰好をしてるしさ。サービス開始初日でこれってどうなんだよ?
そんな疑問を浮かべてることを察してか、隣のゲーム廃人がピンと指を立てて解説してくる。
「おっと、どうやらこのゲームのシステムを何も知らないようだね~キミ! そんなキミにベータテスターである『テツ』様が解説してあげよう。
あっ、ちなみにテツってのはこのゲームでのオレの名前な。オメェはどんな名前にしたんだよ?」
「『レン』だ」
「ってそのまんまじゃねーか!? これだから初心者様は……まぁいいや。まずは装備の話をするぞ。
このゲームはちょっと変わっていて、『防具』ってのは存在しないんだ。
『強力なモンスターの攻撃には皮も鎧も同じく紙っぺら』って設定で、実はオレが着ている鎧も特に意味はない。オメェの着てる可愛いエプロンドレスと同じく、キャラ作成時に選べる衣装の一つなんだよ」
「可愛いは余計だ。ってなんだそりゃ? 防具の守りもなしにどうやって戦えばいいんだよ?」
「ふふーん、実はちゃーんと防具代わりになるものがあるのだよ。これを見てみな」
そう言って哲夫ことテツは、俺に指輪を手渡してきた。
これは一体……? じっと見ていると、やがて文字が浮かんでくる。
『アイテム名:守護の指輪。装備者の防御力3%アップ』
おおっ、そういうことか。防具の代わりにこんな装備があるんだな。
「なるほどな……これがこのゲームにおける鎧代わりってわけか」
「そうそう。強さを求めてるとオシャレが楽しめなくなるだろ?
性能は良いのに見た目はダサい装備を身に付けなくちゃいけなくなったり、気に入ったデザインの装備も冒険を進めていく内に力不足になって代えなくちゃいけなくなったりさ。
運営はそのへんを考慮して、指輪とかネックレスみたいな小物類をメイン装備に選んだわけだよ」
五つまで身に付けることが出来て、もちろん筋力や敏捷値なんかを上げるアクセサリーもあるぞーとテツは笑いながら語った。
へ~、プレイヤーのことをよく考えた運営なんだなぁ。
俺もころころと装備を変えていくのは面倒くさいし、ちょうどいいや。
「にしても流石はベーターテスター、このゲームについてずいぶん詳しそうだな。
そうだ、俺のジョブとかスキルの構成を見てくれないか? かなり強いと思うんだが」
「ふふーんっ、いいだろう! 普段はオメェに勉強を教えてもらってばっかのオレだが、ここでは大先輩だからなっ!
ではレンくん、ステータスオープンと言ってみたまえ」
「はいはいテツ様、ステータスオープンっと」
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名前:レン
レベル:1
ジョブ:クラフトメイカー
ジョブ特性:装備とアイテムの生産・強化・修復が可能となる。またアイテムボックス枠50から200にアップし、死亡時に所持金を落とすデスペナルティがなくなる。
ステータス
筋力:100 防御:0 魔力:0 敏捷:0 幸運:0
スキル
【暴走】【素材採取の達人】【武装投擲】【武装回収】【食いしばり】
武器:初心者の剣
装備:なし
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そして表示されるステータスウィンドウ。それを見た瞬間、テツが目を見開いて絶叫を張り上げた。
「なっ、なんじゃこりゃああああああああ!?」
「うわぁっ、なんだよ!? もしかしてすごく革新的なステータス構成だったり……!?」
「悪い意味で革新的じゃいッ!
あー……まずクラフトメイカーを選んだこと。これ自体はまぁ許す。戦闘に役立つジョブ特性がない最弱ジョブだが、クラフトメイカーの仕事は作ることだからな。素材採取だけしててくれればよしだ。
なのにお前、なんで筋力値極振りなんだよ!? 防御と敏捷だけに振ればいいだろっ!」
「馬鹿言え、それじゃモンスターを倒せないだろうが。肉とか牙とか集められないだろ」
「そんなもんはオレみたいな戦闘職に任せとけばいいんだよっ!
ったく、よりにもよって筋力に極振りとかねーわぁ。……いいかレン? さっき見せた『守護の指輪』みたいに、このゲームの装備はプレイヤーのステータスを何%かアップさせるものばっかなんだよ。
つまりステータスゼロってことは……」
「うげっ!? 何%上げようがゼロじゃねーか!」
俺の言葉にテツは重く頷いた。おいおい、極振りってそんなにリスクがあることだったのかよ、聞いてないぞ。
まぁその分たくさんポイントを振ったステータスはさらに伸びやすいことになるが、逆に言えば弱点を埋めることは難しいってわけだ。
あーあ、ゴツい鎧とかを着れば筋力値極振りでもなんとかなると思ってたのになぁ。
ガックリと肩を落とす俺に、テツは追い打ちをかけてくる。
「で、次はスキル構成についてだ。オメェ、戦うつもりなのになんで『武技スキル』を取ってないんだよ……!」
「武技スキル?」
「そう。身に付けておくことで、MPを消費して特殊な技が使えるようになるんだよ。
たとえば【大剣の心得】って武技スキルをセットしておくと……ッ!」
次の瞬間、テツは目にも止まらない速さで背中の大剣を振り抜いた。
猛烈な風が吹き荒れるほどの勢いで、俺の髪がバサバサとなびく。完全に人間技じゃない……!
「見たかよレン、これがシステムの補正を受けて放つ特殊技『アーツ』ってやつだ。カッコいいだろう?」
「ああ、たしかにすごいな……! でもさ、一応俺も【武装投擲】ってスキルを取ってるんだけど……」
「馬鹿言えっ、あんなんクソスキルだっつの! 剣を投げちまうくらいだったら、最初から【魔術の心得】ってのを取得して魔法攻撃でもすればいいんだよ。詠唱に数秒時間がかかるが、武器をポイ捨てするよりよっぽど威力はあるしホーミング性能も付くぞ」
「うへぇ……マジかよ……ていうかクソスキルは言い過ぎじゃないか……?」
「言い過ぎじゃねーっての。このゲームじゃ、セットしておけるスキルの数は十個までだからな。ハンパなスキルはただの枠潰しにしかならないんだよ。
まぁ要するに、キャラ設定完全失敗ってことだな~! いやー優等生のレンちゃんもゲームではダメだったってことですなーうむっ!」
ポンポンと軽く頭を叩かれる。
うぎぎぎぎぎ……こ、この廃人ゲーマー野郎、ここぞとばかりに煽ってきやがって!?
えぇいっ、男としてこのまま舐められていて堪るか。
俺はヤツの手を振り払うと、ビシっとその顔面に指を突きつけて睨みつける。
「勝負だテツ、このキャラ設定でも立派にゲームを楽しめるって証明してやる……! ばんばんモンスターを狩りまくって、アイテムを作りまくって大金持ちになって、ステーキを食いながらお前のことを笑ってやるからな!」
「はははっ、なんだよその勝利条件!
だけどいいじゃねぇか、そういうの好きだぜ。このトッププレイヤーのテツ様お墨付きのゴミ設定で、どこまでやれるか見せてみやがれッ!」
「おうよ!」
ベタベタ仲良くするよりもこっちのほうが燃えるってもんだ。
こうして俺は全力でスローライフを目指すために、テツと別れて狩場に向かって行ったのだった。
・全力でスローライフとは一体……!
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