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8/8 -兎ヶ丘学園軽音部ー  作者: 十七夜
3:新バンド結成! シーン5-玲の秘密兵器-
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玲の“本気”

「弾かないからって、ガキに遊びものとして渡してたら、今ごろボロボロになってるだけじゃなくて、俺も腕なんか磨いてねーだろうからな。コノヤロウ、とかずっとおもってたけど……プロ並に弾けないなら渡さない、って頑固じじいに育ててもらったことになるんだろーな」

「お通夜で、とかもったいぶってないで、生きてる内にいっぱい聞かせてあげたらいいじゃないですか」

「あー……そうだな。あと三十年くらいは、死にそうもねーし」


照れた孫の顔で言った後、玲はワンピースのギターネックを左腕で抱いた。


「歌子。鷲だか蜂だかしらねーけど、OBもおまえの兄貴もぶっ倒して、優勝するぞ! そのためにこいつも手に入れたんだ。心して歌え」

「う。──はい。先輩」

「あのサボリ魔にもでかい顔させんじゃねー」

「…………はい」


顔はともかく、鷲尾のあのでかい声ばかりはいかんともしがたい、とおもいつつ、歌月は神妙に返事をした。

玲が、『トリプルリード』での演奏のために、そのギブソン製レスポールを手にしてくれたことは、あきらかだ。

LeiT-Motivライトモチーフ』でステージに立つとき、玲はずっとエピフォンのレスポールを弾いていたのだから。

それが、歌月の頑張りを見て玲が示してくれた、“本気”なのだとおもう。

うれしかった。

鷲尾が歌ってくれる、とおもったときより、百倍はうれしい。


「──そういえば、三年生、誰も来ませんね」


慶が、歌月が入って以来開くことない入口の戸に顔を向けて言う。


「兄貴が、進路指導で遅くなる、とか言ってた気がする」

「つーかな、小僧。三年が来ようが来るまいが、おまえがしなきゃならねーのは練習だ! 俺がおしえたコード、弾けるようになったな?」


なったか、ではない。

実験台にもたれかかっている慶が、いかにも自信なさげにうなずく。

慶のギターは『折音オリオン』のギタリストの真似をしたと丸わかりの、ファイヤーバードタイプだった。

独特の直線的なフォルムをしたボディは、座って練習しにくいらしい。

歌月はそんなギターを選ぶなんて心底バカだとおもったが、玲は自分が弾きたいギターを選ぶのでなにも問題ないと言い切った。

要は、弾きにくさも練習のしにくさも、何の言い訳にもならない、ということだ。


「ときに、先輩。三曲目のことで、ご相談があるんですけど」

「あー。今、何位だ?」

「何位だろ。七位くらいになったところまでは見たけど」

「てきとーだな。──おい、徹?」

「昨夜の時点で再生数が三万ちょい。五位だったけど──三位以内は時間の問題じゃないか」


歌月は、ぎょっとした。

一応バンドのリーダーとして登録もされている歌月より、メンバーでもない徹の方が詳しく把握しているとは、これいかに。



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