1:アンリミテッドフロンティア・オンライン!
それは夏休み直前の教室でのこと。
いつものように俺の宿題を写していた悪友の哲夫が、いきなりこんなことを聞いてきた。
「――なぁ蓮、『アンリミテッドフロンティア・オンライン』って知ってるか?」
「なに?」
アンリミテッドフロンティア・オンライン……通称『アンフロ』。たしか、いま話題沸騰中のVRゲームだったはずだ。
最新の技術を使って仮想世界に入り込み、自由なファンタジーライフを楽しもうとか何とか、CMでやっていた気がする。そういえばサービス開始が明日だって話だな。
「まぁざっくりとは知ってるぞ。一万人限定で行われたβテストも大成功に終わったとか」
「そうそう! どこのゲーム店も予約いっぱいで、一か月先じゃないと買えそうにない話題作だっ!
なぁなぁ蓮さん、キミも興味あったりはしないかね!? クールお嬢様な顔をしてるが一応は男なんだろうッ!?」
「ってなんだよクールお嬢様って!? 一応も何も男だっつのッ!」
ふざけたことを言ってくる悪友にアイアンクローを食らわせる。
身体と同じくデカい口から「うぎゃーッ!?」という絶叫が迸った。
「こらっ、教室で騒ぐなっつの」
「ってオメェのせいだろうが蓮ッ!? と、とにかくだ……実はちょっとしたプレゼントがあるんだよ」
そう言うと、哲夫は机の中から小さな袋を出して手渡してきた。
一体何かと中身を覗いてみると……、
「ってこれ、アンリミテッドフロンティア・オンラインじゃねーか!?」
「しーッ、ゲームを持ってきてるのがバレたら担任に取り上げられるだろうがっ!
……実はオレ、βテスターに選ばれた一万人の中の一人でさ~。その特典として、ゲーム会社から二本もパッケージをもらっちゃったんだよなー! もう一つは知り合いに渡して布教してくれってさ!」
なるほど、それで俺にプレゼントしてくれたわけか。
むむむ……正直なところかなり嬉しいのは確かだ。あんまりゲームはしない俺だが、それでも世間から騒がれまくってる作品には流石に興味がある。
だけどなぁ……、
「これ、本当に俺がもらっちまってもいいのか? あんまり褒められた話じゃないが、転売すれば三倍の値段は付くぞ?」
「いいっていいって。高校に入ってから三か月、オメェには出会った日から世話になってばかりだからな。
ゲーム馬鹿でよく宿題を忘れるオレにいつも答えを見せてくれるし、テスト前には勉強を教えてくれるだろ? その恩返しってやつだ」
「そっか……そう言うことなら受け取らせてもらうか。ありがとうな、哲夫!」
「へへっ、これからもよろしくな、蓮!」
夏休み前の教室にて、熱く友情を確かめ合う俺たち。
そんな俺たちに対して女子たちがやたらギンギンの目を向けてきているのは、果たしてどういうことなのだろうか?
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