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8/8 -兎ヶ丘学園軽音部ー  作者: 十七夜
3:新バンド結成! シーン4-最後のメンバー-
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バッキングのコード弾き

「ハァ? あんたギターじゃなくてベースでしょ? それに、べつにどっちもいらないから!」


と──歌月の硬い声が蒼太にも聞こえた。

蒼太は、おもわず片手で額を覆う。

さっきもおなじことをしたような気がするが、今の方がずっと、頭が痛い。


「だから……バッキングのコードは、俺がギターで弾いてやるって言ってるんだ」

「弾いてくれなんて言ってないけど?」

「…………」


ことばに詰まっている慶を、蒼太は内心で応援した。

めげるな、慶!

というか、すこしは手加減してやって、妹ちゃん……

応援が通じたのか、慶はうつむいていた顔を毅然と上げた。

玲、魁、都、譲に徹と、五人もの先輩たちに見られながら、なおもことばを継ぐのは勇気が要るだろう。

でも、彼らには、慶の言わんとしていることがわかるはずだ。

だから──黙って見ている。


「……そしたら。おまえが──手は動かさずに、歌だけ、歌えるだろーが!」


蒼太からは、そう言った慶の顔は見えない。

が、言われた歌月の顔はしっかり見えた。

ああー、なるほどね、と手でも打ちたそうな、意表を突かれたといわんばかりのまぬけ顔だ。


「それを言ってくれたのがマトモなギタリストなら喜ぶけど。あんた、今さらギターなんて弾けるわけ? 部長に頼んだ方がマシだとおもう」

「マシ……」


たしかに、マシな程度かもしれないが。

歌月は、本当に正直というか、遠慮がない。

蒼太は苦笑した。

もちろん弾けと言われれば蒼太が弾くのは構わないが……しかし、コード弾きもできないようでは、歌月にばかにされても仕方ない。

それに、歌月が慶を見下す以上に自分を見下している玲が、いっしょにやるのを嫌がるに決まっている。


「も、ちろん、弾ける!」

「そ。でも、ギター持って来てもないでしょあんた」

「…………」

「おい小僧。これ貸してやる」


ストラップから首を抜きながら、玲が愛用のエピフォン──日本製──レスポールカスタムを差し出す。

蒼太はおもわず目を見張った。

いいな──と、おもう。

あれを持てば玲のような音が出せる、というのは当然ながら、幻想に過ぎないけれど。

それでも、玲が弾けば、蒼太のフェンダージャパン並に安物のギターだって、かっこいいとおもえるからふしぎだった。



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