10:ボス攻略開始!
「あ、おじさん。殺人熊肉のスモークサンドってのを一つくれ」
「あいよーっ!」
NPCの屋台でパンを買い、それをはぐはぐと食べながら『始まりの街』を歩いていく。
ゲーム開始から二日目。俺はとっても上機嫌だった。
あれから十匹以上のマーダーベアーを狩ることに成功したからな。皮は何十枚も手に入ったし、他の素材アイテムをいくつかゲットできた。まぁ最後には怒り狂った熊どもに囲まれて全身をハグハグされたけど、痛くなかったから問題なしだな!
むしろ慣れてくると腹に顔を突っ込んで内臓を食べてる熊が可愛く見えてくるくらいだ。街に戻されるまでのわずかな間、そんな熊の頭をヨシヨシしてやったらドン引かれた目で見られたのは気のせいだろう。
さてさて、熊どものおかげでレベルも11まで上がったし、ステータスはこんな感じになった。
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名前:レン
レベル:11
ジョブ:クラフトメイカー
ジョブ特性:装備とアイテムの生産・強化・修復が可能となる。またアイテムボックス枠50から200にアップし、死亡時に所持金を落とすデスペナルティがなくなる。
ステータス
筋力:200+20+20+20=『260』 防御:0 魔力:0 敏捷:0 幸運:0
スキル
【暴走】【素材採取の達人】【武装投擲】【武装回収】【食いしばり】【怨嗟の咆哮】
武器:初心者の剣
装備:破砕の指輪(筋力値+10%) 破砕のネックレス(筋力値+10%) 破砕の腕輪(筋力値+10%)
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よしよし、ついに筋力値が初期の2.5倍に到達したな。
これで【暴走】のスキルを使えば驚異の500越えだ。300の時点で熊に何発か剣をぶつければ死んでたからな、今ならもっと簡単に倒せることだろう。
剣を当てるのにも慣れてきたしな。筋力値がグングン上がったおかげで持つのも楽になり、今ではダーツ感覚で投げることが出来る。
「エルコさんのところでアイテムを売り払ったら、パァーッと豪勢に巨大ステーキでも食べに行くとするかな~!」
というか自分で料理してみるのもいいかもしれないな。熊の肉ってのも手に入ったから、それを鉄板の上でジューっと焼いたりしてさ。そういえば俺、生産職だったし。料理もたぶん生産物の一種だろう。
ふふふふふ……待ってろよ、俺のセレブなスローライフ生活。
狩りなんてそこそこにしておいて、美味しいものがいっぱい食べれる満たされた日々を送るのだ……!
あ、家を建てるのもいいかもな~。メイドさん付きでさっ!
そんなことを考えていた時だった。パンを食べながら突き当りを曲がったところで、大柄の男性プレイヤーと当たってしまう。
「あいたっ」
「おっとすまねぇ! ぼんやりしててうっかり……って、なんだよレンじゃねーか! どこの転校生美少女かと思ったわ!」
「あっ、テツ」
悪友の哲也ことテツの野郎に引っ張り起こされる。
つい先日に袂を分かったばかりの相手だが、別に喧嘩したわけじゃないからな。
テツはニヤニヤとした表情を浮かべ、俺の脇腹を突っついてくる。
「んでレンちゃんよ~、昨日はいったいどんな風に過ごしてたのかな~? ん~?
始まりの草原でオメェそっくりのプレイヤーが何度もウサギに殺されてるってゲーム仲間から聞いたんだけどな~?」
「ああ、そんなこともあったなぁ。
あれからウサギを狩るのは諦めてさ、ずっと森でマーダーベアーを狩りまくってたよ」
「ふーんそうかいそうかい……ってファッ!? マーダーベアーを狩りまくってたぁッ!?」
テツの野郎が大声を上げながら詰め寄ってくる。
とりあえずうるさいからやめて欲しい。周囲のプレイヤーたちもなんかめっちゃこっちを見てくるし。
「オメェよぉレン……マーダーベアーつったら攻撃力がめちゃくちゃ高い上、仲間を呼び寄せる習性を持つ厄介なモンスターの代表格だぞ?
しかも性格は残忍で酷い殺し方をしてくるし、オレぁ少なくともアイツとは戦いたくないね……内臓を引きずり出されるのはこりごりだ……」
テツも殺された経験があるのか、鎧に包まれた身体をブルブルと身を震わせた。
「そこはまぁ、工夫と我慢でどうにかなるだろ。
大木を背にしながら高い筋力値でどんどん処理していけば十分戦うことが出来たぞ。
それにいざ死ぬことになっても、痛みもないんだから平気だろ」
「う、うわぁ……オメェ、澄ましたツラしてやっぱりどっかアレだよな……」
アレとはなんだ失礼なっ! 俺はどこからどう見ても平和を愛する一般人だっつの。
そう反論しようとした時だった。テツはポンと手を叩き、「あっ、オメェならちょうどいいかもな!」と両手を握ってきた。なんだよ一体?
「付き合ってくれ、レン!」
「は? 男の俺と? 正気かお前……? 気持ち悪……」
「ってちげーよっ!? なんかに目覚めそうになるから蔑んだ眼で見てくるんじゃねーよッ!
……そうじゃなくて、とある『ボスモンスター』を狩るのに中距離攻撃が出来る仲間が一人は欲しいから、今回だけでも力を貸してくれってことだよ。
実はオレ、トッププレイヤーを目指すパーティに入ってるんだけどさ、どうしてもボスの一番攻略をみんなで狙いたいんだよ。
最初に倒したメンバーの名前が、ワールドアナウンスでゲーム中に読み上げられるシステムだからな」
フンスフンスッと鼻息を荒くする親友のテツ。とりあえず両手を握りながら興奮するのはやめて欲しい。
う~ん、たしかにそれはロマンがあるな。スローライフを望む俺だが、男だから一応わかる。
「話は分かった。でもなんで俺なんだ? お前の仲間にいないのかよ、他に中距離攻撃できるやつ」
「あ、ああ……一応、魔法使いの女の子がいるんだけどさ……その子はちょっとダメなんだよ。
なにせオレたちが攻略を狙ってる相手は、すごくでっかいムカデだからな……!」
「あ~なるほど……」
それで、中身は男でそういうのも全然平気な俺の力を貸して欲しいってわけか。
スローライフを楽しみたいところだが……まぁ、親友からの頼みだからな。
こっちは初心者なんだから役立たなくても怒らないことを条件に、俺は協力することにしたのだった。
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