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8/8 -兎ヶ丘学園軽音部ー  作者: 十七夜
2:バンド結成へ シーン3-メンバー交渉-
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『ドラム』交渉

「遅くなってごめーん!」


ちょうどそのとき、理科室の戸が開いて、譲がやってきた。

すでにドラムはいつもの位置にセッティングして置かれていたが、譲はまだ来ていなかったらしい。

いつもは蒼太たちのところに留まる譲が、今日はあいさつもそこそこに、すぐに奥までやってくる。

歌月はともかく、都までが玲たちといっしょにいるのはめずらしいので、すっ飛んでくるのも無理はなかった。


「居残りかよ。何したんだ?」

「何もしてない。委員会だったの。文化祭の実行委員になってな」

「部活やってねーやつに押しつけろよ」

「受験勉強で塾通いとかもいるから、仕方ねーんだよ。そのかわり、文化祭のステージ順、いいところ確保してやるって。委員特権!」


玲の乱暴な口調にもまるで動じず、にこにこと応じる譲は改めてすごいとおもう。


「それにしても……」


譲は、玲と都の顔をしみじみと見比べた。


「どういう風の吹き回し? おまえら、犬猿の仲じゃなかった?」

「──猿が小早川ね」

「はァ? なんでだ!」

「だって、キーキー、ギターの方がうるさいでしょ」


言われてみれば、犬の鳴き声の方が低いかもしれないが。

やれやれと、譲が首を振る。


「このふたりをいっしょにやらせようなんて企む大物は、長勢ちゃんか? ──大丈夫? 手に負えないんじゃない?」

「え……ええっと」


歌月は、そばに立った譲の腕に手を伸ばした。

肘より下なのに、ずいぶんと太い。

これがドラマーの腕なのか、とおもう。


「いっしょに──やってください」

「うーん。俺はいいけど……」


ちら、と譲が蒼太たちの方を振り返った。


「ドラマーは他にいないから、まあ仕方ねーな」

「そうね。他にいないから、仕方ないわ」


仕方ないとおもって引き受けてやれ、という口調ではない。

どう考えても、仕方ないからおまえであきらめてやる、という口調だ。

歌月は蒼くなった。

譲は、ばっ、と椅子に座る弟の方を向くなり、がばあ、と抱きついていく。

まるで、お芝居を見ているようだ。


「とおるー! いじめっこがふたりに増えやがったー」

「うわぁ、あ、あの! でも私、先輩のドラム、いいとおもってます。ほんとです」

「マジで? どこが?」

「えっ、……うるさくないと、こ────じゃなくて! ええと、そう、必要最低限なところが!」


うまく誤魔化した、とおもったが、玲と都は遠慮なく吹き出した。

歌月からは見えないが、徹も笑っているのかもしれない。

おまえまでー、と譲が嘆いているところをみると。



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