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8/8 -兎ヶ丘学園軽音部ー  作者: 十七夜
3:新バンド結成! シーン3-動画エントリー-
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写真のコバヤカワレイ

『そういうことは、楽器のひとつも練習して、挫折してから言えっての』


いつかの兄のことばが、頭によみがえる。

楽器ではなく歌だったけれど……歌月は練習して、そして鷲尾の前にまんまと挫折感を味わった。

現時点では、かなしいかな、完敗だ。

だから、鷲尾を叩き出すことはおろか、気が変わっては困るからと文句のひとつも言うことができない。

でも、そう──

歌を始めて、まだたったの十日なのだ。

鷲尾にも、プロにも、紅白歌手にも、敵わないのは当然すぎるほど、当然のはなし。


『戦うって決めたあなたが、プライドを持って歌いなさい』


──はい、先輩。

鷲尾が歌ってくれるなら自分はその引き立て役でいい……なんて、決しておもわない。

現状を、言い訳になんてしない。

向上心は、凡才だって持てるのだと、歌月は知っている。


『どだい、そばにどんなギター弾くやつがいようと、関係ねーんだ』


そうだ──

だから、鷲尾の横だろうと、歌月は折られることなく歌ってみせる。

一歩も退かない。

負けなんて、認めない。

他の楽器に、逃げたりしない。

ぜったいに、鷲尾ひとりのボーカルより、ツインボーカルの方がかっこいいと────そう言わせてみせる!


「なあ、歌月……」

「なに?」

「あれだな──」


歌月の髪の束を指先でつまみながら、兄がぽそりとつぶやく。

胸の中なので、表情は見えない。


「あれって、なに?」

「バンドに入って、メンバーに相手してもらえ、とか言ったけどな」

「言ってたね」

「いざ、おまえがバンド始めて、ヤロウに囲まれてる写真とか見せられるとこう、さみしいもんだなー」

「……なにそれ。それに、囲まれてないでしょ。都先輩もいるもん」

「都ちゃんは、女子にカウントしていいものか、迷う」

「お兄ちゃん、失礼すぎ。あんな美少女つかまえて」

「コバヤカワレイってやつも、けっこうイケメンじゃねーか。やさしげーなツラして。巧くてイケメンとか、ギター小僧の風上にもおけねーな。ルックスがいまいちで、運動神経もねーやつが、最後に女の子にモテようとすがるアイテムがエレキギターってもんだろうがよ?」


どこから突っ込もうか悩んでいるうちに、兄は堂々と持論を展開した。

やはり、どこから突っ込むべきか、迷うところだ。



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