15:そうだ、家を買おう!
ゲーム開始から三日目。昨日はスローライフ送ろうとしてたときに、テツにボス戦に誘われてムカデ狩りをする羽目になったからね。
今日は街でもぶらぶらしながらのんびりしようと思ったのだが、
「あっ、『固定砲台』のレンちゃんだ! 狩りを手伝ってくれーッ!」
「レンさん、スキル構成教えてくださいっ!」
「うわぁめっちゃ顔綺麗っ、リアルでモデルとかだったりしません!? とりあえずスクショいいっすか!?」
……テツの野郎が言っていた通り、俺はめちゃくちゃ注目される羽目になっていた!
ログインした瞬間にわっと周囲を囲まれてしまう。
うぐぐぐ……どうしよう、逃げるにしても敏捷値ゼロだし……!
そうして俺が困っていた時だ。野次馬たちの外から「はいはい、どいたどいたー!」と女性の声が聞こえるや、プレイヤーたちが道を開ける。
そこにいたのは、露出の多めな赤髪のお姉さんだった。
「って、商売人のエルコさん!?」
「はぁいレンちゃん、ずいぶんと人気者になっちゃったわねぇ。――ほら、周囲の野郎ども。女の子を集団で囲って怯えさせたらダメでしょうがっ! 散った散った!」
エルコさんに怒鳴られて渋々散っていくプレイヤーたち。
いやだから女の子じゃないんだが……まぁいいか。『男なら集団で囲ってもよし』と判断されて戻ってこられても困るからな。
俺に詰め寄ってきていた連中がいなくなると、エルコさんは苦笑を浮かべる。
「まぁ許してやってよ。レンちゃんは美人なんだし、顔だけでも直接見たいって人も多いからねぇ。
とりあえずここで話すのもなんだし、アタシのお店に行かない? すぐ近くに建てたのよね~」
「って、お店ですか!?」
ゲーム三日目で店持ちとか、どんだけ儲かってるんだよこの人!?
俺はやり手の女商人を前に、固まるしかないのだった。
◆ ◇ ◆
エルコさんのお店はまるで喫茶店のようなオシャレな雰囲気のウッドハウスだった。
いくつかあるテーブルの上には綺麗なアクセサリー類がたくさん並べられており、何人かの客たちが実際に手に取ったりして楽しんでいた。
そんな客たちの様子を眺めながら、窓辺の席にて俺とエルコさんは向かい合う。
「どうよ、素敵なお店でしょう? ベータテスターはテスト稼働時からお金を半分持ち越せるんだけど、それでもかなーり無理しちゃったのよねぇ。やっぱ街の中心部は土地代が高いわ~」
「そうなんですか。でも、とってもいい雰囲気だと思いますよ?
自分もいつかはこんな店を持って、気が向いた時に物を作りつつダラ~っと過ごしてみたいなぁって。スローライフを求めてこのゲームを始めましたからね」
「あははっ、初日にマーダーベアーとバトルして二日目に巨大ボスを倒したレンちゃんがスローライフ!? 冗談でしょっ、はたから見たら完全に攻略ガチ勢よ!」
こ、攻略ガチ勢!? 俺、そんな風に思われてるのかよ!?
ショックで思わず机に突っ伏してしまう……!
「うぐぐぐぐ……優雅なスローライフを送るはずが……!」
「ふふっ、まぁこれから目指していけばいいじゃないの。
あ、そうだ。『ジャイアント・センチピード』の素材っていくつか手に入ったんじゃない? アタシでよければ買い取るわよ~。
そのお金で、郊外にある畑付きの家でも買ってみない?」
ファッ、畑付きの家!? おおおおっ、スローライフ度が高いぞそれは! ぜひとも欲しいなぁ!
「でも家や土地なんてポンと買えたりするんですか? 現実だったらどんなに小さくても数百万はするんじゃ……」
「あー、まぁそこらへんはゲームでも変わらないんだけどね。
でも現実と同じく、頭金さえあればローンを組めるシステムがあるのよ」
ろ、ローン……つまり借金と来たか……!
ちょっと手を出すのは迷ってしまうが、だけど資産運用のいい勉強になるかもな。学生の内にローンを体験できるなんて機会はなかなかないだろうし。
よし、そういう意味でも買ってみますか!
「わかりました。じゃあ巨大ムカデの甲殻や足がいくつか取れたんで買い取ってください。あと出来れば、家の買い方も教えてもらえると嬉しいかと」
「オッケーオッケーッ! 初心者のサポートをするのもベータテスターの役目だからねぇ。喜んで面倒見ちゃうわよっと」
そう言ってニカっと笑うエルコさん。
……なんだか久々にまともな人と話した気がするのは、果たして気のせいだろうか?
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