第八話 外出(がいしゅつ)
ピピピピピピピピ
音は依然なり続けている。
ながらく続くものだから腰をおろした。
そこから、10秒ほどたつと、
ようやくその音は止んだ。
「...ホタラ、何の音だと思う?」
たいした答えは期待していないが、
どうせだから名前を呼んでみたくて、
とにかくホタラに聞いてみた。
「あぁ、簡単に言うと腹の音ですよ。」
「ん?」
「私のエネルギーが切れようとしてますよ~、
っていう音ですね。」
なるほど詳しくはわからんがわかった。
「ふ~ん、...え、それ大丈夫なの?」
「そうですね、何かしら
人間の食べ物でいいから食べたいですね~。」
体内で電気エネルギーに変換する、
的なあれか。あ、そうだ。
「そういえば、この世界ってまともな
食べ物ってあるの?」
「『まとも』の基準が分かりませんので。」
「そうですっか!」
と言い、冬吏は体を起こした。
「じゃあ、いよいよ外の世界に
出るわけですな!」
「そうですね!」
冬吏は辺りを見渡した。
「...いや、...扉どこ?
どこにも見当たらないんですけども...」
「作ればいいじゃないですか。」
「ん?」
「念じれば家具でもなんでも
ある程度の物はでますよ。」
「は?」
「ひ?」
「ふ?って、いや小学生みたいな
遊びやめろ。てか、まじで?!」
「試せばいいじゃないですか。」
冬吏は早速、色々と念じてみた。
テレビ、冷蔵庫、ドア、ソファ、ベッド
あと、えー、とりあえずそんだけ!
実際に具現化されたのは、
ドアとソファとベッドだけだった
「テレビと冷蔵庫は!?」
思わず叫んだ。
ホタラは一時頭を悩ませた後、
「あー、家電は無理っぽいですね。」
と言った。
「マジか。」
「マジです。」
マジか、ゲームし放題だと思ったのにな~、
...現実はそんな甘くないか。
「ま、いいや!異世界なんて居れば
退屈しなさそうだし!」
「よっ!ポジティブ!」
加えてホタラはボソッと「脳内お花畑!」
と呟いた。
「ボソッて言っても聞こえてるぞ。
誰が、脳内お花畑だ。」
「何も言ってませんけど~。
被害妄想が激しいんじゃないですか。」
「マジで?!被害妄想って怖いな。」
(こいつ多分チョロいな)
「さ、そろそろ行きますよ。」
ホタラが扉に向かって走って行った。
てか、この部屋広いな。
30畳ぐらいあるんじゃないか?
俺のアパートの何倍あるんだろう...
「はーやーくー!」
ホタラに呼ばれて冬吏も扉に向かって走って行った。
「よし!では行きますか!」
鉄製の重い扉を思いっきり開けた。
いや、ホント久しぶりです。