2:キャラエディット
悪友から『アンリミテッドフロンティア・オンライン』をもらった次の日の夜。ついにサービス開始の時間が迫ってきていた。
俺はパソコンにゲームディスクを挿入すると、有線で繋がっているVRヘルメットを装着した。これを被ることでゲームの世界に入れるようになるのだ。あとはベッドに横たわるだけだな。
「尿意よし、水分補給よしっと。それじゃあ行くぞ……ダイブオンッ!」
起動に必要だというキーワードを叫んだ瞬間、俺の意識は闇の中へと落ちていった――。
◆ ◇ ◆
『ようこそいらっしゃいました~。ここはキャラクター作成空間です~』
……目を覚ますと、俺は真っ白な空間にいた。そして目の前には、ふよふよと浮く妖精が。
「お前は?」
『はい~、わたくしはプレイヤーサポート妖精のポーともうしますぅ~! みなさまの冒険をサポートするために生み出されました』
おお、会話が出来た。そういえばCMなんかでも、最新のAI技術が使われているって言ってたからな。
俺はその名の通り、少しだけぽーっとしたチビ妖精にお世話を頼む。
「じゃあポー、さっそくキャラ作成を頼む。そういえばVRMMOなんて初めてやるから、説明しながら進めてくれ」
『了解です~! それではまず、プレイヤーネームを打ち込んでください。他のプレイヤーと名前かぶりをしてもオッケーですので、変な単語が入ってなければ何でもいいですよ~』
彼女がそう言うと、目の前に入力用ウィンドウが現れた。
プレイヤーネームか。そうだな、現実の名前は蓮だから……。
「うん、カタカナで『レン』でいいかな。わかりやすくていいだろ」
『わかりました、レン様ですね~! では次に、見た目をエディットしてください。
ちなみにですが、精神への影響を考慮して、あまりリアルと違いすぎる顔付きや身長には出来ません』
んげっ、そんなルールがあるのかよ。悪友の哲夫みたいに高身長で、それで男らしい顔付きの武士キャラなんてやってみたかったんだけどな~。残念。
ガックリと項垂れる俺の目の前に、編集用ウィンドウと俺の姿を模したフィギュアが現れた。これを見ながらイジっていけということか。
うーむ、線が細いこの顔ともおさらばしたかったんだが仕方ないか。あくまでほとんど変えれないというだけで、5センチまでなら身長を伸び縮み出来たり、髪の色や肉付きなんかはイジれるみたいだから頑張ってみよう。
えーと、髪型をいじって……うわめっちゃ長くなった!? 調整調整! じゃあ次は胸板を厚くして……ってうわぁっ、胸がおっきくなった!? 肉じゃなくて筋肉をつけたいんだって!
「あーもうっ。サービスが始まったらダチとスタートダッシュを決めようって約束してたのに、このままじゃ遅れちまうよ……!」
『お困りですね~レン様。それでは、ランダムキャラ作成というのはどうですか?
わたしが勝手にイジって、ログインした時にようやく見た目のわかるお楽しみ機能ですぅ~!』
「わかった、もうそれで頼む。ただし変な見た目にはしないでくれよ? 哲夫のアホに笑われたらムカつくからな……」
『まぁっ、男性と会う約束をしているのですか!? それならわたし頑張っちゃいますね! 最新AIの神調整っぷりにご期待ください~!』
“レン様の魅力を最大限に引き出しちゃいますねッ!”と自信満々に親指を立てるチビ妖精。
なんで元気になったのかは知らないが、イケメンにしてくれるなら何よりだ。ゲームをプレゼントしてくれた相手に迷惑はかけたくないので急ぐことにする。
「じゃあポー、あとの選択ウィンドウを全部表示してくれ」
『了解ですぅー。容姿はわたしが決めておきますから、あとレン様が決めることは、職業とステータスとスキルですね~』
俺の目の前に三つのウィンドウが表示される。
どれもこれも容姿よりさらに重要な項目だが、幸いどんなプレイをしたいかは決まってるからな。
ここらへんはサクサク行けそうだ。
「まず、職業は『クラフトメイカー』ってやつを選んでっと」
ざっと職業説明を見る限り、生産職ってやつだな。
施設を利用することで色々なアイテムが作れるようになるほか、他の職業と比べて大量にアイテムを持ち運べるようになるんだとか。
そう……俺はアイテムを売りまくってお金を稼ぎまくり、ファンタジーな世界で道楽生活を送るつもりでいた。
ドラゴンの肉みたいなここでしか食べられない珍味に舌鼓を打ったり、貴族みたいに豪華な馬車に乗って旅行したりな~。
まぁ実際にゲーム内でドラゴンが食えたり貴族の馬車に乗れたりするかは不明だが、少なくとものんびりとしたスローライフを楽しむつもりだ。
んで次にステータスだな。
100ポイントの数値を『筋力、魔力、防御力、敏捷、幸運』の五つの項目に振り分ける感じらしい。
ポー曰く、『レベルアップするごとに貰える数値は10ポイントです。なので最初の振り分けがかなり重要になりますね~』とのこと。
あとHPとMPについては、ポイントを振らなくてもレベルアップごとに勝手に上がっていくらしい。
またステータスを一切振らずにゼロにしても、一般人がちょっと劣化したくらいの身体機能は確保してくれるそうだ。
それならば、
「よし決めた。筋力値に全部ブチ込んじゃおっと」
俺は100ポイントあった数字を全部筋力に流し込んだ。
理由は簡単だ。生産職とはいえ、素材を集めるためにバトルする必要はあるだろう。だけど喧嘩なんて一度もしてこなかった俺にモンスターとの戦闘なんて出来る気がしない。
だからこその筋力値極振りだ。素人の攻撃だって一度くらいは当たるだろうからな、つまりその一撃で勝負をつけたらいいってことだ。
さてさて、ステータスも決めたし最後はスキルか。どうやら最初に五つ選べるらしい。
えーと、生産職で筋力値極振りになったことを考慮して……これとかでいっか。
「【暴走】【素材採取の達人】【武装投擲】【武装回収】【食いしばり】で決定だな」
どれも俺の職業とステータスにマッチしたスキルだ。
まず【暴走】は筋力値増加効果を持っている。五分間のあいだ、筋力値を二倍にする代わりに防御と敏捷を半分にするんだとか。俺の場合は元々ゼロだからお得だな!
次に【素材採取の達人】は、通常よりも多くのドロップアイテムを獲得できるようになるスキルだ。
んで【武装投擲】は武器を投げた時に与えるダメージ量がアップする効果を持っている。近接戦闘で殴り合う趣味はないからな、遠くから一方的に倒させてもらおう。
また【武装回収】は遠くに飛んで行った武器をアイテムボックスにワープさせられるスキルらしい。【武装投擲】とセットで使えば武器をなくす心配はないな!
そして最後に【食いしばり】は、死ぬダメージを受けた時に一度だけ、HP1で耐える効果を持っている。
再発動まで五分かかるから多用することは出来ないが、いざという時の保険になるわけだ。
「よし決まった。それじゃあポー、行ってくるよ」
『わかりました~! ではレン様。夢と希望と冒険に溢れた、アンリミテッドフロンティア・オンラインの世界をお楽しみください~!』
元気に手を振る彼女の姿を最後に、俺の視界は光へと包まれていった――!
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