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8/8 -兎ヶ丘学園軽音部ー  作者: 十七夜
エピローグ:新たな道
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歌月&太陽

「もう! ほんっと、信じらんないー」

「あーあ。かわいそうに。コバヤカワレイ……こりゃ、ずーっと言われるな。──まあ、いい気味だけど!」


ソファに座った兄が、にやにやと笑って言う。

打ち上げ帰りのわりには、帰宅時間も早かったし、ほとんど酔っている様子はない。


「お兄ちゃんこそ、あんなの根に持ってるわけ?」

「あたりめーだ。妹離れしろだとー? 昨日今日おまえの人生に現れたくせに、でかい顔しやがって」

「バンドの仲間だもん。兄妹以上だよね、お兄ちゃん?」


今までさんざん妹など放って、バンド活動を満喫していた兄の顔がとたんに引きつる。


「歌月、おまえ。高校卒業するまで、外泊禁止! あと、門限は八時な!」

「いーもん。来月からは私が部長だから、合宿組むもん。学校で」

「だー! よけいなことおしえなきゃ良かったぁ」


ソファを叩いて、本気で嘆いている。

歌月は、となりに腰を下ろした。


「でもね。私から言う気だったけど…………玲先輩にバンドに入れって言ってもらえた方が、うれしい」

「──そりゃそうだろ。誰だって、必要とされりゃうれしいに決まってる」

「うん。誰が相手でもね。……でもやっぱり、玲先輩なことが、いちばんうれしい」

「ほーらな。おまえは、あいつといっしょにやりたかったんだ」


こっくりと、歌月はうなずき返した。

最初に兄に問われたときは、ぜったい無理だとおもったけれど。

今ならわかる。

自分も、玲の実力にびびって逃げたという連中と、おなじだったということが。


「玲先輩のギター、聞いた?」

「聞いたよ」

「あのギターをずっと聞けるの。私のアレンジで弾いてくれるの。いっしょに、ギターで唄ってくれるんだよ。すごいでしょ?」

「ああ。必死についていく価値のあるフロントマンだ」

「ついて行く。いっしょにやりたいから。──だから、お兄ちゃんの門限なんか、くそくらえってカンジ!」


べえ、と舌を出す。


「くそぉ。おまえ、都ちゃんに似てきてないか」


兄は頭を抱えたが、歌月は褒めことばだ、とおもった。

自信があって、プライドがあって、玲に対しても堂々と一喝できる都は、鷲尾とはちがう意味で憧れだ。

女であることなど、ロックをやるのに何にもハンデではないと、彼女や『折音』の花蓮がおしえてくれている。

だから、兎ヶ丘学園軽音部の伝統として、今度は歌月が後輩たちに身をもって示さなくてはならない。

まわりが男ばかりだからって、ひるむことはないと。

自分だけの音や歌で勝負するのは、男も女も変わらない、と。

女だって本気でやれば、ちゃんと認めてもらえるのだ──と。

相手が、公平な心と耳の持ち主ならば。


「歌月。おまえら、まずは『ビートカフェ』でやれ。小さいステージでメンバーの音を聞きながらやる方が、のちのちバンドの力になるから」




* * *



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