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8/8 -兎ヶ丘学園軽音部ー  作者: 十七夜
3:新バンド結成! シーン4-最後のメンバー-
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Moon Pride

「なあ、玲」

「あ? おまえはGサスフォーも、バレーのまま3フレットに移動すりゃーいいだけだ」

「……そうじゃなくて。前から訊きたかったんだけど。玲がすごいなっておもうギタリストは、日本にはいないの?」

「ハ? 何で今、そんな話になる?」


蒼太だけでなく、歌月の視線も受けて、玲はピックでこめかみを掻いた。


「あー……ひとりいる」

「うそ! 誰?」

「──マーティ・フリードマン」

「日本人じゃない!」


と言った声が、きれいに歌月とハモった。


「しるか。日本語の歌なのにこんなイケてるギター弾くやつがいんのか、とおもって徹に調べさせたら、弾いてたのがそれだったんだ」

「まぁ、ね。わかるけど。ちなみに、日本人は? 『折音』のレンさんとかどう。うちのOBだぞ」

「あのイケメンのファイヤーバード使い、な。ライブじゃ、冒険しすぎて自滅しまくってねーか。スタ録はいいフレーズ弾いてんのによ」


蒼太は、歌月と顔を見合わせた。

OBに敬意を払うタイプともおもえないが、邦楽だろうと意外にちゃんと聞いていることにも、おどろく。

しかし、まず突っ込むべきは──


「先輩……『折音』のギタリスト、本名は花蓮さんっていうんだって。イケメンじゃなくて、女の人ですけど」

「あ? うそ! あれ女なのか? ボーカルよりでけーじゃん。てか、あれも実は女か?」

「ノリは、声聞きゃわかるでしょ。男ですよ。そのふたりがうちの部のOBなんでしょ? お兄ちゃんが言ってました」

「そう。でも太陽先輩たちのふたつ上だから、入部したときには『折音』を結成して、すでに部をやめちゃってた後なんじゃないかな」

「みたいです。でも、文化祭はノリとレンも来ていっしょにやってくれたんだって。二、三回しか音合わせしてないのにバシッと決めて、そのころから超プロっぽかったー、とか言ってましたけど」

「文化祭、かぁ────どうしよっか?」


ちら、と横目で玲を見れば、いかにも適当に手を振り返す。


「そんなもん、どうでもいい。おまえらには最後だし、好きにすりゃーいいだろ」

「……そう」


蒼太は、小さくうなずいてほほえんだ。

玲を前に、言いたいことは飲み込んでばかりいる──

本当にヘタレなのは、慶ではなく自分だとおもう。

自分だけは、今も、逃げたまま……


『逃げない方がかっこいいとおもうなら、自分もそうしたいとおもうなら、今からだってそうすればいい。それでどんな反応が返ろうが、おまえが別の道を選んだって事実までは消えないよ』


慶へのことばが、自分の元にぐっさりと戻ってきた気がした。

──それでも。

まだ、蒼太は、ニセモノの自分を殺す決心ができなかった。

頭の中で、フレディの歌声が聞こえる。

かき消すように、蒼太はGマイナーのコードを八分音符でかき鳴らした。




サブタイトル……(笑)

たぶん、玲が聞いた、マーティのギターはソレではないかと。ちなみに、私はサンホラでの演奏で「このギター、いったい誰が弾いてんの?」とおもったクチです。

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