第六話 命名
バシャッ
冬吏の顔面に冷水がぶちまけられた。
冬吏は一時、状況が理解できなかったが、
まず自分の顔面が水浸しなのを理解した。
そして次に、さっきまでの事について考える。
必死に頭を働かせ、
ああ、あれは夢だったんだ。
という考えに至った。
色々気になることはあるが
とりあえず、夢のことは置いておこう。
気になるのは、どこのアホが俺に水をかけたのか、
なんとなく検討はついている。
「なあ、なんで水を俺の顔面にぶちまけたぁ?」
そう言ってポンコツロボの方を向いた。
つもりだったのだが、
あれ?、ポンコツロボがいない。
目の前には黒いワンピースを着た、
小さな女の子だけが立っていた。
また頭がショートしかけようかしている時、
目の前の女の子が口を開いた。
「お目覚めになられましたか?」
!嘘だろ、この声は...ポンコツロボなのか?!
「お目覚めになられましたか?」
「いや、『お目覚めになられましたか』じゃねぇよ。
もはやお前誰だよ、可愛いすぎかよ。」
「言っておきますがロボットに性という
概念はありませんからね?口説かないでください。」
「別に口説いてねーよ?!バーカ!
アーホ!ポンコツロボ!」
「ボキャ貧ってのが一発で分かりますね。」
「まぁ割りと否定はできないけど!
えと、えーお前があれだよ。な!」
「いや、どれですか。」
「もういいよ!
とりあえず俺はボキャ貧ではないから!」
「どっからその自信わいてくるんですか?」
「どっからともなくだよ!」
「...そうだ!じゃあ私に名前をください!」
「な、なまえ?!」
「え、名前ってわかりませんでしたか?」
「いやわかるわ!」
いやでも、名前か~...
流石にポンコツロボはダメだよな。
どうしよっかな~...
「どうしたんですか?まだですか~?
ボキャブラリーの宝庫さん~?」
「そのいたいけな少女の姿でにやにやすんな!
あと、変な二つなつけんな!」
くそ~、ゲームのキャラクターみたいな見た目
しやがって、中身はどす黒とか誰得だよ!
あー、無駄に叫ばされるからお腹すくわ!
そういえば、この変な部屋から出てないけど
この世界にはまともな食べ物ってあるんだろうか。
昨日の食べかけのおつまみでも食べたいな~、
酒は飲まないんだけど。
...そうだ!こいつの名前『帆たら』でどうだろう?
帆たら、ほたら、ホタラ、ホタラ!
「よし、お前の名前は『ホタラ』だ!」
「変な名前ですけど、
一万歩ゆずって、OKとしましょう。」
とは言いつつも何だか嬉しそうに見える。
「素直に喜べよ~。ホントは嬉しいくせに~。」
「うっとうしいでーす!黙っててくださーい!」
今度は何だか恥ずかしそうに見える。
ロボットにも感情ってあるもんなんだな、
と思い冬吏は思わずにやけた。
「なにニヤニヤしてるんですか~、キモいですよ~。」
「うっせーよ!」
そんな他愛もない話をしていると、
どこからからか、ピピピピピピピピ、
とアラームのような音が鳴り出した。
やっぱり空いてしまいました、すいません!